令和5年消防白書によると全国救急件数は722万9,572件、私の勤務する渋川広域消防本部の救急件数は5,847件となります。救急件数については、全国でも軒並み右肩上がりに増加しています。救急件数が増加することで、救急隊の活動時間もかなり延長しています。救急活動の時間内訳は、全国では現場到着時間(入電から現場到着まで)10.3分、病院収容時間(入電から病院収容まで)47.2分の時間となっています。当渋川広域消防本部は、現場到着時間11.5分、病院収容時間45.8分となっています。
全国共に救急活動時間が延長している理由は、救急の多発により直近の救急隊が出動しているために、近隣の救急隊が出動し現場到着に時間を要してしまう、救急隊による活動(観察及び処置、搬送)、症状に応じた適切な病院選定に時間を要してしまうことが挙げられます。また、地方の救急活動においては、収容先病院が管内になく、搬送後に帰署するまでに時間を要してしまうことなどの地方特有な問題なども挙げられます。
また、救急件数が増加していることにより、救急隊の労務管理など改善がされづらく、さまざまな問題が山積みとなっています。
私が救急活動で普段から心がけていることがあります。それは、現場到着から救急車内収容までの活動時間の短縮です。
私たちは、救急救命士養成所や各所属でのシミュレーション訓練では、状況評価、傷病者に接触、意識・A・B・C・D…とフローチャートの通り観察し処置を行い、搬送準備をし救急車へ収容をするという手順で活動をしています。
私は、状況評価をした後、傷病者に接触と同時に歩行可能か?救急搬送が必要か?を判断し、全身観察と一緒にターポリンなどで搬送準備を行う、病院へ収容依頼の電話をしながら搬送記録票を記入するなど、「○○をしながら、○○をする」という、同時進行を心がけて行うようにしています。
救急活動の現場では、基本通り一つ一つを判断し処置を行い対応していますが、これは間違いではなく、あくまで基本で救急救命士の国家資格を取得するまでの活動です。救急救命士に合格したら、次のステップである「同時進行」を取り入れた活動は、当たり前に行っている人もいると思いますが、教育の場では同時進行をすることは学んでいないことが多く、災害活動で行っている人は少ないように感じます。
一つ一つの基本が身に付いた後は、応用となる同時進行のスキルを磨くことで、一分一秒を削る活動となり傷病者の負担軽減へと繋がります。この同時進行は、救急活動だけでなく、消火活動や救助活動でも多用できます。
マルチタスクな活動を何かの訓練や災害活動で、意識的に取り入れてみてはいかがでしょうか。特定行為士ではなく、プレホスピタルケアのプロである救急隊員、救急救命士として『アジャスト』していきましょう。
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