近代消防 2025/11/15 (2025/12月号)p52-4
スクープストレッチャーでの挟み込みを防くシート
福井秀斗
中野真章
戸倉俊輔
三ツ井裕介
青山雄紀
中栄翼
細川拡希
養覚裕哉
大津市消防局
目次
1.はじめに
当消防局では119番通報を受信した際の情報から傷病者の負担軽減などを考慮し、スクープストレッチャーを使用して車内収容する活動を行っています。
スクープストレッチャー(001)は全身固定もできる傷病者搬送器具です。本体を2分割(002)し、傷病者をすくうようにして収容します。このすくう時に傷病者の背面と臀部の衣服や皮膚を挟んで傷病者に苦痛を与えかねません(003)。この欠点を何とか改善できないかなと考えました。

001
スクープストレッチャー

002
傷病者を収容するときには本体を2分割して

003
また本体を結合するときに衣服や皮膚を挟むことがある
2.挟み込み防止シート(004)
厚さ2mmの塩ビ板を切断し、ビニールテープで辺縁を養生した資機材です。今回は004のサイズとしましたが、傷病者の体格に合わせ、いくつかのサイズを作成する必要がありそうです。

004
挟み込み防止シート
3.使い方(動画001)
傷病者の腰部からシートをスライドさせます(005)。次に左右の長さが均等になるところまで差し込み調整します(006)。
均等に出したシートをスライドさせ、肩甲骨及び臀部の下に滑り込ませます(007)。この時にシートは斜めのままで使用可能であり、背面全体をシートに乗せる必要はありません。
シートの設定が終わると上部の固定部分をロックします(008)。
足側をロックします(009)。シートがスクープストレッチャーより下に滑り込まないよう他の隊員が補助を行う必要があります。
シートを傷病者に対して直角の位置に戻します(010)。
シートをゆっくり抜き取り(011)、ベルト固定をして搬出を開始します。
動画001
使い方をご覧ください

005
傷病者の腰部からシートをスライドさせる

006
左右の長さが均等になるように調整

007
シートをスライドさせ、肩甲骨及び臀部の下に滑り込ませる

008
上部をロック

009
足側をロック

010
シートを直角に戻す

011
シートを抜き取る
4.シートの有無で身体に与える影響を比較する
シートを使用した場合と、使用しなかった場合の身体に与える影響について比較しました。
(1)挟まれ加減
シートを使用した場合は背面と臀部で挟まれている部分はありません(012)。
(2)時間
スクープストレッチャーを傷病者の横に準備した状態から、ベルト固定までの時間を計測しました。シート未使用に比べ、シート使用により平均6秒長くかかりました(表001)。

012
シートにより挟まれは防げる

表001
シート使用により完了は6秒伸びる
5.傷病者役の感想
検証後、傷病者役職員に感想を記載します。
・シートを使用しない場合は背部と臀部がスクープストレッチャーに挟まれ痛みを感じた
・シートの使用時は挟まれることなく、痛みは感じなかった。
・体動については、使用の有無での差は特に感じなかった
6.考察
このシートの利点は傷病者に衣服や皮膚を挟む等の苦痛を与えないで済むことです。欠点は搬送開始までにシートを扱う時間が加算されることですがわずかの時間であり、傷病者に与える苦痛及びストレスを軽減できることは大きな利点であり、スクープストレッチャーの本来の使用価値が高まったと思慮できます。

名 前:福井 秀斗(フクイ シュウト)
所 属:滋賀県大津市消防局
出身地:兵庫県尼崎市
消防士拝命:平成29年4月
現 職:救急隊 隊員
趣 味:筋力トレーニング・映画鑑賞


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