近代消防2020/11/10
「ノズルについて」
目次
著者
名前:寺脇 遼太 てらわき りょうた
所属:滋賀県彦根市消防本部
出身地:滋賀県長浜市
消防士拝命:平成26年4月1日
趣味:バイク、旅行
1 はじめに
このたび、「今さら聞けない資機材の使い方」を執筆させていただくことになりました、彦根市消防本部の寺脇遼太と申します。今回は、火災現場活動において、消防隊の基本とも言える資機材「ノズル」について今一度理解を深めるとともに、当消防本部の火災現場活動についてご紹介致します。
彦根市消防本部は、滋賀県北東部に位置する彦根市と犬上郡を管轄し、1本部1署、3分署、職員数164名(定数174名)で、管轄内約13万人の日々の安全を守っています(図001)。
この地域は、西は琵琶湖に、東は鈴鹿山系に接する自然豊かな地域で、彦根市は古くから城下町として栄え、その町並みは今も色濃く残されています。歴史的な文化財も多く、井伊家により築城された彦根城は国宝に指定され、彦根市キャラクターである「ひこにゃん」人気もあり、多くの方に観光いただいております(001,図002)。(図2)(写真1)
図1
彦根市消防本部の管轄域
001
彦根城。彦根市転載許可済。
図2
ひこにゃん。
2 消防を取り巻く現状
近年、技術の進歩により、私達消防が置かれている環境は日々変化している反面、災害件数を見ると、増加の一途をたどる救急件数に比べ、救助件数は横ばい、火災件数は減少傾向にあります。火災件数減少の要因としては、火災予防対策の充実、建物構造の強化、車両や電気製品等の安全性能向上などが考えられますが、その一方で、消火活動中における殉職者が絶えないのも現状です。これは、建物構造の強化による火災性状の変化に加え、団塊の世代の退職による組織の若年化、火災件数減少による経験値不足という、多くの消防本部が抱える問題も関係していると考えます。
3 彦根市消防本部では
当消防本部では、「如何に少ない水で、小さな火のうちに消し止めるか」を火災現場活動の主眼とし、平成22年からクアドラフォグノズルを導入、放水量を確保した延焼防止活動と、屋内進入時の活動を両立させた、効率的な火災現場活動を基本としていますが、若手職員の増加による組織の若年化は当消防本部も例外ではありません。組織拡大時の増員採用者の退職に加え、平成27年から令和4年までの8年間で30名の増員の真っ只中でもあり、職員の平均年齢は県内の平均を大きく下回っています。知識や技術をいかに伝達していくかが私達にとって喫緊の課題となっています。これらを踏まえ、今一度初心に戻り、火災現場の基本資機材である「ノズル」について考えていきたいと思います。
4 使用ノズルについて
消火活動において基本的な資機材であるノズルについて、当消防本部で使用しているものを見ていきます。ノズルには様々な災害に対応できるよう多くの種類があり、その使用用途は様々です。皆さんの本部はどのようなものを使っておられますか。そして、車両に積載しているノズルについてしっかりと理解されていますか。
大量放水が可能であり、大規模火災に適しているが、機動性は低く、放水量を抑えた活動には適さず、水損が生じやすい。
微粒子噴霧放水によるレーマン戦術を目的に開発されたノズルで、小区画耐火造に適している。水損防止に優れ、残火処理時にも有効である。その反面、放水量は少なく大規模火災には適さない。
微粒子噴霧放水時は、高温の吹き返しに注意が必要。
火災状況に応じた放水量(4段階)での消火が可能である。開閉操作や放水量の調整が容易で、屋内進入時の様々なシーンに対応した放水が可能。補助器具を取り付ければノズル保持の負担が軽減される。
それぞれの適性を比較すると、表のとおりとなります(表1)
※水損防止効果、残火処理適正については、水損を意識した取り扱いが前提。
表1
各ノズルの特性の比較(タップで拡大)
5 課題と対策
現在、様々なシーンに幅広く適応するガンタイプノズルが普及し、多くの消防本部で導入されています。しかし、全ての火災に対応しているわけではなく、消防力劣勢の大規模延焼火災や強風下での火災など多様な災害現場で、最適な資機材を選定することが私達に求められています。そのためには、資機材に対する理解は不可欠です。一言にガンタイプノズルと言えど様々な種類があり、それぞれ特性や適不適は異なります。その現場でどの資機材を使えば安全、確実な活動ができるのか、改めて、資機材毎の特性の理解と、災害に合わせた使い分けの必要性を強く感じています。火災性状や活動方針に適応した資機材を選定することから訓練を重ねるべきだと考えます。
6 最後に
今回の執筆にあたり、私自身、ノズルについて見つめ直すことができました。当たり前のように使用していた資機材ですが、それぞれ適応火災は異なり、その特性をしっかりと理解していなければ適正な現場活動を行うことはできません。更に殉職者を出さない活動のためには、資機材の理解に加え、火災性状やそれに応じた注水技術の理解が大切であると考えます。私達消防の使命は、国民の生命、身体および財産を災害から守ることですが、その大前提は、自隊の、そして自分自身の安全確保であると強く感じています。今一度初心に戻り、使用資機材について改めて理解を深めていきたいと思います。
今回の内容が皆様の訓練や現場活動の参考になれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
写真の説明がメチャクチャになってますね。1枚目のノズルがEホルダー+クアドラフォグノズル、2枚目がフォグガン3枚目が無反動管鎗+ダブコンノズル、4枚目がストリーム管鎗(ストレート)+ヴァリアブルノズルですね。