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181121今さら聞けない資機材の使い方 (57) 酸素マスク

近代消防 2018/12 今さら聞けない資機材の使い方(57)

酸素マスク

【1はじめに】

みなさんはじめまして、今治市消防本部、北消防署大三島分署の脇谷賢と申します。

今回の「今さら聞けない資機材の使い方」は「酸素マスク」について執筆させて頂きます。

【2酸素マスクについて】

呼吸不全、循環不全、外傷におけるロードアンドゴーとなった傷病者に対して使用し、主に低酸素血症を改善させるための資器材です。また、潜水作業における減圧障害や一酸化炭素中毒が疑われる傷病者も酸素投与の適応となります。

【3酸素投与資器材の種類】

酸素投与を行う器具の種類は以下のものがあります。

(1)鼻カニューレ(写真1)

カニューレを通して鼻孔から酸素吸入を行う器具です。

適応:酸素化障害の程度が軽い傷病者や在宅酸素療法などを行う、慢性呼吸器疾患や小児等の神経筋疾患の傷病者。フェイスマスクの使用に不快を訴える傷病者。

取扱:カニューレの先端を鼻孔に入れます。(写真2)

ストラップを耳にかけ、顎下で長さを調整します。(写真3)

長所:最も簡便で苦痛や負担が少なく、会話や食事の妨げにならずに酸素の吸入ができる。

短所:十分な吸入酸素を得ることができず、高流量だと鼻腔が乾燥してしまいます。そのため投与酸素流量は3L/分までとします。鼻閉や口呼吸の傷病者には吸入酸素濃度が減少してしまいますので常に傷病者の呼吸状態を確認しましょう。

(2)フェイスマスク(写真4)

傷病者の鼻と口を覆うマスクで顔面に装着する器具です。

適応:軽症から中等症程度の低酸素症の傷病者。

取扱:傷病者の顔にマスクを当て、ゴムを後頭部にまわします。

マスクを鼻の位置に合わせ、ゴムを閉めてしっかり密着させます。(写真5)

長所:鼻カニューレより高い吸入酸素濃度が得られ、口呼吸の傷病者にもしっかり酸素供給ができます。

短所:密着するため不快感があります。マスク内の容量が少ないため、特に若い人では一回換気量が多いと吸気時に不快感を訴えます。少し浮かせれば不快感は軽減しますが吸入酸素濃度が低下します。

3)リザーバ付きフェイスマスク(写真6)

フェイスマスクにビニール製の袋を取り付けた器具です。

適応:重症の低酸素症の傷病者。

取扱:マスクを装着する前にリザーバをしっかり膨らませます。(写真7)

マスクを鼻の位置に合わせ、ゴムを閉めてしっかり密着させます。(写真8)

長所:圧倒的に高い吸入酸素濃度が得られます。(10L/分で約99%)

短所:フェイスマスクと同様。

(4)ベンチュリーマスク(写真9)

ダイリューター(混合器)を交換又はダイヤルを回転させ酸素濃度を調節できる器具です。

適応:酸素濃度管理が必要な慢性閉塞性肺疾患や慢性呼吸不全の患者です。

取扱:あらかじめ決められた酸素流量を流します。(4~8L)

ダイリューターを変換し酸素濃度を合わせます。(写真10)

接続部分を押し込むと濃度が固定されます

長所:希望する酸素濃度で吸入できます。

目安4L:24%・28%、6L:31%、8L:35%・40%、12L:50%

※メーカーによって吸入酸素濃度を得るための酸素流量が異なるので注意しましょう。

短所:吸入酸素濃度を50%以上に上げることは難しく、高い吸入酸素濃度は期待できません。

投与量と期待される吸入酸素濃度の比較(表1)

上記の表は各酸素マスクにおいての吸入酸素濃度の違いを表しています。

【4合併症、禁忌について】

(1)酸素中毒

長時間の高濃度酸素投与は気道粘膜や肺胞が傷害され呼吸不全に陥る可能性があり、一般的に100%投与は6時間以内、70%では24時間以内、45%以下なら長期投与でも安全とされています。

(2)CO2ナルコーシス

慢性呼吸不全の傷病者に不用意に高濃度酸素投与すると、呼吸を弱めてしまい、自発呼吸が減弱・停止する可能性があります。しかし生命維持には低酸素血症の改善が不可欠であり、酸素投与を躊躇してはいけません。呼吸停止に備えてバックバルブマスクを準備しておきましょう。

(3)禁忌

除草剤(パラコート、ジクワット製剤)による中毒の急性期は、酸素と反応し活性酸素が生成されるため、肺線維化が進み換気不全を起こします。

【5注意点】

収納方法を疎かにすると酸素ラインに閉塞や折れが生じてしまいます。

また、酸素は燃焼を促進させるので除細動時の火花や酸素ボンベの急激なバルブ操作による摩擦熱等に注意しましょう。

【6現場活動の体験から考慮したいこと】

(1)眼鹸結膜蒼白の傷病者に対して酸素投与を考慮しましょう。

(2)実際の傷病者には体格差があります。小柄な傷病者や高齢女性に対しては、小児用の酸素マスクの使用を考慮しましょう(写真12)。

(3)高リスク機転重症傷病者では、全身固定後の容態変化と気道確保に備えてゴムバンドを使用せず、サージカルテープを使用し顔面に装着します(写真13)。

(4)乳幼児はマスクに不快感を訴え嫌がるため少し浮かせる等の工夫をしますが吸入酸素濃度の低下に留意します(写真14)。

(5)在宅酸素療法の傷病者は必ず普段の酸素投与量を確認し、分からない場合は掛かりつけ医師に連絡し助言を求めましょう(写真15)。在宅酸素療法の傷病者は医療機関・医師と密接な連携に置かれています。また、通報者が訪問看護師、ホームヘルパーであれば協力してもらう)

【7使用後】

(1)使用後は消毒のあと、チューブに折れ曲がりが生じないよう丁寧に袋に収納しましょう(写真16)。

(2)酸素ボンベの閉め忘れに注意しましょう(写真17)。

【8おわりに】

有効な酸素投与ができるよう、日々の整理整頓や出動前点検を怠らないことが大切です。また、除細動時には酸素吹き出し部分を電極パッドから遠ざけるようにしましょう。酸素マスクは使用頻度の高い資器材ですので、各酸素マスクの使用用途や濃度、注意事項をしっかり理解し、創意工夫しながら取り扱いましょう。

著者

名前:脇谷賢(わきたにけん)

所属:今治市消防本部

北消防署大三島分署

出身:愛媛県今治市

消防士拝命年月日:平成20年4月1日

趣味:ゴルフ





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