250426応急処置アップデート Q and A 29 ムカデに噛まれたら

 
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救急の周辺

雑誌 健康教室 応急処置アップデートQ and A

2024年08月号(2024/07/10発行号)p62-3
応急処置Q and A

ムカデに噛まれたら

目次

Q

先日、ムカデに噛まれた生徒がいました。ムカデに噛まれたら「温める」で対応してきましたが(過去にもいました)、検索すると「冷やす」という対応も出てきます。噛まれた直後に保健室で、保護者が迎えに来るまでの間に対応する場合は「温める」と「冷やす」のどちらが良いのでしょうか?

高校の先生からのQ

A

腫れるものは冷やすのが原則です。

解説

ムカデは北海道にいません。正確には、ヒトを噛むようなムカデはいません。北海道にもムカデはいるらしいのでが、私は見たことはありません(見てもわからないのだと思います。足のたくさんあるゲジゲジやヤスデはいます)。知り合いでムカデに噛まれたとかいう話も聞いたことはありません。職場で福島県郡山市出身の方がいるのですが、そちらでも噛まれた話は聞いたことはないとのことでした。人を噛むような大きなムカデは越冬できないのだと思います。

1.ムカデの顎肢(001)

ムカデの体は頭部と胴体に分けることができます。

頭部は胴体で見られる体節が一つにまとまったものです。最大の特徴は口腔の前にある顎肢(毒牙)で、体節にある足が変化したものです。体節の足や、同じく体節から変化した小顎に比べてとても大きいもので、先端は鋭敏な注射針、根元は毒を産生・貯蔵する分泌腺となっています。顎肢の針の部分を切断する動画1)を見ると、切断面から粘性のある透明な液体が流れ出てきます。

この注射針の外側には、獲物の味見をしたり、針が獲物に入ったことを確認して毒を注入する感覚器があります2)。

2.ムカデの毒液2) (002)

ムカデの毒にセロトニンやヒスタミンといった、アレルギー反応の時に生体で肥満細胞から放出される化学物質が含まれることは古くから知られていました。さらにこの10年で、ムカデの毒には刺した相手の肉体を溶かす酵素が含まれていることも明らかになりました。これらの毒はクモ毒と共通するもので、相手を溶かす(皮膚損傷、浮腫、水疱形成、筋肉壊死、炎症誘発など)働きがあります。

さらに細胞接着因子を分解する酵素も含まれています。これにより細胞による毒素移動の壁を破壊し、毒を全身に素早く拡散させる効果をもたらします。

3.ムカデに噛まれるとどうなるか(003)

世の中には色々な人がいるもので、実際にムカデに手の甲を噛ませて変化を記録した動画を見ることができます3)。これによると、症状は3種類分けることができます。

(1)局所症状

ムカデの毒が局所に作用することで起こるものです。局所の腫れ、炎症、疼痛など。

(2)急性アレルギー症状

アナフィラキシーショックで体表される、全身の症状です。全身の熱感、発赤、喘鳴、呼吸困難、血圧低下など。

(3)遅延型アレルギー症状

数時間以降に現れるアレルギー症状です。動画3)では腋窩リンパ節の痛みを訴えていました。代表的な遅延型アレルギーの症状としては皮疹、長引くかゆみ、下痢・便秘などがありますが、診断には詳細な問診が重要になります。

4,噛まれた時の対処法(004)

「毒の注入がある」+「アナフィラキシーの可能性がある」ことから、対処方法は以下のとおりです4)。

(1)毒を吸い出す

ポイズンリムーバーなどを使い毒をできる限り吸い出します。

(2)患部の洗浄

感染リスクを減らすためです。大量の水で穿刺口を洗います。

(3)原則は冷却。温水を勧める意見もあるがエビデンスは不明

冷却により痛みが軽減され、また血管が収縮することで組織の浮腫を防ぎます。温水を勧める理由は、毒素を熱変性させるためで、耐えられるだけの熱いお湯に20分以上漬けます。ただ温めた場合は腫れや痛みが強くなる可能性があります。

(4)ステロイド剤を塗布する

薬剤を使える環境ならステロイド剤や抗ヒスタミン剤を塗布します。学校では薬剤が使えませんので間歇的な冷却で対処します。初療として温めた場合でもその後の痛みの軽減には冷却が有効です。

(5)アナフィラキシーが疑われる場合は病院受診

急激に全身症状が進行する場合は救急車を呼びます。

養護の先生が経験した症例

<ムカデに咬まれたときには>

学校で生徒がムカデに咬まれたときには、次のように処置しています。①まずは傷口を確認し、傷口を絞りながら水で洗う。毒を吸い出す時にはポイズンリムーバーなどの器具を使用するようにする。②様子を見るように伝え、赤みや腫れが引かない場合は病院を受診するよう勧める。

ムカデは2匹でいることが多いと子どもの頃から聞いているので、1匹見たら2匹目がいないかどうかを確認します。母から聞いた話によると、ムカデは「つがい」でいると聞きましたが、親子(母子)でいるという話もあるようです。(ネットを調べると諸説あるようです)

ムカデを退治するためには、「頭と胴体を切り離すこと」と母から教えられました。少しぐらい叩いたぐらいではムカデは死なないので、次に咬まれないためにも頭を胴体から切り離して退治をします。また、ムカデは熱に弱いらしいので、60度以上のお湯をかけるのも有効です。

文献

1)https://www.youtube.com/watch?v=fN9pffwpMDg

2)Toxins(Basel) 2015 Mar;7(3):679-704

3)https://www.youtube.com/watch?v=HgEBhYSEB6s

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