健康教室2019年8月号p54-5
応急処置アップデート
17 熱中症
ポイント
1.水が飲めなければ救急車
2.飲めても吐くなら救急車
3.渇いた時に好きなものを好きなだけ飲ませる
熱中症は予防できる病気です。学校では集団で発生することが多くマスコミのネタになりがちです。まずやることは予防で、次に処置となります。
1.救急車を呼ぶ判断(図1)
「自分で水を飲めるか」だけです。飲めないなら迷わず救急車です。飲んでもすぐ吐くのなら救急車です。
2.処置
(1)自分で水が飲める場合
スポーツドリンクなど、本人が望むものを飲ませます。ほとんどの患者で塩気を欲しがりますので梅干しや塩昆布など、食べたいものを食べたいだけ食べさせます(図2)。
脱水の補正についてはスポーツドリンク、オレンジジュース、リンゴジュース、牛乳で差がないことが報告されています(図3)。
(2)水が飲めない場合
体温が高い場合は全員総がかりで冷やしましょう。本人が寒いというまで冷やします。どれだけ冷やせるかがその子の生死を分けます(図4)。
冷やし方は病院では氷水に漬け込みます。学校では可能なら水道水をホースでかけ続け(図5)、
不可能ならクーラー最大・動脈冷却・体表水冷却(図6)を試みます。救急隊に引き継ぐまで冷やし続けます。
3.知識アップデート
(1)補水のタイミング
定期的に一定量を補水するのが良いとテレビでは言っていますが、若い人には当てはまりません。定期的・一定量は渇きのセンサーが衰えている老人向けの話です。
若年者に最も良いと考えられるのが、自分の好きな時に自分の好きなものを飲みたいだけ飲むことです。これでも脱水量は最大で体重の10%以内に収まることがわかっています。時間を決めて強制的に水を飲ませると水中毒(体内に水が多くなりすぎることで吐き気や意識障害を来たす)になります。
スポーツの指導者は、自由に飲水できる環境を整えましょう。
(2)飲むもの
市販の経口補水液は脱水前に飲ませるにはナトリウム濃度が高すぎます。脱水になってから飲むものです。普段はもっと安いスポーツドリンクを飲みましょう。
自分で作る場合は砂糖水に食塩を少し加えます。蜂蜜を入れるのも推奨されています。糖分があれば飲みやすいですし、ナトリウムが吸収されるには糖分が必要です。
飲み物の温度で現在推奨されているのはシャーベットです(図7)。体内から体温を冷やすことができます。常温の補水液をゆっくり飲むのも老人向けの話です。
しかしながら、脱水前に何を飲んでいたかという調査でも、脱水後に何を飲んだら回復しやすいかという調査でも経口補水液に利点は認められていません。飲みたいものを飲ませるのが1番のようです。
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