今さら聞けない資機材の使い方(63)陰圧式固定具

近代消防2018年7月号p118-20 今さら聞けない資機材の使い方(63)陰圧式固定具:石川仁美(今治市消防本部中央消防署)

【1 はじめに】

みなさんはじめまして、今治市消防本部中央消防署の石川仁美と申します。

今回の「今さら聞けない資機材の使い方」は「陰圧式固定具」について執筆させて頂きます。

【2 陰圧式固定具について】

陰圧式固定具とは、骨折や脱臼などの場合に負傷部位を固定する器具です。

平らな袋の中に細かいビーズを詰め、袋の中の空気を抜いて陰圧を作ることで、袋全体を固めて負傷部位を固定します

四肢用や全身用など各種の大きさがあり、様々な部位に使用することが出来ます。

確実な固定が可能で、二次損傷の防止、疼痛の軽減、さらに多少の保温効果も期待されます。

【3 取扱いについて】

まずは各部の名称について説明します。(写真1)

写真1 各部の名称

①本体(スプリント) ②固定用マジックテープ ③吸引用バルブ

④バキュームポンプ ⑤収納ケース ⑥リペアキット

(1)装着方法

①本体(スプリント)を負傷部位に巻きつけ、マジックテープで固定します。(写真2)

写真2 1人は負傷箇所を支え、もう1人がスプリントを巻きつける。

装着は2人で行います。1人は負傷箇所を支え、もう1人がスプリントを巻きつけます。

スプリント全体が、均一の厚みになるように内部のビーズを伸ばします。

バルブが操作しやすい位置にくるように巻きつけます。

位置を決めたら、スプリントに付いているマジックテープで固定します。

②バキュームポンプのホースを吸引用バルブに接続します。(写真3)

写真3 バキュームポンプのホースを吸引用バルブに接続

③バキュームポンプを引き、内部の空気を吸引します。

④スプリントが固くなり始めたら、負傷箇所に合うように形を整えながら吸引します。

⑤完全に固くなったらバキュームポンプを取り外し、吸引用バルブにキャップをします。(写真4)

写真4 完全に固くなったら、吸引用バルブにキャップをする。

※空気を吸引する際は、バルブを時計回りに回して、バルブをしっかりと閉めてから行います。

⑥最後にマジックテープで再度しっかりと固定します。

(2)スプリントの取り外し方

①負傷箇所を抑えながら、マジックテープを外します。(写真5)

写真5 負傷箇所を抑えながら、マジックテープを外す。

②キャップを取り外し、吸引用バルブを反時計回りに回して自然に膨らませてください。(写真6)

写真6 キャップを取り外し、吸引用バルブを反時計回りに回して自然に膨らませる。

③最後にゆっくりスプリントを負傷箇所から取り外します。

【4 手順(下腿部骨折の場合)】

①骨折部の状況を確認し、骨折部より末梢の動脈の拍動・知覚・運動機能を観察します。(写真7)

写真7 骨折部より末梢の動脈の拍動・知覚・運動機能を観察する。

②変形が高度で搬送が困難な場合には徐々に牽引します。(写真8)

写真8 徐々に牽引する。

③固定後、動脈の拍動と知覚・運動機能を継続的に観察します。(写真9)

写真9 動脈の拍動と知覚・運動機能を継続的に観察する。

※固定は骨折部の近位と遠位の2関節を含めます。

④自覚症状の変化や陰圧の状態が維持されていることに注意します。

【5 代表的な固定具の特徴】

(1)梯子状副子(写真10)

写真10 梯子状副子

様々なサイズがあり、受傷部位によって必要な長さに折り曲げて使用できる。(指や手部など小さな部位のサイズもある。)

患部に直接あたる部分には、緩衝材で被覆されているため、クッション性が高い。

固定したときに、多少の隙間ができる。

(2)陰圧式固定具

四肢や全身の固定に用いる。

サイズを変えることで、様々な部位に使用できる。

患者の体型に合った形状に固めることができる。

装着したままレントゲン撮影可能である。

現場の状況により、ビーズの均等化が困難な場合がある。

ピンホールや切り傷で使用不可となる。

【6 梯子状副子との比較】

(1)サイズ

陰圧式固定具:四肢や全身の固定に用いるため、サイズが大きい。

梯子状副子:指など小さな部位のサイズもある。

(2)密着度

陰圧式固定具:患者の体型に合った形状に固めることができる。

梯子状副子:多少の隙間ができる。

(3)操作性・難易度

陰圧式固定具:使用方法を習得し、十分な知識を持っている必要がある。

梯子状副子:一般市民でも使用することができる。

【7 実際に自分で陰圧式固定具を装着してみて】

(写真11、12)

写真11 陰圧式固定具を装着してみて

写真12 提肘固定

周囲を包まれるため、しっかりと固定されている感覚がする。

移動の際に安心感がある。

装着している部位は想像していたより温かく、保温効果がある。

多少の衝撃なら緩和される。

提肘固定に比べ、簡潔かつ迅速である。

【8 使用後について】

本体に亀裂がないか、バルブが破損していないかを確認します。

本体を洗浄します。表面はビニールコーティングされており、水洗いが可能です。また、汚れた場合は中性洗剤等を使用して消毒し、水洗いした後に乾いた布で水気を完全に拭きとります。

【9 おわりに】

陰圧式固定具は使用頻度が高い資器材ではないかもしれないですが、使用方法を習得していないと負傷箇所を悪化させる可能性があります。日頃から十分訓練を行い、しっかり熟練して取り扱いましょう。

著者(写真12)

石川 仁美(いしかわ ひとみ)

名前:石川 仁美(いしかわ ひとみ)

所属:今治市消防本部

中央消防署

出身:愛媛県今治市

消防士拝命年月日:平成22年4月1日

趣味:ランニング、旅行

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