case2

 
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症例

症例2

提示:硲 智幸 幹事


1覚知時間 午前2時12分

  • 66歳女性
  • 蕁麻疹がでて、吐き気もあると家族からの通報(119番)

Q1 覚知時点で考える疾患

2出動時間 午前2時14分

  • 現場までの距離は11km(天候・雪、前夜からの吹雪のため道路状況は悪い)

3現場到着 午前2時26分

  • 傷病者の状態
    • 自宅1階居間の床上に左側臥位(普段着姿)でおり、側の洗面器内に少量の吐物(飯粒様)あり。
    • 意識清明、顔面やや蒼白で苦悶表情、全身に2mm大の発赤があり、四肢はあたたかい状態。
    • 脈拍43回/分(撓骨)、血圧88/61mmHg、SpO2は測定不能
    • 主訴は、全身のかゆみと腹痛(腹部全体がニヤニヤするとの表現)及びめまい、嘔気
  • 本人より聴取
    • 午前0時30分ころから発赤によるかゆみ及び腹痛、嘔気があった。
    • 嘔吐は救急隊到着まで3回(嘔吐量は少量)
    • 前日午後9時30分ころ、お茶漬けを食べた。
    • 今回のような症状は初めてとのこと。
    • 仰臥位で車内収容

Q2 現場で必要な観察

4現場出発 午前2時31分

  • 搬送中の状態
    • 搬送中は下肢挙上、意識清明、呼吸18回/分、体温36.3℃(腋下)、SpO2は測定不能
    • 病院到着前(2時43分)の血圧116/71mmHg
    • 主訴は変化無し(全身のかゆみ、腹痛、めまい、嘔気)

5病院到着 午前2時44分

Q3 医師に渡すべき情報

Q4 確定診断

Q5 薬剤は何を使うべきか

6反省

  • アレルギーの原因物(食品又は薬品)を特定する聴取をしていない。
  • 既往歴、特にアレルギーの既往歴の聴取をしていない。
  • 酸素投与を考慮すべきだった。(SpO2測定不能な状態であったにもかかわらず、呼吸状態が良かったため考えなかった)

Q6 他の反省点

Q7 指定発言

長谷川有貴子 管理栄養士


Q1 覚知時点で考える疾患

この情報からは蕁麻疹が最も考えられる。吐き気に関しては食物アレルギーか食中毒が考えやすい。いずれにせよこの情報だけでは重大な疾患とは考えづらい。

Q2 現場で必要な観察

提示症例で抜けているものは呼吸音の聴取である。

Q3 医師に渡すべき情報

血圧の変化が知りたい。あとは提示の情報でよい。

Q4 確定診断

食物アナフィラキシー

  • 食物アナフィラキシーは食べたものによって急激かつ全身性に強いアレルギー症状が生じる疾患である。
  • アナフィラキシーの原因は抗原に対するIgE/IgG4を介した免疫の過敏反応であり、通常抗原摂取から数分以内に起こる。抗原抗体反応を介さない反応はanaphylactoid reactionと呼ばれているが、症状は全く同じである。
  • アメリカでは人口10万人あたり30人の発症であり、イギリスの報告では救急外来受診の2300人に一人がアナフィラキシーであった。死亡率は病院収容10万人あたり15.4人である。
  • 日本で食物アナフィラキシーの原因として最も多いのは小麦であり、牛乳、卵と続く。西洋に多いピーナッツ類は日本では少ない。理論的にはいかなる物質もアナフィラキシーを起こしうる。
  • 呼吸器症状として喉頭浮腫・喘鳴があり、重症では窒息して死亡する。
  • 循環器症状として低血圧・頻脈、さらに進むと循環虚脱。これは血管透過性亢進によって血液成分が血管外に出てちょうど出血性ショックと同じ病態になることによる。
  • 消化器症状として嘔気・嘔吐・下痢。
  • 皮膚/粘膜症状として蕁麻疹、鼻炎。

Q5 薬剤は何を使うべきか

  • 体位
    • 患者が望む体位。低血圧には下肢挙上
  • 酸素
    • 高流量酸素投与
  • アドレナリン(エピネフリン)
    • 商品名ボスミン。筋注の場合には一回0.3~0.5mg。静注の場合には一回0.1~0.5mg。その後血圧を維持するため持続静注する。
  • 抗ヒスタミン剤
    • ジフェンヒドラミン(商品名レスタミン)など。
  • H2ブロッカー
    • シメチジン(商品名タガメット)
  • 輸液
    • 低血圧に対しては4Lの急速投与が必要になる場合がある。
  • 気道拡張剤
    • β作用を持つサルブタノール(商品名ベネトリン)吸入。吸入させる場合にはアドレナリンで血圧を上昇させてから使う。アミノフィリン(商品名ネオフィリン)点滴投与。
  • ステロイド
    • 重症例で使う。喘鳴のある患者とステロイド連用者に特に有効。ただし効果発現は4~6時間後である。

Q6 反省点

  • アレルギーの原因物(食品又は薬品)を特定する聴取をしていない。
  • 既往歴、特にアレルギーの既往歴の聴取をしていない。
  • 酸素投与を考慮すべきだった。(SpO2測定不能な状態であったにもかかわらず、呼吸状態が良かったため考えなかった)
  • 医師にはお茶漬け以外に鯖の飯寿司を食べたこと、過去に同じ経験をしてたことを話している。

Q7 指定発言

長谷川有貴子 管理栄養士

文献

松本知明、猪原淑子:食物アナフィラキシー-食べ物が命を脅かす-. 栄養日本 1998;41(12): 761-767

The American heart associationin collaboration with the international lianson committee in resuscitation: Guideline 2000 for cardiopulmonary resuscitation and emergency cardiovascular care. Circulation 2000; 102(8s): 241-243

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