空手での外傷

今年の正月に知人から電話があり、近く開かれる空手の大会で大会医をやってくれないかと頼まれた。空手を近くで見たことがなかったしただ座っているだけだろうと思って気軽に引き受けたがこれが大間違いで、側頭部への蹴りによって何人も失神する大変な大会であった。

空手で脳震盪

私が見ていたのは高校生の大会である。もっと年齢が低ければ蹴りに力がないだろうし、もっと年齢が上なら上手な人しか残らずに脳震盪は少なくなるだろうと思って調べてみた。

スロバキアからの論文1)で学生の空手トーナメントでのけがを扱っている。対象年は2015年と2016年。1000試合もしくは1000分にどれだけのけがが発生するか調べたものである。これによると1000試合でけがをする割合は45.31000分でけがをする割合は35.9であった。最も多いけがの部位は頭から首、最も多い診断名は脳震盪であった。

これに対して、空手の世界選手権でのけがの状況を調べた報告2)がある。2008年から2014年までの4回を対象としている。試合数は4625回。男性が2916試合、女性が1709試合である。これだけの試合数であっても脳震盪はわずか4回であった。つまり試合1156回につき1回しか脳震盪は起きない。時間数で考えると男性は5832分に1回、女性は6836分に1回である。学生は1000試合して45回も脳震盪を起こしているので、一流選手がどれだけ一流なのかよくわかる。また、男性の方が女性に比べ脳震盪を起こす危険性は高いが男性女性で有意差はなかった。確かに私が見ていたときも、男女等しく脳震盪を起こしていた。この論文では個人戦より団体戦の方が脳震盪の危険性が高くなると述べているが、私が見た脳震盪の半分以上は個人戦であった(だが、大会役員と話をしたところ、個人戦より団体戦の方が選手がエキサイトするのでけがが多くなる、とのことであった)。

年齢と脳震盪の関連では、ハワイからの論文が参考になる3)。12の格闘技を集めた結果では、18歳以上が脳震盪を起こす率は18歳未満の2倍であり、また男子は女子の1.5倍脳震盪を起こしやすい。

以上の論文からは、学年が下がるにつれて脳震盪は少なくなることは分かった。一流選手は脳震盪に脳震盪は少ないことは分かったが、成人における年齢と脳震盪との関連は分からなかった。

脳震盪以外では

脳震盪以外の外傷も見てみよう。2014年のワールドカップのけがの状況が示されている4)65カ国から300名が参加しており、そのうち87名は型だけの選手である。けがをした場所はは膝、肩、足首の順であり、医学的な手当を必要としたのは型では肘、組み手では手と足が同程度であった。ワールドカップ中、56%の選手は特別な処置を受けず、25%の選手は本国に帰っても処置を必要としなかった。

マウスピースも必要

私が見ていたときには男子生徒が一人、脳震盪を起こして倒れ、前歯を欠いてしまった。脳震盪はすぐ回復するが永久歯は回復しない。大会役員によれば「マウスピースの普及に努めているが装着率は低い」とのことであった。

ポロ、空手、テコンドー、ハンドボールの選手でどれだけ歯のけがをしているか見た論文5)がある。対象は平均13歳の小中学生229人。4種類のそれぞれの人数はほぼ同数である。競技の経験年数は平均5年であった。歯を含めた顔面のけがを経験していた選手は58名(25%)いて、そのうち歯のけがをしたのが31名(13.5%)もいた。歯のけがの頻度は高い順にハンドボール、ポロ、空手、テコンドーの順であった。マウスピースが歯のけがの防止に役立つのは皆知っていたものの、実際に使用しているのは半数に満たない41%であった。テコンドーと空手ではマウスピースの着用率は70%を超えていたが、ハンドボールでは15%, ポロでは5%の選手しか装着していなかった。

マウスピースは市販品とオーダーメードでは装着感が全く違うらしい。市販品とオーダーメードのマウスガードで、筋電図を用いて装着時の咬筋と側頭筋の緊張状態を調べた結果では、側頭筋の緊張が市販品に比べオーダーメードのマウスピースでは有意に少なかった。咬筋の緊張には差がなかった6)

反省点

医師免許をもって大会に参加する以上、仕事をなめてはいけない、というのが今回の反省点である。もしまた依頼がきたらどうするか。依頼が来た時に考えることにしよう。

文献

1)Br Sports Med 2017;51:1285-6

2)Br J Sports Med 2017;51:226-30

3)Tsushima WT:Arch Clin Neuropsychol 2018 Epub

4)Sportverlets Spotschaden 2016;30:204-10

5)Galic T:Dent Traumatol 2018 epub

6)J Bodyw Mov Ther 2017;21:109-116

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