260916_VOICE#122_消防音楽隊_言葉では伝えられないものを、音の力で伝える

主張

月刊消防 2026/03/01, 48(03)通巻561、p73

月刊消防「VOICE」

私は、消防隊・潜水隊・水上オートバイ隊・高度救助隊・航空隊・救急隊など経験する機会に恵まれました。今回は、消防音楽隊についてお話します。

私は豊橋市消防音楽隊に入るとは夢にも思っていませんでした。入隊後は、トロンボーン担当となり音符が読めないなど、音楽をもっと勉強しておけば良かったと思う日々が何年か続きました。

音楽の転機が訪れたのは、トロンボーンの先輩と勤務が一緒になったことです。練習の仕方や音楽について教えていただき、急激に楽しくなり、吹ける曲も増えていきました。その頃、他市消防音楽隊との演奏会・中学生との演奏会などがあり、音楽を通し世代を超えた交流・消防を身近に感じてもらえる音楽隊の業務の魅力や音楽の力を感じる経験をした20代でした。

30代になり、災害現場での活動後や、国内の災害のニュースを目にする度に、「被災者の方の心に寄り添うことはできないか」と考えることがありましたが具体的に答えは出ませんでした。

30代も後半となり、指揮者の難しさに直面していた私は、過去にお世話になった他市音楽隊指揮者の方に指揮を教えてもらう機会がありました。その時、被災地において発災時のみではなく継続したボランティアが音楽でできないかと思っていることを話すと、同じ思いで驚いたことを覚えています。この繋がりから様々な計画をして、令和7年3月に被災地(石川県珠洲市)を訪問し4市消防音楽隊有志29名で演奏会を開催するに至りました。ご協力頂いた皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。

会場の病院・体育館には合計200名の子供からご高齢の方まで多くの方が来て下さいました。演奏を聴いた方の笑顔や涙を流す姿、所属の違う隊員が力を合わせ一つのハーモニーを作り、お客さんも奏者も同じ音楽で世代を超えかけがえのない時間を共有することができました。心に寄り添うことや「言葉では伝えられない想い」を伝えることができる音楽の力を感じる貴重な経験となり、兼務隊だからできる演奏広報を意識したいと思いました。また、災害への備えに油断がないだろうかと、被災地の方と接したことにより、消防業務に対する意識にも変化をもたらしました。

音楽は、それぞれの個性的な楽器が色々な音色を出し、和音や時には不協和音を表現に使います。音を間違えることもありますが、違う音で支えてくれることもあります。一つは小さな音でも、ハーモニーになると、大きな音色となります。そして違う音色を出していますが、目的は一つの音楽を奏でることです。

多様性の時代に、色々な個性の職員と話し合い、世代を越えて活動する消防にも共通するものがあると感じるようになりました。業務で始めた苦手な音楽から様々な繋がりへと広がり、消防業務について考える貴重な経験ができました。他にも言葉では伝えられないことを伝える出来事は多いと思いますが、苦手だった音楽を通して私が学んだことです。

著者:鈴木 貴久(すずき たかひさ)

所属:豊橋市消防本部

出身地:愛知県豊橋市

消防士拝命:平成13年

趣味:登山、吹奏楽、ダイビング


主張
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