月刊消防2018/12月号 p73
「危うい救急隊とは」
救急隊に救急救命士が配置されるようになってから、 救急隊の様相はすっかり変わってしまった。 救急救命士の登場によって社会が受ける恩恵が高くなったのは間違 いない。しかし一方で、 救急隊というチームとしての能力は低下してしまっているのではな いだろうかと心配している。先輩の話では、 救急救命士が登場する前、 救急現場では様々なディスカッションが繰り広げられていたそうだ 。専門職が救急隊にいない以上、 なんとか知恵を絞り出さなければならない。 そのためみんなが勉強していたし、 現場ではまるで自分が隊長であるかのように意見をぶつけ合ってい たそうだ。単に医療の質という点から考えると、 今の救急隊の方がより高度であるに違いないが、 チーム活動という点で考えるとどうだろう。昔の救急隊の方が、 今よりもはるかに優れていたのではないだろうか。 現代における救急隊を数式で表すと、「救急隊の力量= 救急救命士の力量」が成立してしまう。
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10月はどこの消防も異動の時期。その数式は、 異動直後の救急隊に著明に現れた。 その救急事案は交通事故の現場だった。 JPTECよろしく活動が展開されていったのだが、 どうもしっくりこない。「隊長、ストレッチャーはどうしますか? 」「全身固定、始めてもいいですか?」「 関係者からの聴取ですか?今から行きましょうか?」・・・。 よっぽど優秀な救急救命士がこの救急隊にはいたのだろう。 どの隊員も、指示なくして動くことができない。いや、 指示がないと動いてはいけないと教育されているかのようだ。 この現場、非常に疲れた。私は指示を出し続け、 どうしても遅れてしまう隊員の動きをフォローし続けなければなら なかった。
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救急隊はチームである。チームというものは、 隊員一人一人の力量の総和が力となる。 私は100持っている力の全てを傷病者に投入することになったの だが、 それはチームとして非常に危ういということを是非理解していただ きたい。隊員3人が40ずつの力を出し合うだけで、 120の力を傷病者に向けることができ、 隊員一人当たり60の力をまだ隠しておくことができるのがチーム の素晴らしい点だ。 隊長の私が力の全てを傷病者に出し切ってしまったら、 チームの安全を守ることなんてとてもできない。
私の考えるバランスは、隊長兼救急救命士の場合で、 傷病者への意識50%、チームの安全への意識30%、 残りの20%はとっさ時の対応のために取っておく。 チームに隊長でない救急救命士がいる場合は、 もっとチームの安全への意識に力を向けることができる。 傷病者への意識30%、チームの安全への意識50%、 それでも20%の余裕は保険で確保しておきたい。
50% の意識だけで本当に傷病者を守ることができるのかと思われるかも しれないが、 そこがまさに救急救命士として備えるべき力量である。 私は傷病者へ50%の意識しか向けないが、 それでもあなたの力量の、150% に相当するだけの力があると言えたらかっこいい。
救急隊はチームである。救急救命士が登場する前、 救急現場で繰り広げられていた積極的なディスカッションを、 私は復活させたいと思っている。
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