210424_あなたは大丈夫? バイタルサインの基礎とTips (第5回) 意識 (北海道留萌消防組合 小平消防署)

 
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基本手技

プレホスピタルケア 2020年12月号p14-16

連載タイトル「あなたは大丈夫?バイタルサインの基礎とTips」

担当

北海道留萌(るもい)消防組合小平(おびら)消防署

 

第5回

意識

「あなたは大丈夫?バイタルサインの基礎とTips」

5. 意識

 

目次

著者

氏名:木村悠也(きむらゆうや)

年齢:28歳

出身:留萌郡小平町

所属:留萌消防組合小平消防署

趣味:DIY、キャンプ、洗車

消防士拝命:平成26年4月

 

(1)はじめに

 

「あなたは大丈夫?バイタルサインの基礎とTips」の執筆を担当することになりました、留萌消防組合小平消防署の木村悠也です。今回は「意識」についてです。

 

(2)意識とは

 

一般には「起きている状態にあること(覚醒)」または「自分の今ある状態や、周囲の状況等を認識できている状態のこと」を指します。自我と対象の区別ができている状態です。

 

 

主に「意識の覚醒度(明瞭度)」と「意識の内容」から構成されています。(001)

001

意識を構成する要素。「意識の覚醒度(明瞭度)」と「意識の内容」がある。

 

(3)意識観察

 

①呼びかけ反応の確認

 

傷病者の前額部に手を当て、橈骨動脈が触知できるかを確認しつつ、耳元で声をかけ(初めは普通に、徐々に大きく声をかける)、開眼の有無や応答反応を確認します(002)。

 

呼びかけに反応がなければ、肩を叩くまたは体を揺すり、開眼の有無や応答反応を確認します(003)。

②痛み刺激反応の確認

呼びかけに反応がない場合は、示指を曲げて傷病者の胸骨部分を圧迫する(004)か、母指等の爪床をペンライトやボールペンで圧迫して開眼の有無や運動反応を確認します(005)。

 

002

呼びかけ反応の確認。まず耳元で声をかけ反応を見る

 

003

呼びかけに反応がなければたたくなどの刺激を与える

 

004

強い刺激の与え方。胸骨部分の圧迫

 

005

強い刺激の与え方。爪の圧迫

(4)意識の評価方法

 

意識の評価方法として知られる3つのスケールを紹介します。

 

①ジャパン・コーマ・スケール(JCS)(006)

 

・JCSとは?

日本で一般に使用されており、覚醒の程度によって分類しているもので、数値が高い程意識障害が重いです。3-3-9度方式とも呼ばれています(図2)。

・メリットとデメリット

簡潔ですが、覚醒の判断材料として「開眼の有無」のみが大分類の判定基準となっているため、評価者によりばらつきが出たり、一部の患者では正確に判定できないという問題点があります。脳幹障害の評価(除皮質姿勢(007)、除脳姿勢(008))が不可能です。

 

006

ジャパン・コーマ・スケール(JCS)

007

除皮質姿勢

 

008

除脳姿勢

②グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)(009)

・GCSとは?

世界共通で使用されており、点数が低い程意識障害が重い。評価項目は大きく分けて3つ(開眼・発語・運動)あり、15点満点で最低点数は3点(深昏睡)で、8点以下は重症として扱います。

・メリットとデメリット

正確に患者の意識レベルを評価でき、脳幹障害の評価が可能ですが、3~15点の13段階と多く、医療従事者であってもマスターするには時間がかかるという問題点があります。

009

グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)

③エマージェンシー・コーマ・スケール(ECS)(010)

・ECSとは?

前述の問題点を改善する目的で開発され、評価者間のばらつきが少なく、かつ簡潔で正確に行えるという特徴があります。

・メリットとデメリット

ECSはJCSの3桁の大分類の構成を残し、小分類を工夫しています。1,2桁は2段階のみ、3桁の意識レベルは脳幹障害の表現を可能にするため、5段階に細分化しています。また、覚醒の判断材料を「開眼の有無」だけでなく、「発語の有無」や「合目的な動作」のどれか1つを観察できることと明確化し、瞬きを確認できた場合に1桁と判断するという定義も追加されています。

しかし、ECSは普及していません。救急救命士標準テキストでは、筆者が受験した当時の改訂第8版では掲載されていましたが、改訂第9版、改訂第10版では掲載されていません。ECSで評価をしても瞬時に理解できる人は少ないのが実情です。

010

エマージェンシー・コーマ・スケール(ECS)

(5)検証

今回、救急救命士の資格を持つ人(以下救命士という)を対象に、3つのコーマ・スケールを用いて模擬症例6つで意識の評価しました。

①JCS

普段から使用していることもあり、評価に相違はそれほどありませんでした。

②GCS

脳疾患が疑われる傷病者等、稀にしか使用していないことから正確に点数を把握できていない救命士もおり、点数計算が曖昧でした。

③ECS

筆者も同様でしたが、聞いたことはあるけど全く覚えていないという救命士がいました。

実際に覚えてもらい、検証しましたが3桁の症例を評価するにあたって、アルファベットが思い出せないという方がほとんどで、評価はバラバラでした。

結論として、普及の度合いが評価の正確さに直結することがわかりました。GCSについては世界標準なので覚える必要はあるのですが、覚えるのが苦手だという読者の方もいるかと思われます。011のようなGCSの覚え方がありますので、参考にしていただきたいと思います。

 

 

(6)最後に

今回、意識について執筆することで、主に評価方法について再確認することができました。読みづらい所もあると思いますが、最後まで読んでいただけたら幸いです。このような機会をいただき、ありがとうございました。

 

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