251206最新救急事情(262)昨年(2024)来騒がれている感染症2つ

月刊消防 2025/03/01号 47(03), 通巻549号　p72-3

リンク

去年末来騒がれている感染症2つ

はじめに
アフリカ・コンゴでの感染症
中国での感染症
これからも出てくる感染症
文献

はじめに

新型コロナが終わって、しばらくはパンデミックはないだろうとは思っているのだが、新型コロナの影響があまりに大きかっただけに、感染症の流行と聞くと身構えてしまう。今回はアフリカと中国で報告された感染症を2つ紹介する。

アフリカ・コンゴでの感染症

2024年12月に報道されるようになった感染症。当初は原因不明とされていたがその後マラリアの一種であることがわかり、マラリアのない北海道に住む私はホッとしたものである。

WHOによる2024年12月8日の報告1)によると、最初の症例報告は2024年10月24日。日本では10月27日が衆議院議員選挙の投票日だった。初報告から1ヶ月半後の12月5日までに感染者406例、死亡が31例。死亡率は7.6%なので出始めの新型コロナアルファ株の20%より少ない。症状は発熱、頭痛、咳、鼻水、身体の痛みであり、これだけ見れば普通の風邪である。感染者の大半は小児で特に5歳未満。ただ重症例は全て重度の栄養失調である。重度の栄養失調と述べられていることから、直接にはこの感染症が死亡原因となったとしても、健常人にはそれほどの危険はないことがわかる。

WHOは2024年12月27日に続報2)を出している。それによると、患者数は2024/12/16で891例と８日前の報告の２.2倍となったものの、死亡数は48例で1,5倍止まり。患者430例の検査ではマラリアのほか、インフルエンザA、ライノウイルス、新型コロナ、旧型コロナ、パラインフルエンザ、アデノの各ウイルスが検出された。これらの結果からWHOは、栄養失調であるヒトに対して一般的な季節性ウイルス性呼吸器感染とマラリア感染が重なったことで今回の症状が出現したこと、重度の栄養失調を持つ５歳以下の小児が死亡していることを指摘している。背景として、患者が発生した地域は内戦が続いており、慢性的に食料が不足している。当然医療資源も不足しており、WHOとしては当該地域へ迅速対応チームを派遣し、監視強化と地域支援を行なっている。

中国での感染症

中国で大流行しているらしい。中国の大型連休である春節が2025年1月29日から始まるため、感染者が中国から日本にどっと押し寄せて、2020年のさっぽろ雪まつりのように国内大流行のきっかけになるのではと危惧されている。

この感染症、ヒトメタニューモウイルス感染症であることが明らかとなっている。NHKによると3)、2024年の終わりから中国で感染が拡大しており、2024年1２月23日から29日までの１週間で感染症検査で陽性となった人では、インフルエンザが30.2％、次にヒトメタニューモウイルス6.2%となっていた。

そのヒトメタニューモウイルスについて。WHOによれば4)、2001年に初めて特定されたウイルスで、RSウイルスと共にニューモウイルス科に属している。風邪（上気道感染症）を引き起こすウイルスの一つである。通常は軽症で済むが、重症化する例もある。感染経路は飛沫感染と接触感染。空気感染についてはWHOでは明示されていない。症状は普通の風邪と同じで、咳、発熱、喉の痛み、鼻水。鼻づまり、体の痛み、頭痛である。患者の一部は肺炎へ移行するのも同じである。感染者の多くは５歳未満であるが、ずべての年齢で感染する可能性がある。重症化リスクは乳児、高齢者、免疫抑制状態、慢性閉塞性肺疾患患者、喘息患者で認められるが、これも普通の風邪と共通している。ワクチンは存在しない。感染防止で気をつけることは新型コロナと同じである。

ではなぜ中国で大流行して大騒ぎになっているのか。コロナウイルスのように、新型が発生したのか。

まず、新型発生については否定できるようだ。これは遺伝子解析の結果ではなく（おそらく遺伝子解析を行なってはいるのだろうが）、感染状況から「新型ではない」と否定しているようである5)。

中国で大騒ぎになっている原因も明らかではない。WHOの2025年1月7日の報告6)では、「中国で報告されている急性呼吸器感染症（ヒトメタニューモウイルス感染症を含む）は冬季の予想範囲内であり、異常な発生は見られていないとしている。

これからも出てくる感染症

アフリカでの感染症はニュースを聞いた時から日本には関係ないだろうと思った。一方、中国の感染症は、相手が中国だし新型コロナの例もあるので大丈夫かなと思っていたが、今のことは大丈夫のようだ。新型コロナの経験からは、私たちの生活と関係ないところで新しい感染症は出てくるようなので気にしていてもしょうがないのかも知れないが、感染症に注意を払うことは必要だろう。