救急資器材の保守点検〜専門業者による保守点検の実施〜

 
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目次

各地の取組み

救急資器材の保守点検〜専門業者による保守点検の実施〜

 

江別市消防本部・澤口恵生・浜崎利彦・桧森敦司

はじめに

毎日の出動で何の疑いもなく使用している救急資器材(以下「資器材」という。)であるが、もし、その資器材が信頼できなかったら現場活動の支障になる。そんな懸念から傷病者への安全性を考え、保守点検を適正に行える業者による(以下「専門業者」という。)保守点検を保守点検の仕様書を作成し、平成10年4月より実施したので報告する。

保守点検の目的 平成3年4月、救急救命士法が施行され、同年8月救急隊員の行う応急処置等の基準が一部改正、救急隊員の行う応急処置の範囲が拡大された。

これらの法的整備に伴い、江別市消防本部(以下「当市」という。)においても、平成4年5月いわゆる拡大処置9頂目資器材、平成9年2月救急救命処置資器材等、高度な資器材の導入が行われた。


このように資機材が高度化し、複雑多様化する中で、資器材を有効に活用し、その機能を最大限に発揮するには、資器材の機能や特徴を十分に把握し取扱いを熱知することはもちろん、適正な保守管理が必要である。

救急自動車に積載されている資器材は、本来医療機関などでの使用を目的に開発されている医療機器で、救急現場での使用を目的に開発されたものは極めて少ないのが現状であり、現在救急活動に対応するため医療機器製造業者による改良が加えられているが、出場から帰署まで様々な過酷な条件下での使用を強いられる。

このような条件下で使用する資器材は、多種多様の故障等が発生することが考えられ、救急活動に重大な支障を及ぼすばかりか、傷病者に不利益が生じた場合、訴訟問題にも発展しかねない。

この故障等を未然に防ぎ、発生時には迅速に対応し、修理及び代替の配置を行う必要があることから、従来の日常点検に加え専門業者による保守点検を実施した。

専門業者委託の目的 保守点検は資器材の使用者であり、資器材の故障等を最初に発見する救急隊が保守点検の第一点検者となるのはもちろんであるが、複雑多様化した医療機器の保守点検は、救急隊白身が行うには限界があり、専門業者に委託したものである。

また、現在当市では資器材の耐用年数は特に定められておらず、車両の更新時に併せて行っているのが現状である。しかし医療機器製造業者は国税庁より出されている医療機器の減価償却に用いられている年数を基に、修理可能な期間を目安にしており、今後専門業者による保守点検を継続することにより、更新計画の充実もできる。

医療機器の保守点検制度 保守点検は清掃、校正、消耗部品の交換等をいい、医療機関等は医療法で、医療機器製造者は薬事法でそれぞれ定められている。

医療法で医療機関等は、高度化した医療機器の安全性、有効性を維持するために保守点検を実施しなければならない。

保守点検の主体は医療機関等であるが、専門業者に委託することができる。

専門業者とは、医療機器製造者及び医療機器の修理に関する許可を取得したものを示し、薬事法で定められている。薬事法で医療機器製造業者は、保守点検を適切に実施するための情報の提供が義務付けられている。

このように両者が守ることを守らなければ、万一事故が発生した場合、責任の所在が問われることになり、消防においても医療機器を使用する以上、保守点検を実施する義務が生じると考える。

仕様書作成の留意点 業者に委託する保守点検の仕様書作成にあたり次の点に留意し作成した。

1 医療機関等の状況

医療機関等の保守点検は、前述のように医療法で定められており、人工呼吸器、人工透析器等など生命維持に重要な資器材をはじめ、CT、MRl等、診断に必要不可欠な資器材を中心に、専門業者に委託し保守点検が行われており、医療機器の安全性、有効性が確保されている。

救急自動車に積載されている、除細動器や心電計、自動式心臓マッサージ器等も医療法で定められている資器材の中に含まれており、医療機関等と同様の保守管理が必要である。

2 点検資器材の種類及び点検項目 点検資器材の種類及び点検頂目、内容等について仕様書に明確確にした。

○点検資器材の種類(表1)
(1)調査観察用資器材
(2)呼吸・循環管理用資器材
(3)搬送・固定用資器材
(4)訓練用資器材

○点検頂目  点検項目は医療機器製造業者より示されているものを専門業者と検討し決定した。

3 保守点検の回数 医療機関等の保守点検の回数を参考にし、年2回とした。4 故障発生時の対応 原則的に365日対応とし、整備は当市において行い、対応しきれないものについては持ち帰り、その間代替資器材で対応する。5 点検費用 医療機器製造業者の保守点検費用の算出は定価の3〜5%であり、これに日当及び旅費等を加えた金額であるため、この額を基に算出した。

この結果経費の節約もはかることができる。

6 点検結果報告 報告書の仕様を作成し、これに基づき報告する。

 

当市における保守点検 現在当市における保守点検は、従来から実施していた救急隊員自身が毎朝行う始業点検、週1回行う定期点検、さらに年2回専門業者が当市の指定する日に仕様書に基づき保守点検を実施している。点検結果 平成10年4月から現在までの点検整備を要した呼称発生件数は23件で、うち専門業者による保守点検中に発見したものは7件で、うち5件は救急隊員による日常点検では発見が難しいものであった(表2)。

発生した故障のほとんどカミ軽易なものであったが、予想のできない故障、現場活動の支障になるような故障に発展する可能性のあるものもあり、改めて保守点検の重要さを感じた。

故障の発生した資機材の中には、使用回数の多いことによる劣化や、取扱いが乱雑なことによる破損、明らかに資機材の強度不足と思われる破損等も見られた。

課 題 これまで1年半、3回の専門業者による保守点検を実施した結果、今後の課題として以下の3点が挙げられる。
1 故障が発生した際の対応として、迅速な点検整備の対応も重要であるが、資器材に左右されない観察技術の向上を図る必要がある。
2 当市では現在2台の高規格救急自動車が運用されているが、予備資器材の整備は行われておらず、予備資器材の整備及び整備計画の充実を図る必要がある。
3 資器材製造業者に対し積極的に現場の要望を伝える必要性を感じた。おわりに 専門業者による保守点検を実施した結果、重大な故障を未然に防ぐことができ、当初の目的である資器材の信頼性を確保することができたが、今後専門業者による保守点検の回数を重ねることにより、資器材の適正な更新計画、予備資器材の配置を充実していきたい。【文献】
1)東京消防庁救急部監修.救急技術研究会編著.救急資器材管理・取扱マニュアル.東京法令出版,東京,1999.






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