健康教室2025/08/10 健康教室2025年9月号 p56-9
応急処置アップデート THE MOVIE II 06
熱中症
目次
はじめに
今回は熱中症です。職場における熱中症対策が2025年6月1日から義務化されました。違反すると6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられるようになりました。児童生徒だけでなく、教職員の皆様もご注意ください。
A.確認と処置
患児の体温が40℃を超えている場合は死亡する可能性がありますので、一刻も早く体温を下げなければなりません。

001
救急車を呼ぶ基準です。意識障害や

002
痙攣といった誰でもわかる異常は救急車の対象です

003
学校の場合は「水を飲めない」なら救急車です。

004
意識障害と高体温がある場合、第一選択は氷風呂です。

005
次善の策は冷水シャワーと送風です。玄関先の散水シャワーを使います。周りに児童生徒がいようが躊躇してはいけません。迅速に体温を下げることが救命につながります。

006
意識があり姿勢を保てるのなら、冷水バケツに手足を入れます。

007
休息と水分補給によっても不快な症状が治まらないようなら病院を受診しましょう。
B.解説
熱中症は発症状況から判断は容易です。以下は環境省「熱中症予防サイト」及び日本スポーツ協会「熱中症を防ごう」からの情報をまとめています。
環境省「熱中症予防サイト」
日本スポーツ協会「熱中症を防ごう」
1.救急車を呼ぶ基準(008)

「水が飲めるか」を基準とします。水が飲めるようなら学校で対処可能。水が飲めない(意識障害を含めて)・飲んでも吐いてしまうのなら救急車を呼びます。日本スポーツ協会では「意識障害があれば救急車」「意識正常で水分摂取不能なら医療機関へ搬送」となっていますが、学校の場合は社会的責任が大きいので飲水の可否だけで救急車を呼んで構いません。
2.軽症者への対処(009)

涼しい場所に移し、衣服を緩めて寝かせ、スポーツドリンク(できれば氷シャーベット)などで水分と塩分を補給します。エアコンやうちわで風を送って体を冷やします。飲ませるときは上体を起こして誤嚥しないようにしましょう。体位が保てるようなら手足を氷水につけたり、頬や首筋を冷却材で冷やしたりすると迅速に回復します。
まれに「寒い」と訴える患者がいます。その場合は保温をします。
校内の処置で症状が改善した場合も、当日の運動は禁止し、保護者に伝えて翌日まで観察するようにさせます。
3.重症者への対処

「初めに冷却、次に搬送」1)。高体温が明らかな場合には急いで冷やさなければなりません。
意識障害がある熱中症の患児を発見したら急いで人を集めます。携帯電話を持っている人に119番させ、急いで患児を冷却できる場所に移動させます。
冷却の第一選択は氷水風呂です。学校では風呂はないので、玄関先に患児を寝かせ散水ホースからの水道水を大量にかけ、風を送ります。散水ホースも内容なら患児をエアコン最大にした部屋に入れ、扇風機で風を当てつつ、氷水で冷やしたタオルを全身にかけ、タオルを次々に取り替えます。首や足の付け根の動脈を冷やすだけでは体温は下がりません(010)。
4.飲水は喉が渇いた時に(011)

「喉の渇きを感じなくてもこまめに(時間を決めて)水分を補給しましょう」2)は若年者には当てはまりません。水中毒になります。若年者では喉の渇きに応じて水分を補給します。
C.養護の先生が経験した事例
①8月下旬、午前中に駅伝練習をしていたときのことです。中2男子が練習メニューを走り終えた途端に、倒れ込みました。意識はありましたが、あまり力が入らず、頭痛・めまいがあったため、救急車を要請しました。汗はかいていましたが、体は少し冷たく感じました。走っている途中から具合が悪くなってきたようですが、最後まで頑張ってしまったようです。
②9月上旬、体育祭でのことです。中2女子が応援中に、めまいと吐き気を訴えました。応援席にテント等の屋根はありませんでした。エアコンの効いた部屋に移動し、経口補水液を少しずつ補給しましたが、症状が治まらず、救急車を要請。運動中よりも、ただ座っている時間の方が、暑さが辛かったようです。大規模校であったため、待ち時間が長くなってしまっていました。そしてこの後、同様の症状の生徒が2例も続き、同じく救急車を要請し、消防署から体育祭の時期を考えるよう、怒られたそうです。
③7月下旬に、体育館で女子バレーボール部の活動をしていたときのことです。中1女子が試合形式の練習をしているときに、気持ち悪さと頭痛を訴えました。水分補給し、座って休んでいましたが、症状が治まらず、保健室に移動。平熱でバイタルサインの異常はありませんでしたが、気持ち悪さが治まらず、保護者に連絡。迎えに来てもらい、そのまま内科で受診していただきました。内科では点滴の処置を受け、その後、症状は治まったようです。
④6月中旬、1校時に、体育館で市中総体の報告会を行いました。6月ですが最高気温が30度を超える予報で、元々6校時に報告会を行う予定だったところを、時間をずらし、少しでも涼しい1校時に実施しました。窓やドアは全開にして、冷風機(目の前に行かないと涼しくありません)も使用していましたが、湿度も高く、体育館のWGBTは29となっていました。報告会が終わったときに、気持ち悪さと頭痛を訴え、中2女子が保健室に来室。体温が37度後半になっており、経口補水液を摂取し、ベッドで休養。
肥満度が高い生徒でした。1時間程で体温は37度にまで下がり、母親に迎えに来てもらい、早退しました。その後、家庭でも異常なく、過ごしていたようです。
文献
1)J Crit Care 2025 Jun 3:89:155134
2)厚生労働省。熱中症を防ぎましょう。https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/prevent.html


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