これで上司も市民も納得! 基礎からの統計教室6_説得力のあるデータの見せ方

 
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救急の周辺

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これで上司も市民も納得! 基礎からの統計教室

第6回

説得力のあるデータの見せ方

例題

あなたは救急隊員の学会で発表することになりました。消防内でのチェックはOKでしたが、学会発表を指導してもらっている病院の先生に見せたところ、いくつもの指摘を受けました。先生は「消防は人に理解してもらおうという意識がない」とぶつぶつ言いながらスライド原稿に赤ペンを入れています。

あなたが先生ならどこに気を付けて改善しますか。

解説

消防内部のチェックと医者が行うチェックは見ているところが違います。消防内のチェックは外部に出していいデータかどうかだけをチェックしているように感じます。医者は短時間で自分の主張を通すようなスライド構成を心がけています。

消防の発表は報告書をそのままスライドにコピーした程度の、レベルの低いものがほとんどです。聞く人に明快に考えを伝えようという熱意が感じられません。せっかく与えられたチャンスですから、会場の全員に理解してもらうように努力しましょう。

1.見せるには工夫が必要

今まで消防が行ったたくさんの発表を見てきました。私が消防と関わり出した頃よりは全体のレベルは著しく向上しましたが、それでも半分が出動報告書丸写し、という発表です。発表者は自分のことですので理解できるのでしょうが、発表者以外では理解するのに時間がかかります。

ほぼ全員が書いて来るのがこの表1です。これは手抜きそのものです。これを見て、どこで時間がかかったのかすぐ分かる人はいません。よく見ると現場出発から病院到着まで34分かかっていますので、これが消防の言いたいことだろうとは想像がつきますが、見ている人が考える必要があります。

これを図1のように変更すれば、見ている人は全員「なんで病院到着までこんなに時間がかかるんだ?」とすぐ理解してくれます。もしこれが夜中とか変な時間だったので大変だったと主張したいのなら、最初にだけ時刻を書き込みます。

2.表はグラフにする

全ての表はグラフに置き換えることができます。グラフに置き換えることで誰でも理解ができるようになりますし、前回お伝えした強調も可能になります。

表2は大阪市での心肺停止患者数です。このまま表示しても誰も見てくれません。

図2のように棒グラフにすると、患者数は一旦減ってまた増えたことが簡単に分かります。時間経過で追えるデータは棒グラフでも折れ線グラフでも構いません。

3.何を強調したいか考える

次に何を強調したいか考えてグラフに手を入れます。

・主張1:患者数は変わらない
図2をぱっと見ると、真ん中がちょっとだけ凹んで両脇が盛り上がっています。凹みが小さいので、患者数は年が変わってもそれほど変わらないように見えます。

・主張2:患者数は年ごとに大きく異なる
同じデータでもY軸の原点を平成21年に合わせると図3のようになります。いかにも異なっているように見えます。

・主張3:患者数はどんどん増えている
図4は主張2で用いたグラフを切り取っただけですが、いかにも患者数が増えているように見えます。
全く嘘をつかずに、これだけ印象を操作できます。棒の上に数字が書いてあるので、一生懸命見れば大した数は変わっていないのは分かるのですが、少なくとも学会発表の場でそこまで真剣に数字を追う参加者はいません。

4.円グラフは制約が多い

棒グラフ・折れ線グラフと並んで良く用いられるものに円グラフがあります。円グラフはある一つの事象を構成する内容の割合を示すときに用いられます。表3のうち、平成27年の職員構成を示したのが図5です。

円グラフの欠点は、事象が2つ以上あった場合の比較がしづらいことです。2個まではまだ理解可能ですが、3個以上になると手に負えません。その場合は棒グラフや折れ線グラフを使います。

この場合も、総人数の増加を示したいのなら図6のような単純な積み上げグラフを用い、

女性の割合が増えていることを示したいのなら図7のような100%に直したグラフを用います。

解答

全ての数字をグラフに置き換えることを考えるべきです。数字を見てすぐ理解できる人はいません。
文字スライドの作り方や発表の仕方も鉄則がありますので自分で勉強して下さい。

まとめ
1)全てのデータはグラフに置き換えることができないか考える
2)グラフになれば自分の主張をもっと印象づけることができる。


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15.11.6/12:13 PM

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