201010_VOICE#54_ラジオ体操訓練

 
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主張
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月刊消防2020/7/1, p59


「ラジオ体操訓練」


救急救命士として現場に行くようになってから多数の負傷者がいる事故現場、心肺停止事案などいろいろな現場を経験することができました。静脈路確保や気道確保が必要な事案の頻度は自分が思っていたよりも多くなく、救急要請の多くは「頭が痛い」、「動悸がする」「足が痛い」などの内容で救急隊は傷病者の訴えなどをもとに観察を行って適切な医療機関に搬送しています。実際に救急現場で傷病者を観察することは非常に難しく、観察を行う上で必要な知識の引き出しが現場で開かないことを痛感しました。



心肺停止や外傷はそれぞれプロトコールやJPTECといった教育が確立されており、定められた内容を網羅していれば円滑な現場活動が行えます。同様に観察を手順化することもやるべき観察事項を忘れることなく行ううえでとても有効だと思います。しかし、世の中にある多くの疾患に対して1つ1つ手順化することは現実的ではなく、やはりどこから観察していくのか「観察の組み立て」ができるようになることが必要だと感じました。

 

そこで、私が1年目に一緒に勤務していた救急救命士の先輩2名が行っていた訓練が非常に良く勉強になったので紹介したいと思います。

 

訓練の名前は「ラジオ体操訓練」です。日常の救急にスポットを当て、振り返りの時間で教科書の内容を振り返ったり、小隊長として病院選定などの判断能力を養ったり、観察スキルの向上を目的にした訓練です。勤務交代後に車両や資機材の点検を行ったあとの30分程度で訓練は約10分、振り返りは約20分として旬な事例やもう一度確認したいこと、知識向上目的、判断に迷う事案などを想定付与し、日替わりで隊長役を回してきます。毎朝、ラジオ体操をやるように短時間で訓練をして習慣化することで気がつけば年間で相当数の訓練ができるという訓練です。人数が少ない場合は想定付与者が傷病者役や家族役など複数の役をこなして実施するので最低2名いれば訓練をすることができます。

私は訓練を通して、判断に迷うことや観察スキルが足りないことなどを自覚するきっかけになり、救急現場ではとっさの判断や広い視野で観察することの大切さを改めて感じました。心肺停止や外傷の訓練ももちろん大切ですがこんなときどうするのかを考える訓練も必要だと思います。まだ、自分が小隊長として判断することはありませんが、自分ならどうするのかを常に意識してこれからも一歩一歩成長していきたいと思います。

後藤尚貴(ゴトウナオキ)




所属
京田辺市消防署北部分署救急第1係

出身地
京都府京都市

消防士拝命年
平成26年4月

救命士合格年
平成26年

趣味
旅行

主張
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