120106年齢別の胸骨圧迫

 
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120106年齢別の胸骨圧迫

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年齢別の胸骨圧迫

今回も胸骨圧迫についてお送りする。今回は年齢に焦点を当てる。

深く押した方が助かる

 胸骨圧迫の深さはガイドライン2005での4-5cmから5cm以上になった。これは深く押せば押すほど転帰がいいという結果に基づく。この結果を補強する論文1)が出ているので紹介する。

 救急外来で胸骨圧迫を受けた1029名に対し、胸骨圧迫の深さを経時的に測定した。それに各患者での自脈の回復、1日後生存、生存退院を合わせて圧迫の深さとの関係を検討した。患者の平均年齢は68歳、男性が62%、バイスタンダーCPRを受けた率は37%、心電図確認時に心室細動もしくは心室頻拍であった率は24%であった。転帰については自脈の回復26%、1日後生存18%、生存退院5%であった。胸骨圧迫については平均の速さは毎分106回、加圧時間が65%で除圧時間が35%であり、押す深さは38mm未満に53%が、50mm未満に92%が含まれる。深く押せば押すほど押す回数は有意に少なくなった。また押す深さと転帰には明確な相関が認められた。

 やはり押せば押すほど助かるらしい。押す回数を犠牲にしても深さを稼ぐ方がいいようだ。

新生児の胸骨圧迫は親指で

 次は新生児。胸骨圧迫を行う手技は2つある。一つは左手の前腕に児を載せて右手の人差し指と中指で心臓を押す「2指法」、もう1つは手のひらで児の胸郭を包み込んで両方の親指で押す「親指法」である。この二つの手技のどちらが正しい位置を押せるか比較した2)。この論文で言う正しい位置とは左右の乳頭を結んだ線と剣状突起の中間を言う。39名の新生児に対して32人の医療関係者が合計1248回の胸骨圧迫を行った。胸骨圧迫を行う人にはどちらの方法で押すかは指定しなかった。正しい位置を押していたのは2指法では6.7%しかなかったのに対して親指法では77%であった。また二つの方法の選択については、満期産新生児では2指法と親指法の割合は1:9であったのに対し早期産新生児では1:60とほとんどが親指法で胸骨圧迫されていた。

 以前のガイドライン2000では2指法が勧められていたように記憶している。だがその当時小児科医に聞くと2指法は力が入らないし疲れるし不安定だしと言って親指法ばかり行っていて、2指法は親指法が使えないときだけ行っているとのことであった。乳児以上になって手のひらで胸郭が包めないようになれば2指法が使われるようになる。

未成年者への胸骨圧迫の深さ

 小児の胸骨圧迫は5cmもしくは胸の厚さの1/3となっている。実際に心肺停止の未成年者で胸骨圧迫を比べた報告がある。

 患者は35名。低年齢群は16名、平均年齢12歳、胸郭の厚さは平均で165mm。高年齢群は19名、平均年齢18歳、胸郭の厚さ197mmである。これだけ年齢と体格が違っていても平均の胸骨圧迫の深さは低年齢群で36mm、高年齢群で37mmと同じであった。つまり高年齢群では胸郭の厚さに対して押す深さの割合が減少していることになる。この原因は胸郭の硬さによるもので、低年齢群が31kgで押しているのに対して高年齢群は34kg必要であった。

 平均年齢18歳と言えば高校生から大学生に相当する。ここまで大きくなれば胸骨圧迫にはかなりの力が必要になる。

シナリオ訓練は効果がある?

 最後は救命講習の話。以前のこの連載で、模擬患者を使ったシナリオ訓練の効果は不明と報告した。今回は高齢者を対象にシナリオ訓練を行った報告が出ている。50歳から75歳までの64人に対して10分間の蘇生テストを行った。シナリオ訓練は33名。これは被験者に予告なしに蘇生を始めてもらうもので、被験者は雑音の多いアパートの一室に一人で隔離される。通常訓練は31名。こちらは他の受講者もいる教室で指導者の見守る中で蘇生をしてもらうものである。被験者は119番通報をし、胸骨圧迫を行い、人工呼吸も行う。測定項目は胸骨圧迫・人工呼吸の質に加えて被験者の心拍数と訓練後の感想である。

 蘇生の質はシナリオ訓練・通常訓練とも差はなかった。胸骨圧迫の深さは43mmで同じ、押す速さはシナリオ訓練が毎分97回、通常訓練が93回で有意差なし。同様に呼吸回数は毎分2.4回と2.8回、手を患者の胸から離している時間は273秒と270秒。自己申告では疲労度も差がなかった。心拍数の上昇程度はシナリオ訓練が73%、通常訓練が76%であった。結論は高齢者であっても10分間のシナリオ訓練は受容できること、人工呼吸の質と手を離している時間は両群とも不満足であったとしている。

 この論文の筆者はシナリオ訓練はacceptable(受容できる)としている。確かに心拍数の上昇程度は受容できるだろう。だがacceptableには「満足できる」というニュアンスも含まれている。だから報告したのだろうが、場所や人員などの手間暇かけてシナリオ訓練する意味はこの論文からは読み取れない。通常の皆で順番に蘇生訓練をする、もしくはビデオを見ながらインストラクターの助けを借りて訓練するので良いと私は思う。

文献
1)Stiell IG: Crit Care Med 2011 Epub
2)Saini SS: J Perinatol 2011Epub
3)Niles DE: Resusucitation 2011 Epub
4)Neset A: Acta Anaesthesiol Scand 2012 Epub


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12.2.17/11:01 PM

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