健康教室2025/09/10 健康教室2025年10月号 p56-9
応急処置アップデート THE MOVIE II 07
歯が抜けた
目次
はじめに
今回は歯の脱臼です。ほぼ全ての学校で歯の保存液が配備されていますのでそれを使います。保存液がない場合には経口補水液に漬けるかラップ材で包んで歯医者さんに持参しましょう。
なお、動画内容とその後の解説はアメリカ心臓学会とアメリカ赤十字社の共同で2024年に出された応急処置ガイドライン1)に準拠しています。
動画

001
歯が脱臼した場合は、準備ができるまで口の中に歯を入れておきます。歯を飲み込まないように注意しましょう。歯茎からの出血はガーゼを噛ませるなどで圧迫止血します。

002
歯茎に埋まっている部分は触らないようにします

003
土などで汚れている場合は、水でさっと洗います

004
抜けた歯を歯医者さんへ持っていく時には、学校にある保存液に入れましょう。保存液は冷やした方が歯の接着率が良くなります。

005
保存液がない場合には、経口補水液に浸けます。

006
単純にラップで包むのもお勧めです。経口補水液と同等の保存能力があるとされています。

NEW
牛乳は有名ですが歯の保存液としての効果は劣ります。

007
歯が折れた場合も全く同じ処置をして歯医者さんへ行きましょう。
解説
永久歯であれば歯は抜けたらもう生えてきません。脱落した歯は適切な方法で歯医者さんへ持って行き再接着してもらいましょう。
1.歯根膜とは(008)

歯の根元には歯根膜という膜が付いています。組織学的には線維(せんい)細胞であり、下顎骨と歯根を接着させる役目があります。体のどこにでもある原始的な細胞なので、適切に保存すれば細胞死することなく再接着が可能となります。
2.保存媒体のお勧め順(表1)
応急処置ガイドラインに書かれている保存方法です。ハンクス培養液とは研究室で細胞培養に使う赤い液体です。プロバイオティクヨーグルトとは、「免疫を整える」「医師の__%が奨める」とコマーシャルされているヨーグルトのことです。
表1:保存媒体のお勧め順
第一選択
・ハンクス培養液
・経口補水液
・プロポリス(10%, 50%,100%)
・重湯
・ラップ材で包む
第二選択
・牛乳(脂肪濃度は問わない)
・本人の唾液
第三選択
・他人の唾液
・プロバイオティクヨーグルト
・卵白
・アーモンドミルク
3.お勧め1:専用保存液(009)

「ティースキーパーネオ」は現在どこの学校でも配備されています。学校で歯が抜けた場合はこの液に浸しましょう。
歯は「なま物」ですので、冷えている方が長持ちします。ですから保存液は冷蔵庫に入れておきます。また使用期限は2年程度で短いため、期限切れに注意しましょう(→症例2)。
4.お勧め2:経口補水液(010)

熱中症や発熱に備えて経口補水液を保存している学校もあります。ティースキーパーネオが税込1900円程度なのに比べOS1は1本200円ちょっとです。ティースキーパーネオは歯にしか使えませんが、経口補水液は脱水補正にも使えます。賞味期限はボトルでは15ヶ月、粉末では5年です。
5.お勧め3:ラップ材(011)

屋外で専用保存液も経口補水液もない場合は、ラップ材やビニール袋に包んで冷やします。表1第三選択に「他人の唾液」とあるくらいですので、それほど清潔には気を使わなくても良いようです。ガイドラインに記載はありませんが、知り合いの歯科医は脱落歯の周囲に唾液をつけてラップを巻くことを勧めています。
養護の先生が経験した事例
1
小4女子。下校時間、玄関を出てすぐに走ったところ、バランスを崩して転倒。傘と荷物を持っていたため、両手がふさがっている状態でした。手をつけないまま、コンクリートに顔面を打ち付けて負傷しました。うがいをさせ、顔面の傷を洗浄。打撲部位(鼻・口元)を冷却しました。口腔内を確認すると、前歯の動揺と根元からの出血、口元の腫脹もみられたため、すぐに保護者に連絡をして、専門医を受診させました。
処置については、口腔内の出血部位にガーゼをあてるかどうかを迷いました。歯の動揺があるため、できるだけ負傷部位に小さな力も加えたくない想いが働いて、結果的に歯については何も処置せずに受診させました。黒いビニール袋の中にティッシュを数枚入れて、出血が口腔内にたまったら吐き出させるようにさせたのみです。
受診結果は、上顎骨骨折、外傷性歯の亜脱臼、上口唇裂傷でした。
2
中3男子。体育でバスケットボールをしている時、他生徒の肘が口に強く当たり、歯が根本から折れました。本人が手に取りましたが、体育教師が口に含ませ保健室に連れてきました。
歯の保存液の使用期限が過ぎていて、注文中だったため使用できませんでした。注文時期が遅かったことを反省しました。
口の中を確認したところ、出血は少量でした。折れた歯を口に含ませたまま、すぐ近くの学校歯科医に受診のお願いをしたが受け入れてもらえず、隣の学区の歯科医に連絡したところ受診を受け入れてくれました。その際、歯をどのようにしたらよいか聞いたら「チャック付きの袋等に入れてもいいですよ」とのことだったので、小さなチャック付きの袋に唾液とともに入れさせました。その後保護者同伴で受診。抜けた歯は使用できませんでした。
文献
1)Circulation 2024;150:e519-79


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