260819救助の基本+α(113)救助操法における各支点にかかる荷重について_松戸市消防局_安藤直毅

基本手技


月刊消防 2026/02/01, p32-7

月刊消防 原稿

題名 「救助操法における各支点にかかる荷重について」

1 はじめに

今回、月刊消防の「救助の基本+α」掲載記事を担当させていただくことになりました、千葉県松戸市消防局小金消防署の安藤直毅です。「基本」については日ごろからこだわりを持って実施しており、今回の掲載を機会に改めて勉強させていただきました。「+α」とまではいきませんが、一つでも何かの足しにして頂けたら幸いです。

(1)松戸市について(001)

松戸市は、千葉県北西部に位置し、江戸川をはさんで東京都と埼玉県に隣接しています。東京都心からは20km圏内にあり、都市へのアクセスが便利で6路線23駅と周囲の都市と比べて路線・駅ともに多数あり、東京のベッドタウンとしても支持されております。そのため、団地・マンション・アパート等の集合住宅が建物の大半を占めています。

松戸市の面積は61.38㎢で東西南北約11kmと、ほぼひし形状に広がり、令和6年の6月には人口50万人に達し、全国で28番目の市となりました。

また、「共働き子育てしやすい街ランキング2023」の総合1位を受賞し、子育てしやすい街として注目をいただいております。

(2)松戸市消防局について(002)

松戸市消防局は昭和29年の松戸市消防本部を発足以来、市内を10区域に分け、1局10消防署、職員520名体制であります。そのうち、市内3か所にそれぞれ高度救助隊1隊、特別救助隊2隊が配置されていて、救助隊員は専任で1小隊7名の総員42名となっております。また、令和5年の4月から方面指揮隊の運用を開始し、災害対応体制の強化を図っています。

(3)松戸市救助隊について

松戸市のほぼ真ん中に位置する消防訓練センターを活用し、年間を通して様々な訓練を実施しております。年間の動きについては、救助大会訓練事業、高度救助集合訓練、集合研修、集合訓練、他機関連携訓練と3隊が集結し技術や知識の共有を図り災害活動に備えています。

災害の状況については、令和5年中で、救助事案件数569件、そのうち建物等による事故が162件、その他の事故が305件であり、その他の事故についても建物に起因する内容がほとんどのため、全体として救助事案の約8割が建物に関係する内容となっております。そのような状況から三つ打ち救助操法には毎年重きをおいて練磨に励んでおります。スタティックロープも導入しているところではありますが、災害活動は救助操法(三つ打ちナイロンロープ)をメインとした活動で、とにかく基本を大事に訓練や活動に当たっているところであります。実災害では、はしご水平1法、2法や一箇所吊り担架水平救助、はしごクレーン救助などをよく選択しています。

(4)寄稿内容について

以上のことから、今回の寄稿を機会に、救助操法で使われる各支点にかかる荷重について今一度確認してみることにしました。荷重の見える化をすることにより、支点などに使用する構造物の負担はどれくらいかかるのか、隊員への身体や救助資機材の負担はどれくらいかかるのかを数値で把握することができ、安全管理の向上が図れると考え、今回の検証結果を「救助活動の基本」として皆様に共有できたらと思います。

001

松戸市の位置

002

松戸市消防局の管轄域

2 各支点にかかる荷重について

荷重計(エンフォーサー)を使用して荷重テストを実施しました。ロープは荷重計の設定も含め、全て三つ打ちナイロンロープを使用しております。確保や救出時の操作によって荷重に影響が出る可能性があるため、10回実施して荷重計に出た値の平均を記録としました。要救助者は重量ダミー(70kg)に限定して実施しております。ダミーを出す際や救出(上げ及び下げ)する際に衝撃荷重がかからないように細心の注意を払って実施しました。そのほか、すべて基本通りの行動を徹底し実施しております。

(1) 応急はしご救助

  ア 測定箇所(全体図:003)

   ・はしご上部支点(004)

• はしご下部支点(005)

003

応急はしご救助。全体図:

004

はしご上部支点

005

はしご下部支点

イ 結果

表の各項目上段については、ダミーを救出できる位置まで上げ、確保した状態のそれぞれの荷重となります。下段については前述の位置から救出完了までのそれぞれの最大値となります。

  ① 上部支点の最大値:126kg

  ② 下部支点の最大値:88kg

(2) はしご水平救助1法

  ア 測定箇所(全体図:006)

   ・確保員にかかる荷重(007)

   ・窓枠にかかる荷重(008)

006

はしご水平救助1法。全体図

007

確保員にかかる荷重

008

窓枠にかかる荷重

イ 結果

表の各項目上段については、担架を救出できる位置まで出し、確保した状態のそれぞれの荷重となります。下段については前述の位置から救出完了までのそれぞれの最大値となります。

① 腰確保の最大値:70kg

  ② 窓枠の最大値 :96kg

   

(3) はしご水平救助2法

  ア 測定箇所(全体図:009)

   ・はしご上部支点(010)

・はしご下部支点(011)

• クロスバーにかかる荷重(012)

009

はしご水平救助2法.全体図

010

はしご上部支点

011

はしご下部支点

012

クロスバーにかかる荷重

イ 結果

表の各項目上段については、担架を救出できる位置まで上げ、確保した状態のそれぞれの荷重となります。下段については前述の位置から救出完了までのそれぞれの最大値となります。

① 上部支点の最大値    :128kg

  ② 下部支点の最大値    :70kg

  ③ クロスバー(左)の最大値:22kg

  ④ クロスバー(右)の最大値:26kg

(4) はしごクレーン救助

  ア 測定箇所(全体図013, 014, 015)

   ・はしご確保ロープ左右(016)

   ・上部支点、上部支点(固定滑車)(017)

   ・下部支点(018)

   ・動滑車(019)

   ・確保員(020)

013

はしごクレーン救助。側方ロープは120度

014

はしごクレーン救助。前方ロープは50度

015

はしごクレーン救助。全体図

016

測定箇所。はしご確保ロープ左右(写真4-4)

017

測定箇所。上部支点、上部支点(固定滑車)(写真4-5)

018

測定箇所。下部支点(写真4-6)

019

測定箇所。動滑車(写真4-7)

020
測定箇所。確保員(写真4-8)

イ 結果

表の各項目上段については、ダミーが地切りし確保した状態の荷重となります。下段については前述の位置から上階へ引き込むまでのそれぞれの最大値となります。

① はしご確保ロープ(左側)の最大値:36kg

  ② はしご確保ロープ(右側)の最大値:36kg

  ③ 上部支点の最大値        :48kg

  ④ 上部支点(固定滑車)の最大値  :120kg

  ⑤ 下部支点の最大値        :16kg

  ⑥ 動滑車の最大値         :88kg

  ⑦ 確保員の最大値         :27kg

(5) 一箇所吊り担架水平救助

  ア 測定箇所(全体図:021,022)

   ・上部支点(023)

   ・下部支点(024)

   ・確保員(025)

• GLの誘導員は壁面から10mの位置(026)で実施し、担架を壁面から離すための誘導は20cm壁面から離れた位置(027)をキープし、引きすぎないように実施した。

021

一箇所吊り担架水平救助。正面

022

一箇所吊り担架水平救助。下から

023

測定箇所。上部支点

024

測定箇所。下部支点

025

測定箇所。確保員

026

GLの誘導員は壁面から10mの位置で実施

027

担架を壁面から離すための誘導は20cm壁面から離れた位置をキープ

イ 結果

表の各項目上段については、担架を救出できる位置まで上げ、確保した状態のそれぞれの荷重となります。下段については前述の位置から救出完了までのそれぞれの最大値となります。

① 上部支点の最大値:120kg

  ② 下部支点の最大値:96kg

  ③ 確保員の最大値 :48kg

(6) つるべ式引上げ救助

  ア 測定箇所(全体図028)

   ・上部支点、上部支点(固定滑車)(029)

   ・下部支点(030)

   ・動滑車(031)

028

つるべ式引上げ救助。全体図

029

測定箇所。上部支点、上部支点(固定滑車)

030

測定箇所。下部支点

031

測定箇所。動滑車(写真6-4)

イ 結果

表の各項目上段については、ダミーが地切りし確保した状態の荷重となります。下段については前述の位置から上階へ引き込むまでのそれぞれの最大値となります。

① 上部支点の最大値      :52kg

  ② 上部支点(固定滑車)の最大値:110kg

  ③ 下部支点の最大値      :46kg

  ④ 動滑車の最大値       :106kg

 

3 まとめ

今回6つの救助操法に絞り結果を掲載させていただきました。合力や分力の知識から、計算でそれぞれの荷重を算出することもできますが、荷重計を使用して見える化を図ることで、より明確に確認することができました。隊員の活動レベルによって数値の誤差が生まれるかと想像していましたが、10回実施する中でほとんど数値に変化はありませんでした。それは「基本」について日ごろからこだわりを持って実施している成果でもあるのかと感じております。この「基本」から逸脱した行動をとった時、支点には意図しない高荷重がかかり事故に繋がるのではないかと考えます。

今回の検証を基本とし、今後、ロープの角度や三連梯子の角度、長さなどが変化することによりどのように数値が変化をしていくのか検証していき知識・技術の向上、そして安全管理の向上を図っていきたいと考えます。

プロフィール(写真 andou.jpeg)

氏 名  安藤 直毅(あんどう なおき)

所 属  松戸市消防局 小金消防署

     特別救助隊 隊長

出 身  千葉県松戸市

拝 命  平成17年4月

趣 味  DIY

 

 

松戸市消防局小金消防署特別救助隊(000)

左から

消防士長  松井 泰洋

消防司令補 藤山 光(副隊長)

消防士長  髙橋 義征(IRT登録隊員、救命士)

消防司令補 安藤 直毅(隊長)

消防士長  齊藤 一貴

消防士長  宇賀 由樹(IRT登録隊員)

消防士長  齋藤 魁斗

 

 




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