260107応急処置アップデート THE MOVIE II 02 擦り傷

救急の周辺

健康教室2025/04/15 健康教室2025年5月号 p58-60



応急処置アップデート THE MOVIE II 02
擦り傷

東山書房 / 『健康教室』2025年5月号「応急処置アップデート THE MOVIEⅡ」#2

今回は擦り傷です。日常ありふれた外傷ですので、基本をしっかり押さえましょう。

目次

動画解説

1.確認する

001

なぜ擦り傷を負ったのか原因を確認します。

002

他にけがをした箇所はないかも確認しましょう。

2.処置

003

水道水で傷口を洗います。水道水が痛くて嫌がる場合は生理食塩水で洗います。

004

擦り傷で大量出血はまずありません。圧迫だけで出血はコントロールできます。その後被覆します。

005

ティッシュで止血すると繊維が傷口に張り付き後で取るのに苦労しますので避けましょう。

3.病院受診の目安

006

小石などの異物が洗っても取りきれない場合。傷の中に埋まっている可能性が高く、放置すると感染を起こしたり、外傷性刺青となる可能性があります。

007

止血できない場合や疼痛が強い場合も病院へ行きましょう

008

古釘を刺した、泥汚れがひどく洗いきれない場合も、病院へ行ったほうがいいでしょう。破傷風という致死的な感染症にかかる可能性があるためです。

解説:湿潤療法について

(1)湿潤療法とは

皮膚欠損には湿潤療法が有効です(008)。

・傷口をよく洗う

・保湿材で傷口を覆う

・皮膚の再生を待つ

というものです。傷口の乾燥を防ぐことで痛みを感じることなく皮膚が再生します。予めワセリンを傷口に塗って保湿剤で覆うことも、保湿の観点から有効です。

保湿は乾燥による細胞壊死を防ぐ1)ことから、修復するを組織量を減らす効果もあります(009)。

欠点もあります(010)。

・液(汁)が出る

・臭い

・観察が必要

また、湿潤療法中に傷口が熱を持ったり痛みを感じるときは感染を起こしていますので速やかに病院を受診します。

(2)被覆材

原法は食物などのラップ材で覆うのですが、医療現場では吸水性のあるスポンジ製材や殺菌成分の入ったハイドロゲルを用いています。市販の湿潤療法材は浸出液を吸いとる素材が使われています。

(3)被覆材交換の頻度

感染を起こさないようなら被覆材を変える必要はありません。文献を調べても頻度はまちまちです。ただ、通常の傷絆創膏より交換の頻度は有意に低下します2)。

(4)治療効果 2) (011)

一般的な傷の場合、湿潤療法は従来の乾燥療法と比較して、治癒期間が半分になり、感染率も低下します。糖尿病患者を対象とした研究では湿潤療法は従来の乾燥療法と比較して治癒は遅れたものの、上皮形成は早く、患者の気分も優れていることが報告されています。

(5)液が出なければ早く治るのか

湿潤療法で大量に出る液体。湿潤療法なら覆いの端から吸い出せばいいのですが袋状の傷や骨折では組織の接着を妨害する可能性があるので注射器で吸い出します。液を溜めないように、初めから手術創に陰圧をかけて液体を吸い出す装置があります。この装置の効果は「ある」という論文3)と「ない」という論文4)がありますので、結局のところ液体はあまり気にしなくてもいいのかも知れません。

養護の先生が経験した症例

≪症例1≫

登校時に学校の駐輪場で、自分の自転車から降りる際、足が自転車に引っ掛かり転倒し、左膝を擦りむいた生徒がいました。出血があり、また砂や小石が傷口についていたため、流水で傷口を流しました。砂を落とすことは出来ましたが、直径3~4㎜程度の小石を洗い流すことが出来ない状態でした。小石が傷口に浅く入り込んでいるのか、深く入り込んでのかがわからなかったため、ピンセットで小石の状態を確認しました。びくともしないため、深く入り込んでいる可能性があると考え、病院で麻酔をして取ってもらった方が良いと思い、止血後、患部にナースバンを当ててテープで固定し、早退して病院受診(形成外科)することにしました。

小石が傷口に入り込んでいる場合、そのままフィルムなどを貼り傷口を乾かさないようにした方が良いのか、小石が傷口に入り込んでいるため、湿潤にするのではなく、絆創膏などで保護する感じでいいのか、どのように傷口に何をあてたらいいのか実際悩みました。

≪症例2≫

グラウンド(人口芝生)でサッカーかソフトボールを行っていた時に擦りむいた生徒で、脛の大部分を擦りむいた状態でした。流水後、絆創膏を患部に貼ろうとしたが、擦り傷が大きすぎてサイズが合わず、ナースバン2枚程度並べて包帯で固定し、経過観察と対応したことがあります。

文献

1)J Burn Care Res. 2019 Oct 16;40(6):900-906

2)Int Wound J. 2023 Jul 19;20(10):4410–4421.

3)J Tissue Viability. 2022 Feb;31(1):164-172.

4)Cochrane Database Syst Rev 2018 Jul 3;7(7):CD012522.

 

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