虚脱した末梢静脈に対する末梢静脈路確保のための工夫

 
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HTMLにまとめて下さいました粥川正彦氏に感謝いたします


目次

私たちの工夫

虚脱した末梢静脈に対する末梢静脈路確保のための工夫

北海道・旭川市消防本部南消防署豊岡出張所:著者連絡先:〒078−8234 北海道旭川市豊岡4条3丁目
   真岩敦・山田博司
旭川厚生病院麻酔料
   玉川進

目的

 静脈路確保の仕方は本誌でも紹介されている1)が、救急救命士の特定行為の中で、末梢静脈路確保の実施率が低いことは国の統計2)からみて明らかである。その理由として、谷川らの救急救命士に対するアンケート調査3)では、静脈路確保の技術的困難性と時間的制約を挙げているが、筆者の経験からも心肺停止患者の末梢静脈は虚脱しているため、穿刺困難であることが最大の理由であると考えられる。

 このため、虚脱した末梢静脈をうっ血させて、末梢静脈路確保を容易にする方法を工夫した。

方法 はじめに、成人健常者の前腕部をエスマルヒ駆血帯で巻き上げ虚血状態にする。さらに、上腕部をターニケットで巻き加圧することにより血流を遮断した(図1)後、巻いていたエスマルヒ駆血帯を外した(図2)。

 この条件下で、静脈路うっ血のための方法として
1 上肢を下げる。
2 前腕部をエスマルヒ駆血帯で中枢側から末梢側に向かって巻く(図3)。
3 前腕部をエスマルヒ駆血帯で末梢側から中枢側に向かって巻く。
4 皮膚をアイスパックで冷やす。
5 皮膚を湯たんぼで暖める。

の5つを選び、結果として視認により確認することによって比較検討した。
1と5の方法ではうっ血は見られなかった。
2と3の方法ではうっ血は見られた。
4の方法では皮膚が蒼白となり静脈が青くなり、血管の識別はついたがうっ血は見られなかった。

考察 生体において末梢静脈を浮かび上がらせる方法の記述がある文献4)はあるが、心肺停止状態の患者に対する方法の記載は見当たらない。心肺停止状態の患者を用いて実験はできないため、健常者の上腕部を駆血することによって人為的に虚血状態を作り、前記の方法で試みた。

 その結果、エスマルヒ駆血帯で巻く方法は静脈のうっ血が見られたが、末梢側から巻く場合は、先に中枢側を駆血しておく必要があり処置に時間がかかる。皮膚をアイスパックで冷やした場合は、静脈の識別はついたがうっ血がない。上肢を下げ、皮膚を暖めた場合についてはうっ血もなく、視認もできないことが分かった。

 このことから、エスマルヒ駆血帯で前腕部を中枢側から末梢側に向かって巻く方法が最も効果的と考えられる。

 なお、エスマルヒ駆血帯の代用として救急車内にもある血圧計のマンシェット、吸引器のゴムチューブ、酸素マスクの延長チューブ(図4)を用いて同様の実験を試みたが、マンシェットの場合は効果が薄かった。このことは、ゴムチューブと酸素の延長チューブは血液を絞り上げる効果があるのに対して、マンシェットはその効果が薄いためと考えられた。

結論 血液を1カ所に集めることにより虚脱した静脈をうっ血させることは、今回の簡単な実験結果からは可能である。また、その方法としては、中枢側から末梢側に血液を絞り上げることが大切である。【文 献】
1)桂川勇次:静脈路確保の仕方.プレホスピタル・ケア1998;11(2):11−14.
2)自治省消防庁救急救助課:救急業務高度化の現況一平成8年中の救急業務活動を中心に.平成9年9月5日.
3)谷川攻一,重松昭生:救急救命士による心肺停止患者に対する救急救命特定3行為の有用性、問題点についての調査.日本医師会雑誌1998;119(10):1637−1642.
4)兵頭正義:麻酔科学 第1版.金芳堂,京都,1991,PP46−47.


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