ポイント
1.唸っているなら触らない
2.完全閉塞なら知っている方法を全て試す
3.頭を下にするか寝かせる
初めに
窒息(気道異物)について解説します。事例数が最も多いのは高齢者で、次いで2歳以下の小児です。学校では早食いの競争で窒息する例が過去にはよく報道されていました。
1.窒息を疑う
食事中に完全に窒息した場合、急に声が出なくなり、児童が自分の喉を掴むような仕草をします。これが「窒息のサイン」です(001)。
実例では喉を掴む仕草以外にも、自分の胸を叩いたり、指を喉に入れるような仕草をします。不完全窒息の場合はまだ少し息ができますので、ひきつるような唸り声を出します。
意識があるなら「喉に物が詰まったのか」と聞くとうなずきます。
2.唸っているときは
児童が異物のため唸っているときは手を出してはいけません。思わず背中を叩きたくなりますが、そうすると異物が気道に嵌まり込んで完全閉塞になる可能性があります。
児童に咳を命じ、その後に119番通報をします(002)。咳が最も有効な除去手段です。命じても咳ができない場合はこよりを鼻に入れてくしゃみをさせます。
3.完全閉塞したときは
一刻も早く気道異物を取り除きます。119番通報はその後です*。
推奨されている方法は2つです(003)。これらを組み合わせて行います。出てこないときは何度も繰り返します。
(1)腹部突き上げ法:
ハイムリック法と呼ばれていたものです。児童の後ろから腕を児童の腹に回し、児童のへそのあたりで自分の片方の握りこぶしをもう片方の手で握り、素早く手前上方に引きます。乳児では肝臓が大きくこの方法で肝臓が避ける可能性があること、妊婦では子宮を圧迫することから乳児と妊婦では実施できません。
(2)背部叩打(こだ)法:
背中を叩く方法です。左右の肩甲骨の間を叩きます。力を有効に伝えるために、前胸部をもう片方の手で押さえて叩きます。
4.頭を下にするか寝かす
児童でも成人でも、異物除去の時は頭を下にします。出口を下にすればものは出やすくなります。頭が下にできない場合は児童を寝かせます(004)。
引用論文**では症例を挙げています。
(1)小児の4例で頭を下にした3例は腹部突き上げ法で除去に成功したが、1例は頭を下げなかったため除去に失敗した
(2)6歳男児。足首を掴んで逆さに吊るして、喉頭鏡と指による掻き出しで異物除去に成功
(3)12ヶ月女児。背部叩法で失敗。上体を下げ、自分の口で女児の口を吸う事で異物除去に成功
(4)著者は過去に食事中に窒息したことがあり、頭を下げた体勢で異物除去に成功している
リンク
5.その他の方法(005)
(1)胸を押す:
気道内圧は腹部突き上げ法より高くなります。気道内圧は腹部突き上げ法より高くなります。胸骨圧迫と同じ方法です。
(2)背中を押す:
児童を腹ばいにして、可能なら頭を下にして背中を押します。胸骨圧迫の効果は胸を押すより背中を押したほうが高いことから考えると、とても有効な手段と思われます。この方法で除去に成功したという報告も出ています。
(3)腹を押す
腹部突き上げ法とは異なり、腹をまっすぐに下に押す方法です。児童が立っていれば効果は薄いのですが、寝ているなら十分に効果が期待できます。
リンク
*日本医師会では除去が先、119番が後です。日本赤十字社とアメリカ心臓学会のガイドラインでは119番が先、除去が後です。厚生労働省では「119番通報を誰かに依頼し」てとなっています。
**AIMS Public health 2019;6:154-9
コメント