健康教室2026/02/10 健康教室2026年03月号 p52-5
応急処置ムービー
窒息
応急処置ムービ
発熱
はじめに
今回は発熱です。感染して発熱するのが一般的ですが、甲状腺ホルモンの分泌異常や自律神経の活動、精神的負荷が原因で発熱することがあります。学校では一律に○○℃なら保護者連絡→帰宅で良いと思いますが、繰り返し熱を出す児童生徒の場合は感染以外の原因を探る必要があります。
動画

001
救急車を呼ぶ例です。
(1)意識障害

002
(2)痙攣

003
病院を受診させる例です
(1)発熱+強い頭痛

004
(2)発熱+嘔吐・下痢

005
(3)発熱+体動で症状悪化

006
感染が疑われる場合には、患児周囲の消毒が必要です。
インフルエンザならアルコール類

007
ノロウイルスなら次亜塩素酸ナトリウムが第一選択です

008
発熱して首を痛がるのは髄膜炎の可能性があります。髄膜炎と聞くと重大な疾患に思われますが、インフルエンザでも合併するありふれた疾患です。一方脳炎は意識障害や意識変容を伴う重篤な疾患です。脳炎は後遺症を残る可能性があるため、救急車を含めた迅速な対処が必要です。
解説
発熱は生体にとって有益な反応なのは多くの人が分かってはいるのですが、私を含め、自分や周りの人が熱を出すと解熱剤に頼ってしまいます。理屈より感情が勝る世界です。
1.発熱は有益
トカゲを使った有名な実験を2つ紹介します。いずれも今から40年以上の実験です。トカゲは変温動物ですので周りの温度と体温がほぼ同じになります。食中毒の原因となるある菌を死滅処理したもの(死菌)をトカゲに注射するとトカゲは具合が悪くなります。
(1)体温を上げると生き延びる1)(009)


注射後、トカゲを34度から42度までの環境で飼育し、生存率を見ました。その結果、42度に置いたトカゲが最も生き残りました。発熱が生存に有用であることを示しています。
(2)自分で暑い場所に移る2)(010)

飼育槽を白熱電球で照らすことで、地表の温度を連続的に変えることができます。注射されたトカゲは、注射した当日はいつもいるところより2.7℃高いところに移動し、翌日には4.2℃高いところへ移動しました。発熱は自らの意思(ヒトの場合は自らの仕組み)で起こしていることを示しています。
2.ガイドラインはまちまち
あちこちの国・機関から小児診療ガイドラインが出ていますが、発熱については中身はまちまちで、エビデンスに反する勧告が行われているとされています。
(1)いつ解熱剤を与えるか(011)

「症状を見て」が49%で、「体温で決める」が33%、「体調と体温を合わせて判断」が18%です。体温については「何度でも良い」から「40.5℃」まで大きな開きがあります。
体温については出された数値に根拠はないと論文では述べています3)。
(2)解熱剤(012)

アセトアミノフェン(カロナール(R))を勧めるのが69%で最多で、ついでイブプロフェン(イブ(R)ブルフェン(R))53%、アセチルサリチル酸(バファリン(R))16%の順となっていますが、イブプロフェンとアセチルサリチル酸は禁忌とするガイドラインもあります3)。
臨床研究ではアセトアミノフェンはイブプロフェンより解熱に有効であり、中毒を起こしやすいことが分かっています。
(3)環境は相反する勧告が多数
暖房/冷房、換気をする/しない、服を脱がせる/毛布で包む、安静にする/適度に活動させる、ぬるま湯で体を拭く/拭かない、湿布を使う/使わない、についてはガイドラインごとに全く異なっています3)。
養護の先生が経験した症例
事例1
「具合いが悪いから熱を計りたい」と言って来室。1度目37.4℃。生徒は「脇の下に熱がこもっている。服を脱いでもう一度計りたい」と訴えます。2度目37.0℃。廊下に出て涼しくしてからもう一度計りたいと訴え、3度目36.9℃。検温するときは運動後や脇の下の環境を考える必要があるのだと知りました。
事例2
検温結果36.8℃。平熱35.8なので発熱→早退したいと訴えます。来室が多くいつも体調不良を訴えるため早退させずに継続させたところ、次の日学校を欠席しました。平熱から上がっていればそれは発熱とみなすことの再認識となりました。
事例3
検温39℃。咳あり。インフルエンザだと思い早退させたところ,マイコプラズマでした。もはや,コロナもインフルもマイコも判断はつかない類似した症状の疾病であるると認識しました。
事例4
保健室で検温すると微熱があるが,自宅に戻ると37℃以下。自律神経のバランスにより検温に差がでることを学びました。
事例5
39℃の高熱のため保護者の迎えを待っていたが4時間たっても迎えに来ません。その間にも熱があがり苦しそうな身体症状が見受けられました。振り返ると、急変の可能性もあるなか,保健室では何ができるのだろう?,病院に連れていくべきだったのか?とも悩みます (アイスノン・おでこ冷やす・ポカリスウェット補給の他にできること)。
事例6
2歳男児。息子の話です。
1日目夕方。保育園から連絡があり、37.7℃とのこと。元気はあったので、家庭で経過観察。2日目朝。変な咳と目やにがあり、熱は38.6℃。小児科を受診し、風邪と言われ、解熱剤と咳関連のお薬を処方されました。15時頃39℃まで上がり、坐薬を使用。午前中は遊んでいましたが、午後は一点を見つめて横になるか、寝入ってしまいます。18時過ぎ、抱っこしていたところ身体がガクガクと痙攣し始めて、白目をきました。体温40℃。呼びかけても反応なく、初めての痙攣のため救急車を呼びました。特に診断はなく、風邪と言われました。3日目一度37.2に下がるも、11時には再び38℃を超えました。座薬を使用するも、夕方には39℃を超え。ぐったりとして、うなり声をあげながら眠りました。4日目夜中は37℃だったが、8時半には39℃。座薬を使用し、再び小児科へ。血液検査とレントゲンをしたところヒトメタニューモ陽性に加えて肺炎になっており、そのまま入院となりました。
熱性痙攣の対応はこれで良かったのだろうかということと、もっと早くヒトメタニューモと肺炎を見つけられなかったのかな、、、と今でも思います。
事例7
高等支援学校3年生女子
保健室によく相談で来室する生徒。熱を測りたいと申し出があったため、検温すると37.5℃。発熱しているため、保護者の迎えで帰宅しました。後日、また検温すると37.6℃。発熱しやすい体質なのかと思いつつ、保健室のルールにもある帰宅基準の37.5度も超え、感染症の可能性もあるため、保護者の迎えで帰宅。その後も何度が保健室に来室し、検温する度に37.5℃を超えています。あまりにも発熱が多いため、担任と保護者と相談し、37.5℃を超えても身体の不調がない限り帰宅をさせないこととしました。しかし、養護教諭として感染症だったら、、、という不安を拭えないでいます。
文献
1)Science 1975 Apr 11; 188(4184):166-8
2)Am J Physiol 1974 jul;231(1):198-203
3)PLoS One 2021 Jul 17;16(6):e0245815


コメント