救急隊の点滴行為は心室細動の生存率を低下させる

3月刊消防 最新事情 in press

救命士の処置拡大によりショック状態の患者に対する点滴が可能となったが、もともとはアドレナリンを現場で投与するためのルート確保という意味で点滴が行われていた。心停止患者に輸液をしても意味がないからである。この点滴について、救急隊が行うと患者の生存率が悪化するという論文が出た。

神経学的後遺症の軽度の割合が低下

論文はおなじみ京都大学の石見先生のグループが大阪のデータを用いて出したものである1)。対象は2005年から2012年までに病院外心停止を起こした18歳以上の患者4万1383名。第一の評価点は1ヶ月後に神経学的後遺症が軽度で生存していること、第二の評価点は自脈再開率である。患者の内訳は心室細動(VF)が3208名で残りの3万8175名はVF以外であった。点滴を試みた例ではVF患者で神経学的に良好な生存率が低下した。しかしVF以外では差はなかった。

データを詳しく見てみる。VF患者では点滴を取るという行為が神経学的に良好な生存率を低下させている。これは点滴の成功失敗に関係しない点滴が成功してアドレナリンを入れても生存率は点滴を取らない群に及ばないし、点滴が失敗して結局あきらめた群ではさらに生存率が低下する。自脈再開率は点滴成功群(アドレナリンを投与してもしなくても)>点滴しない群>点滴失敗群である。筆者らはアドレナリン投与についても調査していて、点滴が成功した後にアドレナリンを投与しても投与しなくても自脈の再開率に差はなく、生存率にも差は見られなかった。

VF以外の患者では点滴の有無で神経学的に良好な生存率に差はなかった。しかし点滴が成功した後にアドレナリンを投与できた群では生存率は向上した。点滴を試みること、点滴に成功すること、アドレナリンを入れることの3項目で、心拍再開率と生存率が有意に高かった。

なぜ低下させるか

点滴を取るというその行為自体が生存率を低下させる。その理由を筆者らは2つ挙げている。1つ目は胸骨圧迫に悪影響を及ぼすこと。針を刺すためには患者の腕に伝わる振動を少なくする必要があり、胸骨圧迫の手加減や中断が必要になる。2つ目、現場滞在時間が伸びること。筆者らのデータでは点滴を試みた群は点滴をしなかった群に比べて現場滞在時間が4分長かった。過去にも現場滞在時間が長いと手依存率が低下するという複数の論文が出ている2,3)。

点滴を取るくらいで生存率が低下するだろうか。胸骨圧迫が疎かになるというのはもっともらしいかと思う。そして、現場滞在時間が4分伸びただけで助かる人も助からないようなら現場活動を根本的に見直す必要があろう。

現場滞在時間と生存率

現場滞在時間については、石見先生の論文で提示していた現場滞在時間の論文も見てみた。まずは小児を対象とした論文2)。3歳から19歳までの2244名について、現場滞在時間と生存率をグラグにして提示している。それを見ると現場滞在時間が最も低いのは0-5分の群で、これは現場で何もできないほど重篤だったのだろうと想像される。生存率は現場滞在時間が15-20分をピークとして上昇して行き、それを過ぎると下がっていく。もう一つはやはり石見先生のグループが出している論文3)で、現場滞在時間が8-16分の群がもっとも神経学的に良好な生存率が優れていたとしている。

VF患者以外ではアドレナリンは早く入れること

石見先生の論文では、VF患者以外ならアドレナリンを入れることで生存率の上昇を見ている。アドレナリンを入れる時期について論文が出ているので紹介したい4)。著者らは病院外心停止患者で除細動の適用外であった成人患者3万2101人について、救急外来到着後にどのようにアドレナリンが使われたか調べた。救急外来到着後10分以内に心拍が再開した患者は除外し、残りの患者について、到着して10分以内にアドレナリンを使った群と10分以降に使った群を比較した。その結果、救急外来到着後でアドレナリンの使用が1分遅れるごとに生存率は4%ずつ減少した。神経学的後遺症の程度は、早く投与しても遅く投与しても差は見られなかった。筆者らは小児でも同じ検討を行っていて、小児でも同様の結果が得られた。

除細動できない患者にはアドレナリンを早く投与すべきという論文は金沢大学からも出ている5)。こちらは蘇生を開始した時点からアドレナリンを投与するまでの時間を9分以下、10分から19分まで、20分以上の3つに分けている。結果は9分未満と10分から19分の群の2群に対して20分以上の群では生存率が良かった。なお、この論文では除細動可能な患者についても検討しており、9分以下より10分から19分まで、それらより20分以上の症例で心拍再開率・1ヶ月後の生存率・神経学的後遺症の軽度の割合が悪化するとしている。

助けるのは薬ではなく胸骨圧迫

今回紹介した論文ではアドレナリンはVF以外なら有効となっているが、逆に予後を悪化させるという論文も多数存在する。それに加えて点滴は、試みた時点でVF患者の予後悪化が決定してしまうらしい。救急隊が患者を助けられるのは胸骨圧迫しかないということだろう

文献

1)BMJ Open 20177(12)e015055

2)Resuscitation 2015;94:1-7

3)Resuscitation 2014;85:203-10

4)Circulation 2018;137:2032-40

5)Crit Care 2014;18:528

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