100417還暦のロックスター

 
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救急隊員日誌

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100417還暦のロックスター

作)山いるか



子供の頃、男の子だったら一度はエレキギターに興味を持っただろう。不肖私、山いるかもその中の一人だ。中学校に入るとエレキギターへの憧れは頂点に達したが、我が家は決して裕福な家庭じゃなかったし、月数百円の小遣いで買える代物でもないし、「YOUNG GUITAR」を眺めて箒をギター代わりに演奏するのが放課後の日課だった。

そんな学校の帰り道に友人宅へ寄ると、必ず流れてくるのは「チャイナタウン」という曲だった。友人は幼い頃に厚木に住んでいたらしく、曲を聴くたびに神奈川の自慢話を聞かされたが、そんな話も覚えていないほど甘く切ない、時にはワイルド極まりない歌声は山いるかの心を捉えて離さなかった。

ほどなくすると、友人は決して新しくないLPを自慢げに見せてくれた。それは伝説のバンドCAROLのLPだった。「チャイナタウン」とは違うギターから始まる強烈なメロディー、腹の底に響くベース音、ストレートなロックンロール、もう興奮は止まらない。四六時中とはあの状態を言うのだと今でも思うほど、録音してもらったカセットを擦り切れるほど聴いた。

ますますギターは欲しいけど兄弟の手前、親には絶対頼めない。友人は安いセットギターを購入して「バンドをやる」と臨戦態勢だ。まずい、このままではベース担当になってしまう…CAROLだからそれでもいいんだけど…日々イライラ焦っていると、母親がどこからか夏休みにライブハウスのバイトを見つけてきてくれた。これには嬉し泣きした記憶があり、今でも思い出すと目頭が熱くなる。「バイト代はいいですから、使っていないギターとアンプを下さい!」世間知らずとは恐ろしい、初対面の日にマスターに思い切って相談してみると「じゃあ、このギターは古いから昼飯も付けてやる」と粋な返事が返ってきた。

この頃から音楽好きに悪い人はいないという、現在の思考回路が出来上がったと言っても過言ではないだろう。

夏休みが終わり、手に入れたのはボディーがアッシュのストラトキャスターというギターにヤマハのギターアンプ。アッシュは中学生の山いるかにとって少々物足りないカラーリングだったが、26年後の今となってはその渋さに惚れ直し愛用し続けている。

手に入れたってだけで弾けた気分になるから楽器は不思議だ。翌日の給食時間までには自分たちが開催するコンサートのレパートリー(今ではライブのセットリストと呼ぶ)が決まっていた。

ちょっと弾けるようになると、今度はプロ気取り。言葉尻に「ィヨロシク」、教科書は「成り上がり」、眩しくもないのにサングラス、校則スレスレの長髪に父親のポマード、クリームソーダの長財布、どれもこれも今思うと懐かしさ半分、恥ずかしさ半分。

別にプロを目指したわけでもない、カッコつけようと思っていたわけでもない、ただ、あのロックスターに憧れ、ギターの魅力に取り憑かれただけだが、嬉しいときも悲しいときも、辛いときも苦しいときも、支えてくれたのはあのロックスターとギターだった。

そんな中学生は、いつの間にか40歳のおじさんになってしまった。いまだにあの頃のギターを手入れしている山いるかを見て母親は、「いい歳をして子供もいるのに…」と苦笑する。そう今でも山いるかを勇気づけてくれるのは、あのロックスターの歌声とギターなのだ。

今年還暦を迎えた永遠のロックスターが言った「60歳でバリバリロックンロールもいいじゃない?」。その一言が、少々疲労を感じてセミナー関連に消極的だった山いるかに喝を入れてくれた。「40歳でバリバリ仕事するの、当たり前じゃない!」ありがとうロックンロール。



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10.4.17/12:51 PM

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