191207秋祭りで発生した負傷者37名の事故

 
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症例

プレホスピタルケア 32巻5号(2019/10/20) p54-55

投稿:症例

 

秋祭りで発生した負傷者37名の事故

中西誠

 

中西誠

三観広域行政組合消防本部

著者連絡先

〒768-0067

香川県観音寺市坂本町一丁目1番7号

三観広域行政組合消防本部

TEL:0875-23-3970  FAX:0875-23-3971

 

目次

はじめに

三観広域行政組合消防本部は香川県の西端に位置し、観音寺市、三豊市の2市で構成され総面積は340平方キロメートル、人口は約13万人。1本部、2署、3分署で職員数170名の消防本部である。

今回提示する症例は、夜間運行している最中の太鼓台に20トンの大型トレーラーが追突した多数傷病者事故である。負傷者は37名、うち1名が死亡した。当消防本部において過去最大の多数傷病者事故であった。

太鼓台とは、全国的には山車(だし)と呼ばれているもので、私の町では「ちょうさ」「太鼓台」と呼ばれている。高さ約5m、重さは約3tにもなる。五穀豊穣を祝って数十名の担ぎ手に担がれるもので、毎年10月に各地区の秋祭りで見られるものである(図1)。

図1

秋祭りの風景。太鼓台を担いでいるところ

事故概要

事故発生は平成28年10月8日土曜日、秋祭り初日の21時55分頃。場所は香川県観音寺市、管内主要幹線道路の国道11号線上である。担ぎ手約60名で進行している太鼓台の後方より大型トレーラーが追突し、太鼓台を数十メートル押し込み停車した。祭り関係者と事故を聞きつけて集まった人達で現場は大混乱していた(図2)。

図2

事故当時の状況

活動内容

21:56(0分後)

祭り関係者の男性より119番通報。「観音寺市柞田町の国道で大型トラックが太鼓台に突っ込みケガ人が約20名程度いる。傷病程度は不明」

この119番通報を受け、集団災害事案で指令がかかり、指揮車、救助車、ポンプ車、救急車5台の計8台が出動した。

9分後

最寄の分署より救急隊が先着隊として現場到着。事故車両の大型トレーラーと太鼓台により国道は封鎖され交通渋滞。警察機関は到着しておらず現場には10名程度が倒れていた。

11分後

指揮隊・救助隊・救急隊が到着。先着隊より概要と活動内容が報告され、指揮隊より現場指揮本部の設営、トリアージの継続の指示があった。

車両配置を図3に、現場指揮本部の様子を図4に示す。

図3

車両配置図

図4

現場指揮本部の様子

車両の動線を図5に示す。バツ印が現場である。警察機関の協力を得て国道と平行して走行する道路を利用しての、灰色の矢印の動線が理想であったが、連絡調整の不備で現場手前でUターンする黒の矢印の動線となってしまった。

図5

車両の動線

X:事故現場

灰色矢印:理想とした動線

黒矢印:実際の動線

図6に太鼓台の状況を、図7に事故車両の状況を、衝突箇所を図8に示す。太鼓台には4本の担き棒があり、その1本がトレーラーの前面グリルにのめり込んだものである。

図6

太鼓台の状況

図7

事故車両

図8

トレーラーの前面グリルにのめり込んだ穴とのめり込んだ担ぎ棒

17分後

傷病者多数のため香川県消防相互応援協定及び広域消防相互応援協定に基づき応援要請を実施。

18分後

警防本部を設置。

19分後

近隣の消防本部に対し当消防本部より応援要請を実施。

20分後

三豊・観音寺市医師会へ協力要請を実施。

24分後

当消防本部の救急車5台が到着。一次トリアージにより搬送対象者は35名(黒0、赤4名、黄7名、緑24名)。受入確定した医療機関へ重傷者より順次4名を搬送開始。

34分後

管内で軽症者の受け入れ医療機関が不足していたため愛媛県四国中央市及び県内中讃地域に対し医療機関の受け入れ状況を問い合わせ開始。

38分後

当消防本部より計6台、香川県内の近隣の消防本部より計5台、愛媛県四国中央市消防本部より計2台、合計13台の救急車が出動。

1時間34分後

重症4名・中等症6名・軽症10名の計20名を搬送。

2時間41分後

最後の傷病者を医療機関へ収容し傷病者の搬送を終了。

考察

今回の事例からの反省点と今後の対応について考察する(表1)。

(1)関係機関との連携調整に不備があった

警戒区域を確立できなかったことから、共通の認識のもと活動が行えるよう指揮隊長クラスの職員は多数傷病者への対応標準化トレーニングコース(MCLS)を受講、訓練を行い共通の認識を持ち活動を行えるようにした。

(2)トリアージタグの記載要領と認識が不十分であった

4枚タグに変更後、教養、訓練で使用し記載、取り扱い要領の統一を図った。

(3)救護所の機材搬送、救護所設営の迅速化を図る

指揮隊の要請により発災地以外の署が対応することも考慮する。

(4)傷病者管理に課題を残した

現有しているマイクロバスが現場の特性や季節、時間帯に関わらず有効な傷病者管理手段になる

表1

本事例を受けての反省点・対応・成果

結論

(1)夜間運行している太鼓台に20トンの大型トレーラーが追突し37名が負傷した事例を経験した。

(2)本事例での活動内容を報告するとともに、事例を受けての反省点・対応・成果を示した。

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