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WPW症候群の症例からパルスオキシメーターの有用性について


研究論文

WPW症候群の症例からパルスオキシメーターの有用性について

北海道・旭川市消防本部北消防署:著者連絡先:〒070−0843北海道旭川市大町3条5丁目
杉浦康裕・大西敏明・鴨志田清・太田義正
市立旭川病院院長
舘田邦彦

はじめに

近年循環器疾患の救急搬送は増加傾向にあり、しかも重症例の搬送も増えている。

循環器疾患の救急搬送時の心電図モニター観察からは重要な情報が得られる。また、救急車内での循環動態の把握は脈拍の触知、血圧の測定によって得られる。しかし、これらのみでは継続的な循環動態の観察は難しく、パルスオキシメーターは継続的に末梢循環のモニターを行いうる可能性がある。

今回WPW症候群、不整脈疾患などの搬送事例から、パルスオキシメーターの活用によるバイクルサインの確認要領について考察を含め検討する。

方 法 車載のライフスコープL(日本光電社製BSM−2101)を使用、心電図モニター及びパルスオキシメーターの脈波を同時にモニターし、心電図波形、末梢における脈波及び触診による脈拍の強弱、不整脈の有無をチェックし、バイタルサインの確認要領を検証した(図1)。

症例1
事故概要:急に胸部圧迫感を訴え要請したもの
既往症:WPW症候群で現在治療中
年齢・性別:22才男性
到着時の状況

意識:JCS−0
脈拍:70/sec不整
呼吸:正常
顔色:正常
体位:自宅前に立っている状況

心電図モニターは、心室頻拍(以下VTという)様波形(図2)が見られたが循環虚血は少ないものと判断、酸素吸入を行い心電図モニターの継続観察とした。
モニター上で心拍数は140回/分であるが、橈骨動脈での脈拍数は70回/分程度であった。この時は収容医療機関が近距離であったためパルスオキシメーターは装着しなかった。

症例2
事故概要:急に胸内苦悶を訴え要請したもの。発作直後にニトロ舌下錠服用
既往症:狭心症
年齢・性別:82才女性
到着時の状況

意識:JCS−0
脈拍:70回/sec不整
呼吸:徐呼吸
顔色:正常
体位:自宅トイレ便座に座位
血圧:159−83mm/Hg
その他:悪寒心電図波形と脈波は同調しておらず、さらに脈波の大きさに変化が見られる。また心電図波形で期外収縮と見られる部位では、脈渡が出ていないところもある(図3)。

症例3
事故概要:急に心肺機能停止となったため要請したもの
既往症:脳梗塞・糖尿病で自宅療養中
年齢・性別:67才 女性
到着時の状況

意識:JCS−300
脈拍:橈骨動脈及び総頚動脈とも触れず
呼吸:感ぜず
顔色:チアノーゼ
体位:ベッド上に仰臥位
血圧:測定不能
瞳孔:散大(6mm)、対光反応なし
心電図:心静止 心電図上は心静止、脈波は検出されず、心肺蘇生時の心臓マッサージに同調し脈波が検出されている(図4)。考 察 各種心疾患患者及び心肺機能停止患者の搬送症例から、心電図と脈波を同時にモニターすることで、不整脈の確認、さらには末梢における循環動態がモニター上からだけでも容易に確認でき、観察と応急処置が平行して行える。

症例1では、心電図上はVT様波形で心拍数が140回前後、脈拍数は70回と心拍数の約半数となっている。近医収容でありパルスオキシメーターの装着はしなかったが、容体急変等の変化に対処するためには、触診による脈拍の継続観察を行い、循環動態を確認する必要がある。時間的経過を考慮しても血圧測定を行わなかったことは反省すべき点である。

症例2では、心電図とパルスオキシメーターを同時測定した。心電図波形と脈波が同調しておらず、不整脈さらには循環状態の確認が容易であり、同時にプリントすることで医師引継ぎに確実な情報の提供ができる。

症例3では、心肺機能停止状態の患者で心肺蘇生を実施、心臓マッサージに同調して脈波が出現している。これは末梢における循環状態を術者自身も目で観察でき、心臓マッサージの確実性についての効果が確認できる。

さらに、マルチプローブを使用し前額部または耳介部に装着することで、脳への循環状態を確認できる可能性があり、今後検討したい。

結語 救急車内での心電図モニターの観察のみでは、心電図の波形に惑わされ、あたかも循環が維持されているものと誤ることが考えられるが、パルスオキシメーターを装着し脈波を継続してモニターすることで、次の効果が期待できる。

1 リアルタイムで循環状態の継続観察ができると共に、突発的な異常を発見することができる。

2 心電図と合わせて脈波を表示することで不整脈、期外収縮、電導収縮解離等の確認が容易となる。

3 心電図と脈波をプリントアウトし、医師引継時に活用することで、引継時間の短縮さらには、より確実な伝達ができる。以上のような効果が期待できるが、機器だけを信頼しすぎると重大な過ちを招きかねない。

常に原点に立ち返り、見て、触れて、感じての五感による観察を併用することが必要である。


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