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191211最新救急事情(212-1)消防職員と個人防御装備

プレホスピタルケア 32巻5号(2019/10/20) p78

最新救急事情

消防職員と個人防御装備

PPE、早く着替えないとオオカミがやってくる

救助関係、特に狭隘空間の救助の記事には個人防御装備(personal protective equipment, PPE)に関する記述が必ず出てくる。瓦礫の中を這いつくばって取り残された人を探すのだから絶対必要な装備である。一方、救急隊員が着ているガウンも消防隊員の防火服もPPEである。今回は救急隊と消防隊のPPEを見ていく。救助隊のPPEについては紹介文くらいしか見つけられなかった。

救急隊とPPE1)

救助隊が身につけるPPEは瓦礫による切創などを防ぐためのものだが、救急隊が身につけるものは感染を防ぐのが目的である。エボラ出血熱やSARSなど死に直結する感染症から身を守るためには必要不可欠な装備であることから多くの研究が発表されている。ただ内容はよく知っているものばかりである。

実験は汚染物質として蛍光塗料かヒトに無害なウイルスを用いる。擬似病原体がPPEを通過して皮膚に到達する割合は研究により差があり、10%から100%であった。

(1)PEEが持つ効果

気体を通すタイプのガウンは防水性のガウンに比べて体幹への感染を起こしやすいと考えられる。実際に検討したところその通りであったが、装着感の満足度は通気性の素材の方が防水性素材に比べて高かった。ガウンはエプロンに比べて感染の危険度は少ない。ガウン中に空気を送り込むタイプのPPEは通常のガウンに比べ感染防止機能は高い。

ガウン対つなぎ、ブーツカバーの有無、帽子とフード(頭巾)、手袋の長さについては感染防止機能に差は認めない。マスクについている金属の鼻当てやシールされたガウンと手袋の組み合わせ、首回りや手首周りをきっちりフィットさせたガウンは一般的なガウンより感染の危険を低下させる。二重の手袋は感染機会を低下させる。

(2)PPEの脱ぎ方

アメリカCDCの勧めるガウンの脱ぎ方に従うことにより、従わない場合に比べて感染の機会は低下する。ガウン着脱時の手へのアルコール噴霧は次亜塩素酸(ハイターやブリーチ)の噴霧より効果が低い。

(3)教育

ガウンを脱ぐときに口頭で指導すると間違いが少なくなる。コンピュータやビデオによる訓練によってガウン着脱の間違いは少なくなる。ビデオ単独より向ビデオに加えて向かい合っての指導のほうが良い

コクランデータベースをもってしても当然のことしか書いていない

消防隊とPPE

消防隊員にとってPPEは炎と熱と有毒ガスから身を守る味方であり、身動きを妨げる敵でもある。消火作業中に転倒すれば命の危険がある。このため、消防隊員についてのPPEはその動きやすさが研究の主題となっている。

アメリカにおける消火活動中の外傷の21%は転ぶ・つまずく・滑るといったバランスを崩したためのものと報告されている2)。防火服については、装着によってバランスが取りづらくなることが欠点として挙げられている3)。前後左右全ての方向においてバランス保持が難しくなる。もっと大きな問題は消防隊員が背負う人工呼吸器(酸素ボンベや酸素マスクなど)である。重い上に背側にバランスが移動することから転倒の可能性が高くなるからである。ただ消防隊員は普段から体を鍛えている。そこで消防隊員と非消防隊員を比較した論文が出ている2)。ここではまず全員の感覚機能と運動機能を定性的に測定した後、消防隊員が身にまとう防火服一式(フェースマスク以外)を装着して感覚機能と運動機能を測定し、さらに加えて人工呼吸器を装着した上で同じく測定した。対象は消防隊員8名と年齢を合わせた非消防隊員8名である。この結果では、消防隊員であっても非消防隊員であってもPPE装着によっての感覚・運動機能に変化はなく、呼吸器装着を加えても重心は装着前と変化はなかった。ただ、同じグループが報告するところによると、防熱服や人工呼吸器はストレスがかかるとバランス保持に悪影響を及ぼすので、バランス保持を考える必要があるとしている4)。

別のグループは、消防隊員のPPE、特に人工呼吸器は酸素マスクの有無にかかわらずバランスを崩させる要因としている5)。

酸素ボンベを背負うのは消火活動では避けられない。将来的にはバランスの崩しづらい酸素ボンベが出てくるにしても、現状では転ばないためには普段から体幹を鍛えるしかなさそうだ。

火災現場で免疫と肺を悪くする

火災が鎮火した後も有毒ガスが周囲に充満しているという論文6)があったので、付け足しながら紹介する。有毒ガスが免疫系と肺を傷めるというものである。

消火活動中は人工呼吸器を装着して活動するが、煙が消えた後は消防隊員は人工呼吸器を外して活動する。鎮火後に吸入する気体は一酸化炭素、二酸化炭素、シアン、硫化水素、酸素である。鎮火後を想定した気体をマウスに吸わせたあとに3852のRNAを解析したところ、86種類のRNAでその量が1.5倍に増加もしくは2/3に低下していた。そのRNAには免疫を司る遺伝子が2種類低下しており、発癌遺伝子の2種類が増加していた。免疫の遺伝子は炎症性肺疾患に関係しているらしい。この結果から、消火後であっても有毒ガスによって炎症性肺疾患と癌の危険にさらされていることを意味している。火が消えたらなるべくはやく撤収しよう。

文献

1)Cochrane Databvese Syst Rev 2019Jul 1:Epub

2)Appl Ergon 2019;80:187-92

3)Work 2019;62:507-14

4)Ergonomics 2017;60:1137-45

5)Brown MN:Ergonomics 2019Jun 17, Epub

6)PLos One 2018:13(8):e0201830

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