月刊消防 2021/1/1
「残念な救急班」からの脱出
目次
救急救命士を志したわけ
20代から救助隊員として毎日訓練に明け暮れ、泣いたり笑ったり。チームは一人が優れていてもいい結果が出るわけではありません。大切なのは一人ひとりの総和がプラスになることをここから学びました。平成19年7月、同期のチームメイトが非番のランニング中に道路で倒れて発見、救急搬送されましたがそのまま帰らぬ人となりました。私も搬送病院に駆け付け救急外来の前で遺族の泣き叫ぶ声が今でも忘れられません。消防士という職業は寿命が短いことは承知しています。あの非番の朝、何か一声掛けられなかったのか。何もできないままあっけなく逝ってしまったことに今でも悔やんでいます。翌年、救急救命東京研修所に志願しそして救急救命士になりました。
訓練研究からシンポジウム発表へ
救急救命士になって十数年、当時の救急班では現場活動の不適や事故などが続きいつの間にか「残念な救急班」のレッテルが貼られていました。さらに指導救命士としてやる気があるのかと注意を受けたことをきっかけに救急班を立て直す計画を決意しました。「次の全国救急隊員シンポジウムで研究発表することで皆の自信を取り戻したい」その思いからシミュレーション訓練を後輩達と研究することで教育指導ができると考えました。訓練研究を重ねて応募、平成30年まさかの採択。翌年1月、救急班全員でシンポジウムに参加し今までにない達成感と何よりも結果を出すまでの過程で後輩との信頼関係が築けたと強く感じました。その抄録が消防雑誌の目に留まり雑誌への掲載、さらにはここVOICEへ原稿を書かせてもらうことになりました。
事故や不祥事に対する取り組み
過去の事故を見てもその背景には300もの異常が潜んでいたはず。しかし、インシデントレポートはわずか数件しか報告されていないのが現状です。まずは異常に気付くところから改善するため、身の回りの救急班内からインシデントレポートを見直すことにしました。資機材の補充不足や破損、車内のゴミや汚染、申し送りの不備等を発見者にレポートを作成してもらいます。レポートを回覧することで当事者が気付き、また、報告者の問題対策への考え方が見えてきます。問題への対策を話し合うことで皆が同じ認識で安全管理する環境が築くことができたと考えています。
先のシミュレーション訓練でも若手からベテランまでが言葉を交わし、継続することでお互いを思いやるチームとなり、後輩指導の効果があったと感じています。
自分が大切にしていること
常に自分自身の心や体のコンディションを維持すること。自己を管理することでチームへの思いやりや安全管理につながると考えています。長い間、この仕事を理解し支えてくれた家族に感謝するとともに、残された時間、事故なくいい仕事を続けることがここまで自分を育ててくれた先輩や同僚、後輩達に恩返しできるのかなと思っています。
プロフィール
氏名:佐藤玲緒奈(サトウレオナ)
所属:秋田県大曲消防署
出身地:秋田県大仙市花館
消防士拝命年:平成4年
救命士合格年:平成21年
趣味:水泳
コメント