これで上司も市民も納得! 基礎からの統計教室12_160306回りに目を向けよう

 
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これで上司も市民も納得! 基礎からの統計教室

最終回
回りに目を向けよう

例題

先輩の学会発表に自分も付いていくことになりました。そういった場は初めてなので、何を着ていけばいいかすら分かりません。それに、ただ付いていくだけなので余り楽しくないのではないかと思っています。
あなたが先輩ならこういう後輩にどうアドバイスしますか。

解説

消防職員は皆公務員で自治体から厚く守られています。そのため消防の枠から出なくても十分生活していけます。どこかに行けと言われると必ず「旅費は出るのか」と聞く。救急救命士の資格を持っているのに「勉強は嫌い」「通達が来たら考える」という公言して憚らない。そういう人はあなたの周囲にもたくさんいるでしょう。そのくせ自ら学術集会や雑誌に発表する人に対しては「暇なんだな」「そんなことより溜まっている仕事を仕上げろよ」と悪口を言います。

あなたはそんな人間になってはいけません。自分に投資しない人間は誰からも投資されません。

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この連載も最終回になりました。最初は統計の話を書く予定でしたが、まじめに統計の話を書いたのは2回くらいでしょうか。この連載は私の持ち込み企画で月刊消防編集室から内容の指導を受けたことはありません。月刊消防の懐の深さに感謝しています。

私が消防職員と話していていつも不思議に思うのが、「上から降ってくるものだけやっていればいい」と思っている人が結構な割合でいることです。それがずっと事務をやっている人ならともかく、どんどん業務が拡大している救急救命士、それもまだ30歳にもなっていない人がそのような態度で仕事をしていることに驚くのです。縦社会で50歳以降の署内政治に疲れた人や55歳過ぎの先の見えた人が言うのなら理解できます。ですが、これからまだまだ活躍できる人たちからそんな言葉は聞きたくありません。外へ目を向ける重要性は月刊消防「Voice」でも多くの先輩たちが強調していることです。

今回は手軽に参加できる学術集会やセミナーなどを紹介します。なお、この記事は北海道の情報を元にしていますので、皆さんの勤務地ではそれぞれの情報にアクセスして下さい。

A.参加できる集会

1.学術集会

(1)地方会

日本救急医学会北海道支部としての学術集会が年2回開かれています。一つは医師や看護師と一緒に一つのフロアで発表する回(写真1)で、もう一つは救急隊員だけが集まって発表する回です。

写真1
地方会の座長席。右は医師、左は救急隊員

看護師と一緒の回は華やかですが、消防職員が出す演題や消防からの参加者はそれほど多くありませんので、消防職員は学術集会に間借りさせてもらっているような印象を受けます。それに対し、救急隊員だけの回は、発表者は特別講演を除いて消防職員だけです。会場も知り合いがたくさんいてあちこちで立ち話をする光景が見られます(写真2)。

写真2
地方会の合間にお茶を飲んでいるところ

地方会では、北海道においては抄録を出せば全て採択され発表の機会が与えられます。また会場もそれほど大きくはなく知り合いもたくさん参加していますので、初めて発表する場としてふさわしいものです。

(2)日本臨床救急医学会学術集会

日本救急医学会から分離した学会です。脳卒中病院前救護PSLSや意識障害病院前救護PCECのコースを主催している学会です。年に1回学術集会を開いています。

(3)消防本部主催の研究会

政令指定都市のような大きい消防では、独自に救急研究会を開いています。札幌市消防局では冬に6回程度の研究会を開いています。演題を出せるのは札幌市消防局の職員に限られますが、申し込めば誰でも聴講できます。回数が多いので、非番の日に当たることもあるでしょう。札幌市の研究会は若い人たちの研修を兼ねているとのことですので、同じ年代がどのような事項に関心を持って活動しているか知ることができます。

(4)救急隊員シンポジウム

年に1回開かれる救急隊員のお祭りです。参加費は無料、講師は全員名の知れた人たち(写真3)で、座長も助言者も全国の指導的な人たちが選ばれています。例えるなら芸能人のサマーフェストか東京ガールズコレクションのようです。

写真3
2015年12月の救急隊員シンポジウム開会式。山本保博先生

一般演題枠は140題程度で、そこに2倍以上の演題が応募されますので、当日発表に至るのはレベルの高い演題ばかりです(写真4)。ここで発表できるようになれば立派な業績になります。

写真4
一般演題発表の様子。明石消防の三品昌一さん

2.各種コース

古くからある外傷コースJPTEC(写真5)や心停止コースICLSに加えて、

写真5
JPTECの前身のPTCJコースの様子。一度私はJPTECで写真を撮って大騒ぎになった嫌な経験があるのでPTCJの写真を載せます。

PSLS(写真6)やPCECなど、今はたくさんのコースが頻繁に開かれています。現在最も熱いのは日本集団災害医学会が主催する「多数傷病者への対応標準かトレーニングコースMCLS」でしょうか。ホームページを見ると、毎週多くの場所で開かれています。

写真6
PSLSミニコース。北海道留萌市

これらのコースに参加するのはおカネがかかります。1万円程度のコースもありますし、数日間で3万円するコースもあります。コースの内容については受講体験者に聞くことが一番いいでしょう。聞いた上でコースが自分に必要だと思えば、進んで受けるべきです。1万円投資すれば1万円以上の見返りがありますし、3万円投資すれば3万円以上の見返りがあります。

3.自主勉強会

私が救急隊員と関わりを持つようになった20年以上前から自主勉強会は存在していました。JPTECが出始めた頃が自主勉強会ブームのピークだったような気がします。その後はJPTECやICLSの内容はどんどん消防の標準的な教育に組み込まれていき、またMedical controlという概念の元救急隊員が明確に医師の指導下に置かれるようになって、多くの自主勉強会は消滅してしまいました。現在活動している自主勉強会はMCの一部門として存在するのが多いようですが、中には全くMCと関係のない勉強会もあります。
自主勉強会なら少数が奇抜なアイディアのもと活動することができます(写真7)。

写真7
北海道釧路町で開かれた自主勉強会

自分たちが好きでやっている勉強会(写真8)ですから、あなたが参加すれば多くの刺激を受けるでしょう。

写真8
自主勉強会。プレゼンの仕方の勉強

B.学術集会で気をつけること

気をつけることはそれほどありません。携帯電話やスマホはマナーモードにするくらいでしょう。服装は背広ネクタイを着用していけば間違いありません。発表者以外はもう少しラフな服装でもいいですが、ジーパンにTシャツまで崩れないようにして下さい。

演題を聞く時は、質問を考えながら聞きましょう。どんな発表であっても突っ込みどころはあります。質問を考えることで演題への理解が深まります。会場で手を挙げて質問することはかなりハードルが高いでしょうから、発表後に演者を捕まえて質問します。演者も反応があったことで喜んでくれます。

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最後までお付き合い頂き有り難うございました。

消防職員にとって検定は重要項目ではありません。もっと重要なことは他にもたくさんあるでしょう。しかし検定を知りたいと思う人は何にでも興味を持ち前向きに行動できる人です。

消防の多くは小さな閉鎖的な職場です。転勤のない、拝命から定年まで同じメンツという消防もたくさんあるでしょう。そういう職場には、前向きに行動する人間を潰そうという人間が必ずいます。私もそういったひどい話はたくさん聞いています。潰そうとする人間は他人を批判することで自分の優越を確認するだけの無能な人間です。

あなたの努力を見ている人,評価している人は必ずいます。文句ばかり言う人・口ばかり言う人から離れて、前向きな人間と付き合いましょう。実績を挙げている人からその考え方を学びましょう。

自分の人生は自分で決められます。可能性は誰の足下にも転がっています。ただ足下の可能性に気づく人はごく僅かです。

回答

自分が先輩ならこうアドバイスします。
・仲間が発表しているのを見て刺激を受けるといい
・何だこんな演題、と思えるのが必ずある。次は自分が発表するつもりで参加すべき


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16.3.6/3:49 PM

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