140810今さら聞けない資器材の使い方(12)自動式人工呼吸器

 
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140810今さら聞けない資器材の使い方(12)自動式人工呼吸器

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140810今さら聞けない資器材の使い方(12)自動式人工呼吸器

名前:中谷 翔太(なかやしょうた)

所属:富良野広域連合
上富良野消防署
中富良野支署
出身:北海道空知郡中富良野町
消防士拝命:平成13年4月
救命士合格:平成21年4月
趣味:釣り

中富良野町は北海道のほぼ中央に位置し、北は上富良野町、南は富良野市に隣接しています。人口は約5,400人で、のどかな田園風景と雄大な十勝岳連峰を望める自然と景観に恵まれた町です。夏には畑一面が紫色に染まるラベンダーが美しく、年間120万人の観光客が訪れます。(写真1)

また、毎年7月に町営ラベンダー園で開催される「なかふらのラベンダーまつり&花火大会」ではラベンダー畑の真上に花火が打ち上がり、ラベンダーとのコラボレーションが幻想的で、驚くほど至近距離で楽しめます。


写真1 十勝岳連峰とラベンダー畑(提供:中富良野町)

富良野広域連合上富良野消防署中富良野支署は職員数16名(救急救命士7名)で火災・救急・救助を兼務する体制をとっています。救急業務に関しては高規格救急車1台を運用し、年間約200件の救急出動に対応しています。

今回は「自動式人工呼吸器」について紹介します。

1.はじめに

救急隊が使用する人工呼吸資機材にはBVM、手動トリガー式人工呼吸器、自動式人工呼吸器があります。私は消防学校や救急研修所で「人工呼吸はBVM換気が基本である」と教え込まれてきました。もちろんそのとおりだと思います。実際、私は呼吸停止傷病者に対する人工呼吸や心肺停止傷病者に対して気管挿管チューブ以外の気道確保器具を挿入し米田式※で同期CPRを実施する場合、基本的にはBVM換気をしています。

※米田式…胸骨圧迫実施者が人工呼吸も行う方式

しかし、補助呼吸や心肺停止傷病者に対して気管挿管チューブを挿入し、非同期CPRを実施する場合は自動式人工呼吸器を使用することがあります。なぜこのような場合は自動式人工呼吸器を使用するのかBVM換気の場合と比較してみました。

今回使用する資機材は「コーケンメディカル社製 ANSWER」です。(写真2)

(1)補助呼吸

私が傷病者役になりBVMでの補助換気を実施してもらいましたが、自発呼吸に合わせることは難しく、熟練隊員でも吸気のタイミングがわかりづらく傷病者としては息苦しく感じました。(写真3)これに対し自動式人工呼吸器では、わずかな吸気努力で換気が開始され、ストレスなく吸気ができるため傷病者の負担を軽減することができると言えます。

写真3 補助呼吸の状況

(2)非同期CPR

心肺停止傷病者に対して気管挿管チューブを挿入している場合は非同期CPRを実施することができます。これにより絶え間ない胸骨圧迫をするため、BVMの場合は人工呼吸実施者が6秒に1回の換気を行わなければならず他の活動をすることができません(写真4)。

一方、自動式人工呼吸器を使用すれば人工呼吸実施者は他の活動をすることができるようになります(写真5)。

写真4 非同期CPRをBVMで行った場合

写真5 非同期CPRを自動式人工呼吸器で行った場合

また、「CPR非同期」モードの場合、胸骨圧迫を開始することにより、その圧変化を検知し自動的にスタートします。100回/分のリズムで「ピッピッピッ…」とブザー音が鳴り、表示器に胸骨圧迫時間(120秒)が表示され(写真6)、自動スタートするとカウントダウンされます。120秒後、自動的にスタンバイ状態になり、胸骨圧迫を再開すると再度スタートします。この機能により100回/分以上の胸骨圧迫が実施でき、時間管理を正確に行うことができます。

写真6 胸骨圧迫時間(120秒)表示

CPR同期モードの場合はトリガー表示器にサイクル数と胸骨圧迫回数がカウントアップで表示されます(写真7)。このため、サイクル数の数え間違いをすることがなくなります。

写真7 サイクル表示と胸骨圧迫回数表示

そのほか酸素消費量について比較するとBVMでは酸素を常に流しているため10L投与すると非同期CPR、同期CPRに関わらず1サイクル(120秒)あたり20L消費します。一方、自動式人工呼吸器の場合は換気のときだけ酸素が流れるため、BVMに比べ非同期CPRで1/2以下、同期CPRでは1/4以下に抑えることができるという利点もあります。

2.注意点

1回換気量の設定値についてはガイドラインで「胸の上がりが見える程度」とされているため、傷病者の胸の上がりを見て設定しなければいけません。過度の換気を行うことにより胃への送気や循環への悪影響を与えることがありますので注意が必要です。

機器任せになってしまい傷病者の変化を見逃してはいけません。傷病者を常に観察し、胸郭の動き、気道内圧の変化などに注意して異常が認められれば早急に対処します。また、機器が正常に作動しなくなった場合に備え、BVMをすぐ使用できるように準備しておく必要があります。(写真8)

写真8 BVMを準備しておく

3.おわりに

当消防署のような少人数での勤務体制では増員して救急出動することが難しい現状にあります。決して使用頻度が多い資機材ではないかもしれませんが、状況によっては自動式人工呼吸器がマンパワー不足の強い見方になってくれます。資機材を最大限に活用し、より効率的な活動ができるよう心掛けていきたいと思います。

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