健康教室2025/12/10 健康教室2025年12月号 p58-61
食物アレルギー
目次
はじめに
今回は食物アレルギーです。食物アレルギー、特にアナフィラキシーショックになるほどの重篤な症状は多くの場合予防が可能です。しかし、入っているのを知らないで食べてしまったという人が病院に運ばれてくる例をよく経験しますので、油断は禁物です。
幸い、食物アレルギーは年齢とともに有病率が減少し、症状も軽くなっていきます。またススメバチが体に直接毒を注射するのに対して、食物アレルギーでは原因タンパクをゆっくり吸収するので、症状を訴えてからショックになるまで幾らか時間があります。すぐ対処できるように、アクションカードなどでもしもの時の手順を確認しておきましょう。
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A 動画

001
文部科学省・各レベルの教育委員会では詳しいガイドラインと解説を発出しています。とても見やすくできています。必ず目を通しておきましょう

002
それでも食物アレルギーからアナフィラキシーショックになる子供が出ないとも限りません。
喉の違和感は初期症状として重要です。

003
ショック症状としては顔面蒼白、冷感、虚脱(ぐったり)、脈が触れない、呼吸不全があります。写真は顔面蒼白と冷感(冷や汗)です

004
エピペンが処方されている児童生徒ならエピペンを打ちます。嫌がっても押さえつけて打ちます

005
注射をする場所は太ももの外側です。強く押さえつけるとカチッと音がして針が出てきます。その状態で数秒エピペンを保持します。

006
ちゃんと注射できたら先端が伸びていますので確認します

007
呼吸困難があるなら上体を起こして救急車を待ちます

008
意識障害があるなら回復体位とします
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B 解説
食物アレルギーについてはこの連載で何度も取り上げてきました。今回は予防と治療について述べます。以降の内容は、「厚生労働科学研究班による食物アレルギーの診療の手引き2023」「食物アレルギー診察ガイドライン2021ダイジェスト版」から引用しています。
1.疫学
食物アレルギーは年齢とともに患者数が減少していきます(グラフ1)。これは、のちに述べるように年齢とともに脱感作が進んでくるためです。
原因食物は鶏卵が最も多く、ついで牛乳、小麦、木の実と続きます(グラフ2)。
新規発症の原因食物としては、幼稚園児では木の実、魚卵、落花生の順ですが、小学生から高校生になると果物、甲殻類、木の実の順となり、18歳以上の成人では甲殻類、小麦、魚と順位が変わっていきます。近年は幼児期の木の実アレルギーが増加してきています(009)。この順位の変化は、乳幼児期の鶏卵・牛乳・小麦は12歳までに半数が耐性を獲得することが原因です。一方、甲殻類・そば・ピーナッツ・木の実類は耐性を獲得しづらいことがわかっています。また食物依存性運動誘発アナフィラキシーも寛解しづらいとされています(010)。

グラフ1
食物アレルギーを持つ患者の年齢分布

グラフ2
全年齢での原因食物

009
高校生以下の原因植物

010
耐性獲得
2.予防
最大の発症リスク因子はアトピー性皮膚炎です。アトピーと診断がつけられていない場合では、生後1-2ヶ月で湿疹を有する児は食物アレルギーは発症しやすくなります(011)。
発症予防については、効果のあるものはないようです。妊娠中や授乳中の食事制限や母乳•人工乳、離乳食の時期や内容について検討されてきましたが、有意なものはありません。湿疹が食物アレルギーと関連していますので、湿疹の管理は必須です。

011
発症リスク
3.治療
原則は「正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去」です(012)。食物アレルギーは耐性を獲得することが期待でるので、
1)食べると症状が誘発される食物だけを除去する
・「念のため」「心配だから」といって必要以上に除去する食物を増やさないこと。
・原因を鵜が割れている食物は正しく検査をして診断を確定させること
2)原因食物でも症状が誘発されない「食べられる範囲」までは食べることができる
・食べられる範囲までは積極的に食べるようにする
管理栄養士の食事指導は重要です。

012
治療の原則
C.養護の先生が経験した事例
・小学6年生 男児 「アナフィラキシーの疑い」
卵アレルギーを有する児童が、修学旅行2日目の朝食でベーコンを食べた際に、のどがイガイガするとの症状を訴えました。献立について、事前に保護者と確認しており、食べる直前にも本人とホテルの担当者、学校の担当者で確認をしていました。本人は、前にお母さんがベーコンに卵の白身が入っていると言っていたことを思い出したようでした。すぐに保護者へ連絡し、保護者の指示で持参していた内服薬を飲ませ、氷を舐めさせて様子をみました。しかし、症状が落ち着かず、次第に呼吸がハアハアし、息が苦しいとの訴えがあったため救急車を要請しました。救急車で近くの学校の校庭に運ばれ、ドクターヘリで病院へ搬送されました。病院で点滴の処置をしてもらい落ち着きました。
・小学5年生 男児
乳アレルギーを有する児童。小学4年生までは牛乳を停止していましたが、負荷試験等を受け、小学5年生から牛乳停止が解除になっていました。給食でクリームシチューを食べた際に、のどの違和感を訴えました。持参していた内服薬を飲ませて、保護者に連絡をし、その日は迎えに来ていただきました。その後、同じようなことが2、3回あり、その度に保護者に連絡をし、再度の受診を勧めていましたが、保護者からは「牛乳停止は解除されているから大丈夫。給食費を払っているのに食べられないのか」といった話がありました。
・小学2年生 男児
卵アレルギーを有する児童が、メロンパンを食べてしまい、のどのかゆみを訴えました。給食で提供されるパンは卵を使用していないため、普段は皆と同じパンを食べていたのですが、メロンパンだけは卵が使用されているため、家庭から代わりのパンを持参しなければならなりませんでした。しかし、保護者は代わりのパンが提供されると思っており、家庭から代わりのパンを持参させていませんでした。また、担任は本人との確認を怠っていました。本人は、食べるパンが無く、メロンパンが食べたかったこともあり、他の児童と同じメロンパンを半分食べてしまったところで、のどにかゆみを感じ担任に伝えました。すぐに保護者に連絡をして学校に迎えに来ていただきました。
・支援学校中学2年 女子
学校行事の昼食で友だちのお弁当に入っていたエビフライを食べ、その後の自由時間に鬼ごっこをしていて気分不良になり、教室でうずくまっていたところを先生が見つけ、一緒に保健室に来室しました。来室した時には、口や目の周りはすでに腫れていて、問診で上記のことを話してくれたため、その他の皮膚状態と症状を確認。全身に膨隆疹が広がり、気分不良はあるものの、血圧とSpO2の低下はなく、その他の症状もなし。本校は病院に隣接しているため、すぐに車いすで隣接の小児科外来に搬送しました。病院ではアドレナリンの注射を受け、念のため1泊入院、大事には至らずホッとしました。後で聞いた話ですが、以前から体調の悪い時にエビを食べると口が腫れることがあったが給食にエビは出ないからと、学校には申告されていなかったそう。学校行事や調理実習など、いつもと違うシチュエーションでの食事は要注意だなと改めて感じた出来事でした。
D.文献
「厚生労働科学研究班による食物アレルギーの診療の手引き2023」https://www.foodallergy.jp/wp-content/uploads/2024/04/FAmanual2023.pdf
「食物アレルギー診察ガイドライン2021ダイジェスト版」https://www.jspaci.jp/guide2021/


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