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190111救急事例研究:走行中の胸骨圧迫はカーブの影響を受ける

近代消防2019年1月号

走行中の胸骨圧迫はカーブの影響を受ける

山口崇朝、田部井優

館林地区消防組合

著者連絡先

山口崇朝(ヤマグチタカトモ)

館林地区消防組合邑楽消防署消防第2係

所在地: 〒370-0603群馬県邑楽郡邑楽町中野2647-1

電話: 0276-88-5551

目的

JRC蘇生ガイドライン2015での胸骨圧迫は、部位は「胸骨下半分」、深さは「約5㎝の深さで6㎝を超えない」、速さは「1分間あたり100120回のテンポ」とされている。我々救急隊がこの基準を満たしているのか胸骨圧迫訓練評価システム(しんのすけくん)を用いて検証した結果は、近代消防2018年12月号で発表した。

JRC蘇生ガイドライン2015では「絶え間ない胸骨圧迫」の重要性が強調されている。では救急車走行中にはガイドラインに合致した胸骨圧迫はできているのだろうか。胸骨圧迫訓練評価システム(しんのすけくん)(図1)を用いて走行中の救急車内で胸骨圧迫を評価し、自動車走行が胸骨圧迫に与える影響を明らかにするのが本研究の目的である。

図1

しんのすけくん

圧迫する位置を点で示している

対象と方法

当消防本部救急隊員35名を対象とした。

事前に胸骨圧迫訓練評価システム(しんのすけくん)にてA評価となるよう訓練し、その後に1周約400mのコースを右周り、左周り各2周(約2分)(図2)しデータを計測、保管した。スターとゴール地点は走行後すぐにカーブとならない位置とした。

評価項目は「テンポ」「深さ」「圧迫位置」「リコイル」の4項目である。

図2

走行コース。1周約400m。1周約1分で2周する。速度は最高35km/h, 最低15km/hとする。1周のうち4回曲がる

結果

テンポを図3に示す。右回り、左回り共に100回を下回った者が1名いたのみで、他は全員ガイドラインにある100~120回の範囲内であり、胸骨圧迫のテンポは走行中であってもこの範囲から大きくはずれることはなかった。しかし、直進時に比べて右カーブ時は次の胸骨圧迫を実施するまで(リコイル時)の時間が若干長くなる傾向がみられた(図4)。

深さについては、2分間のうち4.5-6cmで押していた割合を図5に示す。右回りより左周りの方が平均値が高かった。カーブによって深さが変わることを図6に示す。右回り時は実施者側に遠心力がかかり1番浅いところで圧迫の深さが1.8センチしか圧迫出来ていない。これに対して左周りでは傷病者側に遠心力がかかり、1番深いところで圧迫の深さが7.1センチの圧迫となっている。

圧迫位置について、2分間のうち中央の位置で圧迫していた割合を図7に示す。両周りとも半数以上は90%を超えていたが、右回りより左回りの方が良い結果となった。

リコイルに関しては2名を除き全員が100%という結果となった(図8)。走行中における胸骨圧迫においてはリコイルに関しては影響はみられなかった。

身長と体重を加味した検証結果を表1に示す。右周りに関しては実施者側に遠心力がかかるが、身長・体重が高い方が安定しているため深さ、位置の正確さが高い傾向が見られた。左周りに関しては傷病者側に遠心力がかかりストレッチャーで自分の体勢を維持しやすいため、身長・体重差による明らかな傾向はみられなかった。

図3

テンポの結果

図4

右カーブ時は次の胸骨圧迫を実施するまで(リコイル時)の時間が若干長くなる傾向がみられた

図5

深さ。グラフでは%で切っているため右回り、左回りとも同じ度数分布となった

図6

深さはカーブの影響を受ける。横軸が時間、縦軸が圧迫深度

図7

圧迫位置の結果

図8

リコイルの結果

表1

身長と体重を加味した検証結果

考察

今回の研究で、走行中の胸骨圧迫はカーブの影響を受けることが明らかとなった。また右カーブと左カーブで胸骨圧迫の質が異なってくることも明らかとなった。

車内における胸骨圧迫の様子を図9に示す。右カーブすると実施者側に遠心力がかり、左カーブすると傷病者側(胸骨圧迫される側)に遠心力がかかる。右カーブでは後ろに遠心力がかかるため体を支えるものがなく体勢維持が困難であった。左回りでは自分の体をストレッチャーで支えることができ、安定した胸骨圧迫が可能である。

また、圧迫位置で中央の位置で押していた割合が50%未満の中には、0~3%と極端に低い者もいた。これは胸骨圧迫開始時の圧迫位置がずれたり、他にもカーブ時の遠心力により実施者の体が動くことにより圧迫位置がずれ、そのままで圧迫をしているためである。これにたいしては客観的な評価方法を取り入れた訓練を導入し、本人の技術を向上させる必要がある。

今回の検証は事前に走行コースを知らせ、実施者も減速による右左折もある程度認識していた。その中で良い結果を出そうと実施した結果が今回のデータとなった。実際の現場では走行ルートや右左折のポイントも分からないため、機関員の声掛け等、救急隊全員での連携が重要だと考える。

結論

1)走行中の胸骨圧迫はカーブの影響を受ける

2)実際の現場では走行ルートや右左折のポイントも分からないため、機関員の声掛け等、救急隊全員での連携が重要である。

筆者プロフィール

・名前 山口 崇朝(やまぐち たかとも)

・生年月日 昭和61年4月2日

・出身地 群馬県

・所属 館林地区消防組合 邑楽消防署

・消防士拝命 平成20年4月

・救命士合格 平成20年4月

・趣味 アウトドア

共同演者

・名前 田部井 優(たべい まさる)

・生年月日 昭和63年8月9日

・出身地 群馬県

・所属 館林地区消防組合 邑楽消防署

・消防士拝命 平成23年4月

・救命士合格 平成28年4月

・趣味 サイクリング、旅行

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