case30:雪道の交通事故

 
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症例30:雪道の交通事故

講師:炭谷貴博(南宗谷消防組合中頓別支署)


警察署から消防に電話連絡があり、「乗用車対乗用車の交通事故で1名が挟まれ怪我をしているので、救急車をお願いします」との通報内容。

通報を受け、救急車、救助資機材を積載している消防車、指令車の3台で出動。

現場は、消防署から約20kmの距離で、圧雪アイスバーンの道路を走行していた車両A(1名乗車)が、左カーブを曲がったときにスリップし対向車線はみ出し、その時対向車線を走行していた車両B(3名乗車)と正面衝突し、両車輌が道路から逸脱し車両Bに乗車していた3名のうち運転席に乗っていた1名と、後部座席に乗っていた1名の2名が受傷。(図(1))

運転席に乗っていた30歳・男性後部座席に乗っていた34歳・女性意識レベル JCS I−1
呼吸 30回/分
脈拍 84回/分
血圧 110/62mmHg
SpO2 98%(酸素10リットル投与)
右大腿部に変形、腰から下に麻痺、骨盤触診で強い痛みあり
頸部・右大腿部・全身固定、酸素投与、保温処置
確定診断 右大腿骨骨折 骨盤骨折
意識レベル 清明
呼吸 24回/分
脈拍 78回/分
血圧 128/84mmHg
SpO2 99%(ルームエアー)
右上腕・首の痛みを訴え、右顔面に擦過傷、右上腕より出血
神経学的所見に異常なし、頸部固定、保温、止血処置
確定診断 右上腕打撲 顔面擦過傷

車両Aは、路外に逸脱していたが、道路と土手の高さがほぼ同じ高さであったため運転者は自力歩行可能、観察の結果異常を認めず、搬送を拒否した。

車両Bは路外に逸脱し約5メートル下の土手に運転側を下にして横転していた。傷病者が1名という通報であったが、実際は傷病者が2名であった。

車両Bは、後ろがハッチバックタイプの車両で、現場到着時リアのハッチバックが開いた状態であったため、後側から進入し座席を倒して傷病者を救出した。運転席に乗っていた30歳・男性は、骨盤触診で強い痛みがあり、骨盤骨折の疑いがあり、3次病院を選定選定すべきであるが約2時間かかるため、約20分かかる直近の地元を選定。30歳男性は処置後、3次病院へ転院搬送となった。

反省点

・傷病者数の把握不足

「傷病者が1名」とういう通報であったが、実際は傷病者が2名であった。幸い重症者1名、軽症者1名であったので、1台の救急車で2名搬送できた。乗用車対乗用車の交通事故との通報であったため最低2名の傷病者が発生していることを想定、また現場までの距離が約20kmあり現着までの時間がかかることを考慮し、覚知した段階で近隣の消防署に応援出動要請すべきである。

・搬送手段

直近3次医療機関まで救急車で約2時間かかるため、地元病院へ搬送し処置後、高次医療機関へ搬送しているのが現状。ヘリコプター搬送を考慮すべきである。

・資器材不足

バックボードを購入する前であったので、全身固定はスクープストレッチャー、頭部はシュレッダーの紙をビニール袋に入れて作ったイモビライザーで固定した。もう1名全身固定が必要な傷病が発生していた場合、固定するものが無かった。資機材不足を少しでも解消できるよう、整備を進める。

・統一した行動

事故発生時、外傷処置の標準化が一部の職員しか知らない状況であったため、活動がバラバラであった。現場活動の意思統一のためにも、外傷処置の標準化など現場活動の流れの訓練を行うべきであった。また、多数傷病者が発生した場合の対応(トリアージ、応援要請の判断等)を訓練に取り入れる。


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