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月刊消防2000 11月号「最新救急事情」 精神科救急 人権・人権・人権

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この原稿は東京法令出版の「月刊消防」並びに「プレホスピタルケア」に投稿された各原稿を、AEML会員のために、非公開ページにて公開するものです。掲載にあたって承諾いただきましたAEML会員の皆様に感謝申し上げますとともに、自分たちの学習資料として存在するページであることを認識し、他への持ち出すなどの行為は厳に謹んでください。


月刊消防2000 11月号「最新救急事情」

精神科救急 人権・人権・人権

精神科領域の救急は次第に法律が細かく定められるようになってきて、救急隊の活動の場は広くなってきている。しかし、警察や病院の対応は改善されたのだろうか。事例:北海道北見市早朝の冬の朝、「27歳の男性が起床後、変なことを言い出し暴れている」と旅館の主人からの通報。 5分後に現場到着。状況は、客室大広間で数人の同僚に羽交い締めで取り押さえられ、男性は、意味不明なことを言いながら逃げだそうともがいている。

話によると患者は、起床後部屋を走り回り、自らの拳で胸を叩きながら(ゴリラのドラミング)「1.2.3.・・・死にまあーす」と何度も叫んでいたとの事。

暴れている患者を三角巾等で抑制、取り押さえながらの観察の結果、外傷もなく、また比較的元気で飲酒や薬の服用が認められないが、「自傷、他害」のおそれがあり警察業務に該当すると判断、その旨を関係者に説明し警察官を要請した。警察官数名が現場到着、今までの状況説明と協力を申し出て、病院選定や関係者の連絡などを警察が分担し、病院搬送は救急車を使用し警察官同乗とする旨を確認する。その間も抑制から逃げようと救急隊員と警察官が叩かれた。救急隊が現場到着後から病院へ向かうまでに40分と言う長時間を要した事例であった。

この事例では、明らかに「自傷、他害」のおそれのある患者と判断出来るケースであったが、中には30代の女性とその母親が言い争い、お互いに「お前がおかしい!救急車で病院へ行きなさい。」と言うだけで、どちらが患者なのか判断できず、現場で警察官と協議し人権問題を考え現場を離れた事例があった。この場合、家族にとっては深刻な問題だが、救急隊も警察も踏み込めない限界を感じる。

人権問題と言えば、20代前半の男性が、家の柱につかまり被害妄想状態で、「殺される!」とわめき、傍らの家族がなだめながら、チョットドライブに行こうと、救急車を要請。患者を騙して病院へ搬送する訳だから、「それはできない」と家族に理解を求め、現場へ医者を要請したケースもあった。

まとめ
1.救急隊員及び関係者の安全確保をはかる。
2.関係者には、プライバシー及び人権問題に注意して説明する。患者を抑制する事は衆人環視の中ではかなり神経を使う必要がある。状況によっては他の救急隊・消防隊の増援を積極的に考える。
3.警察官と早期に、お互いの任務分担を確認し行動する。
4.患者を病院へ搬送できない状態であれば、躊躇せず精神科医師を現場に要請すべき。
5.往々にして病院搬送まで長時間にわたる活動になる。事故防止からも通信指令室など消防隊との連絡を密にする。

精神科救急の実体

精神科で緊急入院をした患者をみると、60%は精神分裂病であり、次いでアルコールや覚醒剤などの薬物精神病が25%を占める。また、救急外来を受診した患者では、精神分裂病が3〜4割、薬物精神病が3割と、ここでも同じ疾患が上位を占める。受診時の症状では、幻覚妄想が23%、精神運動興奮が34%であり、以下意識障害、飲酒問題行動、抑うつと続く。

運ばれてきたら医師はどうするか。意識障害がある場合には重大な疾患を除外した上で向精神薬(ハロペリドールなど)の筋注・静注を行う。意識障害がない場合にはまず落ちついた態度で説得する。興奮とその原因の関係がこちらに理解できるものならこれで治まることが多い。理解できない原因で興奮している場合にも説得は試みるが、それでも興奮が長引いたり自損・他害の恐れが見られたときには説明の上患者を物理的に拘束して薬物治療を行う。

精神保健福祉法

平成11年に精神保健福祉法(法)が改正され、措置入院のための移送について法文上明確にされた。今まで民間の警備会社が行っていた患者移送を公的機関が行う(もしくは保証する)ことは患者の安全上評価できる。法律の中では移送に際して告知を義務づける等、患者の人権に配慮して移送を行うことを規定している。

措置入院にしても医療保護入院にしても、従来より迅速確実に患者を病院に収容できるようになってきており、現実に即した方向で法律が進んでいることを伺わせる。

人権・人権・人権

ところが、人権である。法では基本的な考え方として人権を強調している。法24条を見れば、警察官が客観的な状況から電話一本で知事に通報できることになっている。しかし、人権が声高に叫ばれ、重大犯罪者にも人権を尊重しなければならない時代では、警察官が通報や移送に至る敷居はだんだん高くなってきており、家族の負担はますます増大してきている。際限のない暴力があったとしても、警察官の到着で患者がおとなしく振る舞えば、家族は再び暴力の嵐に放り出されることになる。こと人権に関しては、救急隊は全くの無力である。警察官の事項でも現実に即した改正を望みたい。

結論

1)法整備は進んできている
2)人権の壁が厚くなってきている

本稿執筆に当たっては、北見地区消防組合北見消防署 成田 慎也 救急救命士の協力を得た。

参考文献

臨床精神医学 1996;25(6):649-667
厚生省精神保健福祉法規研究会:精神保健福祉法詳細.中央法規出版、1998


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