251120_今さら聞けない資機材の使い方_140_コストパフォーマンスを求めた在庫管理システム_西はりま消防組合_神谷佳希

基本手技

 

近代消防 2025/02/15 (2025/03月号)p84-6



コストパフォーマンスを求めた在庫管理システム

神谷佳希

西はりま消防組合消防本部

目次

1.はじめに

皆さんの職場ではどのように在庫管理を行なっていますか。当組合の在庫管理は紙ベースで記載したり、エクセルシートの個数を増減させるといったアナログな方法でした。

このようなアナログな管理方法では、入力ミス、記入ミス、エクセルシートの関数の削除や変更、これらミスに対する修正作業といった、ヒューマンエラーに起因する問題が多く発生し、救急業務の負担になっていました。

そこで当組合では労務管理と費用対効果の確立を目的に在庫管理のDX化を試みました。

2.管理方法

(1)在庫管理

1)棚を二つ用意する

管理する倉庫を2つに分割し、一方を在庫棚、もう一方を救急車補充用棚に分けます(001)。在庫棚には、納品時、資機材の使用頻度とその資機材の特性から、個包装を行い、管理する内容があらかじめ入力させた資機材管理シールを資機材に添付し(002)、在庫棚に保管します(003)。在庫として計上するのは、在庫棚にある資機材を計上します。仮に留置針であれば、10本を1単位として個包装を行っていて在庫棚に20本の留置針があるとします。

2)資機材の移動とシールのファイル添付

救急車補充棚の資器材は自由に救急車へ補充してもらい、救急車補充用棚の資機材が無くなった場合(004)、在庫棚から救急車補充用棚に資機材を移動させます(005)。その際、在庫管理シールを所定のファイルに添付してもらい、署が保有している在庫は10本と計上していきます。

3)在庫管理シート

在庫の確認は在庫管理シートで行います(006)。

あらかじめ、各資器材のIDや名前等必要事項を入力しておきます。当組合では、資器材の価格の安定化を目的に年度当初に各資器材ごとに単価契約を結んでいるため、価格や、購入業者が決まっています。在庫がなくなれば、要発注と表記が変わり発注漏れを防ぎ、その横の確認欄にチェックを入れ、発注書作成というボタンを押せば(007)ワンクリックで当組合が使用している発注依頼書(008)が作成できます。

4)QRコードリーダーで入力

添付された、在庫管理シールをもとに、使用簿と呼んでいるエクセルシートに入力していくのですが、この入力作業をQRコードリーダーで行います(movie001)。動画の通り自動で入力されるため、入力ミスは発生せず、入力時間も大幅に短縮することができます。

QRコードの作成もエクセルのユーザーフォームを使用し必要事項を入力する(009)ことで、作成することができます(010)。

001

管理する倉庫を2つに分割し、一方を在庫棚、もう一方を救急車補充用棚に分けます

002

資機材を個包装し、管理シールを貼ります

003

在庫棚に保管します

004

救急車補充用棚の資機材がなくなりました

005

在庫棚から救急車補充用棚に資機材を移動させます。在庫管理シールを所定のファイルに添付してもらいます

006

在庫管理シート

007

在庫がなくなれば、要発注と表記が変わります。確認欄にチェックを入れ発注書作成というボタンを押せば

008

発注依頼書ができます

https://www.ff-inc.co.jp/kin_v/sikizai/140/140_01.html

Movie001
https://www.ff-inc.co.jp/kin_v/sikizai/140/140_01.html

QRコードリーダーを用いて入力します

009

QRコードの作成はエクセルのユーザーフォームを使用します

010

QRコード一覧

movie001

https://www.ff-inc.co.jp/kin_v/sikizai/140/140_01.html

QRコードリーダーでの入力
https://www.ff-inc.co.jp/kin_v/sikizai/140/140_01.html

(2)納品

納品があれば、使用簿に入力することで、在庫管理シートの内容は更新され、要発注とチェック欄が自動で外れ、発注状況の確認も行えます。

3.コスト

使用している資器材は、QRコードリーダー約15,000円と、資機材管理シールとして使用しているラベルシールと個包装時に使用する梱包用ラップなどのその他の消耗品が約5000円となります。

よって、導入コストは、約2万円で、年間ランニングコストは約5千円で導入、運用が可能です。

4.考察

今回、QRコードの導入と、エクセルVBAの導入で、入力ミス等のヒューマンエラーの削減と入力時間や、購入事務にかかる時間の大幅な短縮を可能になりました。さらに、正確に在庫の流れを把握することで、必要購入数を明確化することができ、不要な在庫の保有を軽減させることで、使用期限切れ等による資器材の廃棄等を大幅に削減でき予算執行の適正化につながっています。独自システムは、個人の能力向上で柔軟な対応が可能であり、対話型AIの導入普及によりさらに高度なシステム構築も可能になるのではないかと思います。

職員によるDX化は低コストでありながら高い費用対効果の確立が可能であると考えますが、その一方で、デジタル化には個人の能力が求められるという課題があります。この在庫管理システムの構築に向け、プロジェクトチームの立ち上げを行い能力の平準化を図りましたが、運用後も継続して情報共有しシステムのブラッシュアップをするとともに、救急業務のデジタル化に向けた、人材育成を行い、職員のデジタルリテラシーの向上と、行動を後押しする組織力が組織全体のDX化につながると考えます。

OLYMPUS DIGITプロフィール
名前 神谷 佳希(かみたに よしき)
所属 西はりま消防本部 情報指令室
出身地 兵庫県相生市
消防士拝命 平成25年
救命士合格 令和3年

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