手首血圧計の検討

 
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HTMLにまとめて下さいました粥川正彦氏に感謝いたします


目次

私たちの研究

手首血圧計の検討

旭川市消防本部:著者連絡先:〒070−0037北海道旭川市7条通10丁目
玉田伸二・川原淳二・工藤淳一1
旭川厚生病院麻酔料
玉川進

はじめに

北海道の冬は常に氷点下となり、救急活動の困難も多い。中でも血圧測定は、傷病者が衣類を重ね着しており、傷病者及び救急隊員双方にとって困難なものとなっている。被服を脱がせ、また着せることにより与える動揺と、活動遅延がその理由である。

これまで、衣類の上からの測定が検討され、誤差は少ないとの報告もあるが1)、今回市販の手首血圧計の有用性について検討してみた。

なお、本研究は旭川厚生病院において、生涯研修時に行った。

方 法 寒冷条件下での救急事案は、室内(暖房され末梢循環が良好)、または屋外(寒冷暴露で末梢血管が収縮)で発生することから、この2条件下での検討が考えられるが、本研究では研究時期が初夏であり、室温環境(約25℃)でのみ実施した。

本研究に同意した60歳未満の健康群15名、入院加療中の60歳以上の冠動脈疾患群15名に対して、それぞれ収縮期圧及び拡張期圧を上腕と手首で1回ずつ測定した。

手首血圧計 拡大

測定器材は、上腕に対してはタイコス製アネロイド血圧計、手首には市販のオシロメトリック型手首血圧計(オムロンHEM609,図1)を使用した。データの検定はStudentのt検定により行い、有意水準を5%とした。

結 果 まず、健康群と冠動脈疾患群について上腕と手首の比較を行った(表1、表2)。

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健康群の収縮期圧では+17〜−14mmHg、拡張期圧では、+10〜−14mmHgの誤差があった。冠動脈疾患群の収縮期圧では+13〜-20mmHg、拡張期圧では+17〜−13mmHgの誤差があった。

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検定の結果、健康群の拡張期圧について有意に手首値が高かったが(P=0.0104)、それ以外では有意差は認められなかった。

考 察 救急隊員の間では、手首血圧はあてにならないというのが通説であったが、それは感覚的なものであり実証されてはこなかった。

今回研究前に、上腕に対して手首は低値となり、特に動脈硬化の進んでいる冠動脈疾患では顕著にみられると予想したが、結果は異なっていた。

オシロメトリック法は血管振動を捉える測定方法である。血圧は脈波振幅の変化をパターン認識して判定し、脈波振幅が最大となる点が平均血圧に一致する2)ということは解明されているが、拡張期血圧の判定についての理論的根拠が乏しい2)と言われている。そのため聴診法との一致性が良くなるよう、マイクロコンピューターを利用した自動的な分析プログラムが用いられて市販されている2)。今回の測定誤差は+17〜−20mmHgであり、それを大きいとみるか、許容範囲とみるかは議論のあるところであろう。

救急現場での血圧測定の意義は、ショックのような低血圧、または、脳圧亢進をはじめとする高血圧時、そして経時的変化といったところにあると著者は考えている。

しかし、救急隊員の処置拡大の中に血圧測定が含まれ、医師にも認知されるようになった昨今、患者の重傷・緊急度にかかわらず血圧値の報告を求められることも多くなった。

著者は、今回の結果から自覚及び他覚症状からみて安定状態にあり、かつ脈拍が橈骨動脈で普通に触知されるような傷病者には手首血圧計が使用可能と考える。加えて、手首血圧計は手首のみの露出で済むことから、救急車内で継続観察ができ、問診しながら測定でき、さらに悪路による振動に対しても上肢を支えることで影響を緩和できるなど利点も多い。

結論 今回使用した手首血圧計の測定値は、室温(約25℃)下では上腕値と比較して健康群の拡張期圧以外には有意差がなかった。しかし、個別データには誤差の大きなものもあり、使用にあたっては注意が必要である。精度が要求される症例では、上腕で従来の方法を選択すべきである。【文献】
1)斉藤広幸,加賀谷克則,円山啓司:衣類の上からの血圧測定の可能性.プレ・ホスピタル・ケア1995;8(2):34−36.
2)嶋津秀昭:血圧測定はどのように進歩したか.OPE nursing 1995;10(5):12−17.


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06.10.28/3:14 PM





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