060211児島広勝/國分哲也/紙谷知行:挿管救命士

 
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主張

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060211児島広勝/國分哲也/紙谷知行:挿管救命士

紙谷知行(東川)國分哲也(東川)児島広勝(旭川)

旭川医科大学基礎臨床棟4階カンファレンスルーム

2006-2-10 fri 12:28

児島広勝(こじま ひろかつ)

旭川市消防本部南消防署救急第2担当

生年月日:昭和39年7月4日
消防士拝命:昭和58年4月1日

趣味:映画鑑賞、XCスキー、トライアスロン、道北プレホス事務局?

國分哲也(こくぶん てつや)

大雪消防組合東川支署救急係主査

生年月日:昭和49年3月21日
消防士拝命:平成4年4月1日

趣味:飲酒(最近は発泡酒しか飲んでいない。第三のビールには行かないこだわりがある)

紙谷知行(かみや ともゆき)

大雪消防組合東川支署

生年月日:昭和50年3月17日
消防士拝命:平成5年4月1日

趣味:サイクリング、映画、バレーボール
好きな芸能人:中越典子

児島:平成16年の4月の頭から北海道消防学校の挿管課程に2週間位って、それが終わってゴールデンウイーク明けから旭川日赤で30症例。結果は55日間、8週間かかった。旭川で今でも最長なんだ。

中身は、特段変わったことないな。挿管救命士の認証が降りたのが7月9日。それから運用。

國分:自分は児島さんと同じ平成16年4月の消防学校挿管認定講習を受けまして、その年は予算がなくて1年待って、平成17年の6月から旭川医大で実習に入りました。

32日間、7月の中くらいで終了して、8月22日から挿管の運用を開始しています。内容は、同じくそう変わったものはないです。

紙谷:平成17年の4月に挿管講習を含めた救命士国家試験に合格、4月25日に認定されて、平成17年5月から就業前実習に入って旭川医大、厚生、日赤、市立病院で実習し、6月から救命士として運用を開始しています。

今回は、予定がなかったんですけど、大雪組合で、講習を受けずに実習できるのは自分しかいなかったので、旭川医大の実習の空いている今なら入れるということで入れてもらって、この1月10日から2月8日までの25日間で30症例を終了しました。

児島:大雪消防組合では平成16年の後期から養成だろ

紙谷:そうですね、札幌市の救命士養成だったのですけど、平成16年10月からは救命士養成のカリキュラムに最初から挿管養成課程のカリキュラムも入っているんです。

児島:さっきの55日間の話したら、苦労の話もいっぱいあるよ

國分:児島さん、長かったから

紙谷:人付き合いがメインテーマだったんでしょ

児島:旭川の第一号だというのが大きかった。旭川市消防本部も旭川日赤も初めてのだったので、手探りだというのが正直なところで。今考えたら、うちの西山さん、救命士の第一号だったんだけど、第一号というのは何でも大変なんだなというのを思い知らされたよ。

実習中については、特段話すこともないしやらかしたこともない。術前に患者さんの同意を得るのに苦労したということ、それに尽きるよ。

國分:自分は旭川医大の第一号で、児島さんの話を聞いていたので、どんなんだろうと正直不安だったのですが、医大が研修慣れしていて、研修医の先生がいっぱいいるからだと思うんですけど、教えかたとか、丁寧な教えかたで、挿管実習自体では全く文句のつけようがないです。

先生方には初めての挿管実習で戸惑いはあったのでしょうけど、先生方の協力で患者さんの協力も9割以上頂けたようで、同意の苦労もありませんでした。

敢えて言うなら、実習中にうまくいかないことが続いたことがあって、この時は「この先どうなるんだろうか」と焦りましたけど、気管内挿管と言うのは奥が深いんだなというのが感想です。

紙谷:僕はもう前回の人たちの跡を辿るだけという感じでいたので、先生方も慣れていて、とてもスムーズに受け入れて下さって、言うなれば挿管だけしにきたという感じでやりやすかったです。同意も先生方のご尽力でほとんど取っていただいたようです。

僕としてみれば、同意をもらったので絶対スムーズに成功してやるぞと毎日意気込んでいったのですが、患者さんの解剖学的な差があるんですよ。所属では人形で完璧に練習していって、完璧だと思っていたのですが、3例目に喉頭展開が難しい方がいて、その後はうまくいくか不安になりました。

人形と人とは違うんですよ。喉頭展開が難しかったり、チューブを入れる時に声門が狭い人とか、そんな時にはぐっと押したくなるんですけど、喉頭展開の手技が間違っていないか、チューブの選択が間違っていないか、患者の不利益になりはしないかと言う前提があるので、成功の数を誇るより、やめる勇気、撤退する勇気が重要だなと思いました。Do no harm!です。

國分:日勤で消防署に行った時に上に何例終わったとか報告するのですけど、いつも「早いね」と言われました。児島さんの話を聞いていたからでしょうね

児島:日赤も手術数は多いんだけど、リスクのある人を除外していったらこういう結果になったんだ。対象は婦人科とか整形、耳鼻科だった。口を開けてもらって、少しでも歯がぐらぐらするようなら除外、という感じだった。

國分:旭川医大のほうは、救急部の3人の先生が同席してくれて同意を取ってくれました。リスクに関しては当然考慮していましたけど、それより実際の挿管の段階になって、歯がぐらぐらしていたり喉頭展開が難しい患者さんに対しては自分の判断で挿管をやめるように指導してくれました。成功数を誇るより、引き返す判断が重要なんです。成功例より失敗例のほうが重要だと教えられました。

紙谷:大学の設備は素晴らしかったですよ。何でもある。特にすごかったのがビデオ喉頭鏡。

児島:日赤にはなかったよ

紙谷:ビデオ喉頭鏡には200万円のと400万円のがあって、安いほうだとブレードに高さがあって、口の開きづらい人だと入らないんですよ。それで高い喉頭鏡ばかり探して使ってました。

國分:自分の時には二人で実習していたので、使ったのは半分くらいかな。10回くらい。

紙谷:あれって、モニターがついていて指導してくれる先生も見えるんですけど、ビデオで見えていても自分は見えないことがあるんです。「ほら、見えているのになんでいれないの」とか言われて。

國分:逆に、こっちはちゃんと見えているのにモニターでは見えないことがあるんだよね。「ちゃんと展開しろ」と怒られたりしました。

児島:日赤では自分の時には指導の先生が一人決まっていて、すっと付きっきりだったんだけど、今は先生は複数指導に当たってくれるようで、その分研修は早く進むようだよ。

自分の時には札幌の話を聞いていて、札幌でも1ヶ月半かかったので、自分の時にも早くてそれくらいかなって思ってた。署のほうでは2ヶ月とか、3ヶ月とかの時間を見ていたらしい。

國分:でもこれからの挿管実習って、うちの署ではしばらく難しいようですよ。消防学校のほうで、挿管講習の2週間をなかなか受け入れてくれなくなったので。

児島:自分の時には自分が第一期で、希望者はまあ、だれでも、挿管講習を受けれたんだよね。國分も同期だし。ところが挿管講習が終わっても病院実習はそんなに量産できる訳もなく、講習修了者がいっぱい余ってしまったので、それからは実習の予定がある人を優先して挿管講習を受けさせるようになった。講習は教室さえあれば数こなせるけど、実習は時間もお金もかかるからね、そうそうは。

國分:講習の話でいけば、あと問題なのは、今の技術をこれからどう維持していくかです。挿管の再教育は今のところないですし、年に一回程度じゃ維持は難しい。喉頭展開は標準過程でもできますけど、挿管は別ですし。

紙谷:オホーツクMCでは6例ごとに再教育するとかきいたけど。

児島;国とか地域MC、ここなら道北MCでどうするかだよね

國分:再教育のシステムは必要でしょう。

児島:でも難しいよね。お金もかかるし。

紙谷:挿管の実施率と救命率の向上って、near equal にはなりませんよね。

児島;ならないよ

國分:気管挿管しかできない、って言う場面はほとんどないですからね。

児島:これが、CPAなら何でも挿管していいよというのだったら救命率向上に効果はあるのだろうけど、かなりきついよ。プロトコールに沿って実施しないと事後検証に引っかかるしね。

國分:自分は去年の8月から今までの7ヶ月でわずか1件だけですよ。外傷で口腔内に出血がひどくて、換気不能だった症例だけ。

児島:自分は1年半で6例かな。異物が多いね。換気抵抗が大きくて他の器具ではダメで挿管になった。挿管できる条件の最初が異物でしょ、
(1)異物
(2)他の器具で換気不能
(3)従来の器具では換気困難
(4)指導医が必要と認めた症例、だよね。

國分:東川は温泉がいっぱいあって、それで酔っぱらって入浴して溺れる人が結構いるんですよ。天人峡とかキトウシ、旭岳温泉とか。入浴中のCPAは年間3ー4例はあります。

児島:自分も1例は温泉の溺水だった。プロトコールの(2)になるね。

國分:今自分は救急係にいて事後検証の仕事もやっているんですけど、温泉のCPAの話を聞くと、換気には皆かなり苦労しています。どう考えても有効な換気はできてないなという症例もあります。地域柄、挿管の適応は他の同じ規模の消防に比べては頻度は多いと思います。

ですけどね、挿管ができるようになったからといったって、何も変わらないですよ。適応が限られるし。

紙谷:適応ですよね

児島:あくまで適応通りね。

紙谷:そう、適応があれば。今回資格を取ったからといったって、これで挿管できる、どうしてもやってやる、っていうのはないですね。適応があればですね。あればしたいなとは思いますけど。

現場で何回か温泉CPAとかあって、CPAやると、心マでどんどん口から水が出てくるんです。吐物と一緒に。胃の吐物が肺に入って肺炎になるし、第一換気できない。誤嚥するので気管挿管しかない。そういう時には挿管する。言うなれば最後に残された砦ですよね。

児島:プロトコールの縛りがきつすぎるんで、挿管は第一選択にはなり得ないよな。通常は他の器具の使用が優先されてしまうから。まあ最後の手技…なのかな

國分:特異なCPAでなければ、他のチューブで大丈夫ですものね。気管チューブでなければダメだ、苦労する、ということはないですから。

児島:そう。自分も旭川の一号挿管救命士だからといったって、挿管については抱負というか、目標とかはないんだよ。厳密にプロトコールを守るのが大切なんだ。

こんなに縛りが多いのは、秋田や山形の事件があって、それでひどく窮屈になった。これからは自分たちが活動していく上で、絶対自分で自分の首を絞めないようにしないと。挿管は厳密な適応のもとだけに行わないとならない。

日本はつまずいてしまったんだよ。これがアメリカのように自然に「挿管が大切だ」という話が出てくれば、皆の認識も今と違って、もしかしたら気管挿管が何の気道確保でも第一選択になったのかもしれない。

紙谷:今回挿管実習を終えて挿管救命士という名前にはなりますけど、特別なことは何もありません。

旭川医大には挿管を勉強しにきたのですけど、この実習で学んだことの一つが、マスク換気ができれば、時間がかかって危険な挿管は必要ない、ということです。基本的な手技が一番大切なんですよね。


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