251003_今さら聞けない資機材の使い方_139_保温は資機材選択より保温処置の方が重要である_浜田市消防本部_藤井将平

基本手技
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近代消防 2025/01/11 (2025/02月号)p84-6



保温は資器材選択より保温処置の方法が重要である

藤井将平 藤田聖嗣朗 代田哲章 江里集 山根光二

島根県 浜田市消防本部

目次

1.はじめに

島根県は、中国地方の北部に位置し、浜田市は島根県西部の日本海を望む位置にあります。令和5年4月1日現在の管内人口は50,129人、令和4年中の救急出動件数は3,054件です。浜田市の地域性については、

▸年間を通して釣り客、夏には海水浴客が多く、水難事故が発生する。

▸冬季の平均最低気温が氷点下を下回る寒冷地域がある。

▸管内人口の高齢者の割合が37.9%。

以上の事から水難事故や寒冷地域により熱喪失が亢進するリスクが高く、また熱産生の低い高齢者の割合が多いため、偶発性低体温症の救急事案は少なくありません。

当消防本部においての2020年から2022年の3年間、偶発性低体温症と診断を受けた救急出動件数は48件です(図001)。その48件に対しての保温処置の割合は、保温処置なしは42%、毛布は50%、救急アルミックシートは2%、メディラップブランケットは6%でした。

図001

浜田市消防本部の偶発性低体温症に対する保温処置

2.目的

目的についてです。偶発性低体温症の傷病者に対して保温処置を行うが、その効果を考察した事がなく、保温資器材による効果の差を知る事で、より良い保温処置が選択できると思い、今回の検証を行いました。

3.対象と方法

健常成人男性2名を被験者としました。検証方法は、-25度の大型冷凍倉庫に入り、5分後に前胸部の体表温度を測定しました。検証4の衣服が濡れた状態での検証では、-25℃の環境に入るのは危険なため、室温5℃の冷蔵倉庫で10分としました。

保温資器材は、アクリル100%の毛布(001)、救急アルミックシート、メディラップブランケットを使用しました。

001 アクリル100%の毛布

体表温度を測定する機械は、非接触式体温計を使用しました。測定温度範囲の下限が32℃のため、32℃を下回った場合は32℃以下と表記しています。

検証は4項目あり結果に示します。1つの保温資器材の検証を終えると、開始前の体表温度35.8℃に復温するまで待ち、次の保温資器材の検証を行いました。

4.結果

(1)保温資器材で体を包む(002)(図002)

保温資器材なしは32℃以下、毛布は35℃、救急アルミックシートは35℃、メディラップブランケットは34.9℃となりました。体を包むことによる保温資器材の差はほぼない事が分かります。

(2)保温資器材を体の上に掛けるだけで、包まない(003)(図003)

すべての保温資器材で32℃以下になりました。保温資器材は、体を包まないと保温効果が少ない事が分かります。

(3)扇風機で毎秒3mの風を被験者の体に当て、保温資器材で体を包む(004)(図004)

保温資器材なしは32℃以下、毛布は32℃以下、救急アルミックシートは34.9℃、メディラップブランケットは35℃となりました。毛布は、風がある環境下では保温効果が少ない事が分かります。

(4)衣服が濡れた状態(005)(図005)

グラフの左軸が衣服が濡れた状態、右軸が衣服が乾燥した状態の温度を示しています。衣服が濡れている状態と乾燥している状態を比較すると、すべての保温資器材で衣服が濡れている状態の方が体表温度が低くなりました。

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002

保温資器材で体を包む。保温資器材はアクリル100%の毛布

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003

保温資器材を体の上に掛けるだけで、包まない。保温資器材はメディラップブランケット

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004

扇風機で毎秒3mの風を被験者の体に当て、保温資器材で体を包む。保温資器材は救急アルミックシート

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005

衣服が濡れた状態。保温資器材はメディラップブランケット

図002

保温資器材で体を包む

図003

保温資器材を体の上に掛けるだけで、包まない

図004

扇風機で毎秒3mの風を被験者の体に当て、保温資器材で体を包む

図005

衣服が濡れた状態

5.考察

風がある環境を除きますが、今回検証した保温資器材の保温効果に大きな差はみられません。それよりも「体を包む」「濡れた衣服を除去する」など、保温処置の方法が重要である事が示されました。

風がある環境下で毛布だけは効果が少なく、他の保温資器材を選択するか他の保温資器材と併用することが有効と考えます。保温処置と並行して全身観察や全身固定を行う際、保温効果を軽減させない方法など、今後も保温処置について検討が必要と考えます。

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