100206泣こよっか、ひっ跳べ(第4回)救急資機材を知る

 
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泣こよっか、ひっ跳べ

救急の基礎を紐解く!? 初心者でもわかる救急のポイント

第4回

救急資機材を知る

Lecturer Profile

徳永和彦
(とくながかずひこ)

所属:南薩地区消防組合南さつま消防署

年齢:47歳

出身地:鹿児島県南さつま市加世田

消防士拝命::昭和55年

救急救命士資格取得:平成11年

趣味:疲労止め(だれやめ=晩酌のこと)家庭菜園、木工と山菜採り


「泣こよっか,ひっ跳べ」7月投稿:救急資機材を知る

はじめに

第3回では、救急活動現場で傷病者へのファーストコンタクトからのバイタルサイン測定のポイントを紹介し、継続して行う観察の重要性について述べました。今回は、救急現場活動中に使用する救急資機材の中から、使用頻度の多い、観察用資機材、呼吸及び循環管理用資機材の、必要な基礎知識と使用ポイントについて触れてみます。



救急資機材について

写真 1 救急資機材積載状況

救急現場活動中に救急隊員は、救急車に積載してある救急資機材の中から傷病者に応じた資機材を選定し活動を行っています。救急車内の限られたスペースの中に、傷病者のあらゆる状態に対応するために、観察用資機材、呼吸及び循環管理用資機材、創傷等保護・固定用資機材、搬送・保温用資機材、感染防護用資機材、その他応急処置用資機材などの、多数の資機材がそれぞれの用途に合わせて積載されています(写真1)。

写真 2 救急バック

現場へ携行する資機材は、用途別に収納ケース等に振り分けられており、観察用資機材の聴診器・血圧計・体温計・ペンライト・パルスオキシメータなどは救急バッグ(パラメデックケース、写真2)に、

写真 3 呼吸管理用バック

呼吸及び循環管理用資機材の携帯酸素ボンベ・BVM・酸素マスク・エアウエイなどは呼吸管理用バック(写真3)に、

写真 4 外傷現場での資機材選択

写真 5 内因性現場への資機材選択

創傷等保護・固定用資機材は外傷用バックに収納されています。傷病者の病態や現場状況により、携行する資機材を組み合わせて現場へ携行することになります(写真4,5)。

そのほかにも、現場活動後や定期的に資機材を消毒する消毒用資機材、救急隊員が技術向上に使用する救急訓練用資機材などを使用して救急業務が行われています。



救急資機材選定のポイント

救急資機材の選定は救急指令での、傷病の種別、発生場所、傷病者の状況から現場状況や傷病者の病態を予測して、現場に到着するまでの間に資機材の選定を行います。また、現場での活動方針を大まかに、打ち合わせておくと、救急現場に到着してからの活動がスムーズに行え、現場滞在時間が短縮されます。

夜間に漁港の防波堤から釣り客が転落して負傷しているとの通報で出場した時、事故現場へは救急車では侵入できずに、ヘッドライトの明かりを頼りに両手に資機材を抱え、防波堤を700メートル近く徒歩で向かわなくてなりませんでした。負傷した傷病者を担架に乗せて、救急車まで搬送しなくてはならず、幸い、救助工作車隊とポンプ車隊が同時に出場していたので、傷病者の搬送を手伝ってもらえましたが、救急隊3人では、傷病者と携行した資機材を一度に現場から搬送することはできませんでした。現場が救急車から離れている場合には、携行資機材を少なくして傷病者搬送を楽にしたいのですが、絞り込みすぎると、不足した資機材を取りに帰る事もあり、現場滞在時間を引き延ばすこととなりかねません。



救急資機材の知識と使用ポイント

写真 6 体温計・ペンライト・聴診器

1 体温計(写真6左)

水銀体温計(測定時間3-5分)、電子体温計(測定時間10秒-1分)があり、一般的に腋窩温で測定しています。測定時間の短い電子体温計が多く使用されています。また、耳式電子体温計もあり測定時間がさらに短く、小児や乳幼児には有効です。

正常体温は成人で36-36.9℃、小児36.5-37.5℃
高熱は成人で39℃以上、低体温は深部体温が35℃以下

※測定中は体幹を動かさないように説明します。また、測定部位に発汗などがあるときは乾いたタオルなどで拭いてから測定すること。

高齢者等は腋窩に隙間が生じやすいので、体感に密着するようにしっかりと保持すること。また、麻痺のある場合は、健側で測定します。

2 ペンライト(検眼ライト)(写真6右上)

目に光を当て、眼位と瞳孔の左右差や対光反射(瞳孔が縮んでいく速度)を観察する時に使用します。また、口腔・鼻腔・耳腔内の異物や損傷を確認する時に使用します。

※くも膜下出血の疑いがある傷病者は目に光を当てるなどの強い刺激で症状が悪化する恐れがあり注意が必要です。

3 聴診器(ステート)(写真6右下)
呼吸音、心音、腸雑音などを聴取して、呼吸・心拍の状態や腸管の状態を観察します。

傷病者へ聴診する旨を説明し、聴取する間は声を出さないようにしてもらいます。また、耳ピースを確実に耳の穴に入れ、使用する前には、傷病者に当てるヘッドは掌で温めてから聴診します。

呼吸音では、肺胞呼吸音と気管支呼吸音を聴取します。

肺胞呼吸音では乳頭より頭側で中腋窩線上の部分で左右の呼吸音を聴取します。この部分は、必ず肺胞があり、しかも反対側の肺から最も遠く音の混入がありません。また、聞こえない原因として、肺胞に至る経路が痰や異物で詰まっている、無気肺、気胸、血胸などが挙げられます。

気管支呼吸音は喉頭から第1肋間付近で聴取します。聞こえない原因として、上気道に異物がつまり閉塞した時で、誤飲が疑われます。特に右主気管支が閉塞しやすいので、注意して聴取しましょう。

※ 聴取時間は、1箇所で呼吸のワンサイクル、つまり吸気と呼気の終わりまでを聞くようにします。

写真 7 血圧計・パルスオキシメータ

4 血圧計(写真7上)

水銀血圧計、アネロイド型血圧計、自動電子血圧計等が使用されています。

最近では、装着が容易で、計測時間も約1分間と短い、手首用の自動電子血圧計が救急現場では使用されています。

※ 測定要領等については、第3回で触れていますので省略します。

5 心電図モニター・除細動器

写真 8 患者監視装置

救急車内には携帯用心電図モニター、患者監視装置(写真8)、自動体外式除細動器(AED)などが積載されています。

※ 測定要領や心電図波形の解読、除細動要領については、テキスト等を参考として下さい。

・フラットライン(平坦な心電図波形)について

心電図モニター上、フラットライン(平坦な心電図波形)を確認しても、心静止と即断しないで下さい。潜在的VF(心室細動)が隠れていることがあります。見逃さないために、二つ以上の誘導で波形を確認する、電源オフ、誘導コードが外れている、感度の設定が低くなっているなどにより、心静止に見えてしまう擬以心静止ではないかと疑い確認することが重要です。フラットラインプロトコール(リード・感度・誘導)と覚えてください。

6 パルスオキシメータ(動脈血酸素飽和度と脈拍を測定する)(写真7下)

測定部位(指尖部・爪)に、汚れ、外傷、マニキュアが無いかを確認する。SpO2(動脈血酸素飽和度)の正常値 96%-100%

※末梢循環不全(冷感・ショック・シャントなど)や体動によって測定不可となることがあります。また、一酸化炭素中毒では、血液中のヘモグロビンが酸素よりも一酸化炭素との結合力が強く、実際の測定値より酸素飽和度が高い値を示します。

7 酸素マスク(写真9)

写真 9 リザーバー付き酸素マスク

鼻カニューラ・酸素マスク・リザーバー付き酸素マスク等が使用されています。救急現場では短時間で低酸素状態の改善を図るために、リザーバー付き酸素マスクが使用されています。

※リザーバー付き酸素マスクからの吸入気酸素濃度はリザーバー内の酸素を吸入できるので(1L/分当り酸素濃度が7%-10%上昇する)、鼻カニューレ(1L/分当り酸素濃度が4%上昇する)に対して高い吸入気酸素濃度を得ることができます。

外傷現場では、出血によるショック状態や激しい痛みなどで呼吸抑制となり低酸素状態に陥りやすいため「リザーバー付き酸素マスクで10L/分、投与」と直ちに指示が出ます。

内因性傷病者に対しての酸素投与の指標は呼吸苦などの自覚症状やSpO2が90%以下の時です。しかし、慢性呼吸不全の傷病者や高齢者では高濃度の酸素投与により病体の悪化(CO2ナルコーシスなど)する恐れもあります。意識がある傷病者に対しては病態に応じて、流量は1L/分から開始して徐々に流量を上げていくことも考慮しましょう。



まとめ

病院前の救急活動は、傷病者に接触してから医師に引き継ぐまで行われます。観察(視診・触診・聴診)とバイタルサイン測定を救急資機材を活用して行い、傷病者の緊急性や重症度を素早く見極め病態を把握します。適切な救急資機材の選定と処置により、傷病者の生命の危機を排除し、病状や負傷の悪化を防ぎ、時には症状の改善を図ることも可能です。

写真 10 日常の資機材点検

悲惨な事故現場や、突然の発病に動揺した家族、関係者が見守る急病人のいる場所など、特殊な環境下に置かれることはしばしばあります。目撃した状況に緊張し、処置活動ができなることもあります。いかなる事態にも対応出来るように、日頃から救急資機材の取扱いに精通して、基礎的な医学知識を身に付けておくことが大切です。また、日常の資機材点検(写真10)や出場後の使用した資機材の消毒と清掃、消耗品の補充などの維持管理を適切に行い、いつでも出場できる体制を整えておく必要があります。


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10.2.6/3:09 PM

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