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210619救急隊員日誌(201)「記念すべき 救命第1号」 

月刊消防 2021/02/01
月にいきたい

「記念すべき 救命第1号」

大阪ある百貨店。さてどこに並ぼうかなとレジを見渡すと、カゴに大量靴下を入れた同年代男性に目が止まった。こんなカゴいっぱい靴下を買う人っているんだな。どこレジも混み合っていだが、興味本位でそ男性後ろに並ぶことにした。持ち前気さくさで、「すごい量靴下ですね。」と話しかけみる。「これね、私が教えるサッカーチーム子供達へ贈るプレゼントなんですよ。」と教えてくれた。なるほど、それでこ量か。それに比べて私カゴ中には寂しいもんだ。誰かため買い物と、自分ため買い物。カゴ重さが人生重さを表しているようで、ちょっと恥ずかしかった。

「ドスン!」「ちょ、ちょっと!大丈夫ですか?」普段あまり聞かない音が前から聞こえたで、目線を買い物カゴから前に写してみると、あ靴下おじさんが倒れていた。「分かります? 分かりますか!」何度か呼びかけたが返事はない。薄手ジャンバーを頭下に敷いて、「これ、救急車ですよね。」と周りお客さんに話しかけてみたが、誰も関わりたくない様子で、並んだ列から動こうとはしてくれなかった。「あ・・。」「何かありますか?」声をかけてくれたは3人組若い女性たち。「AED分かります?」「近くにあるはずなんで持って来てください!」「あと、私地元じゃないんでこ場所がうまく説明できない。救急車呼んでくれませんか?」女性たちはすぐに行動してくれた。私は必死に胸を押した。講習会で習った通り、人形と同じ感触、同じ力加減。大丈夫。これで合っているはずだ。人工呼吸は・・・。ちょっとできない。ごめんおじさん!
 すぐにAEDは到着した。店員さんも手伝ってくれて3人がかりで服を脱がした。点滅するAEDボタン。これも講習会と全く同じ。「押しますよ!離れてください!」ボタンを押すと、体全体がくねるような動きをした。電気ショックってこんなに動くか・・。【胸骨圧迫と、人工呼吸を行なってください(AED音声)】そうだ。まだ止めてはいけないんだ。胸を押さなければ・・・。1、2、3、4・・・。「体動いてますよ!」えっ?? 店員さんに教えてもらうまでは全く気づかなかった。確かに男性は膝を曲げたり伸ばしたりしている。手も動いて、目は? 開いている!「大丈夫ですか!」虚ろな目だが、自分で起き上がろうとしている。「今、救急車呼んでいるんで!こまま横になっていましょう。」すると男性ははっきりとした声で「はい、分かました。」と答えてくれた。救急隊はすぐに到着した。警察も来た。名前やら住所やらいろいろ聞かれたが、実はあんまり何を話したかは覚えていない。
 こバイスタンダー、私ではなく親父である。いとこ結婚式に招待されて、私も一緒に大阪に行っていた。帰りは別々交通機関だったで、時間を持て余した親父は、暇つぶしに百貨店に立ち寄っだそうだ。消防団で毎年受講する心肺蘇生法講習会が役に立ったと何度も話してくれた。靴下おじさんから手紙によると、実はこ2ヶ月後に娘が結婚式をする予定であり、無事に退院して出席することができたそうだ。

 私は消防勤続20数年。いまだに救命した経験はない。救命した件数を記録しようと思って手帳に専用ページまで作ったに、いまだに白紙である。なにこ親父は、あっという間に救命第1号を記録してしまった。そんな話を親父と笑いながらしていると、最後に親父は私にあっさりこう言った。「お前が直接救命する必要はねえよ。お前お陰で結果的に誰かが助かればいいんじゃないか?」「息子が救急救命士だから俺は救急講習を受講したんだ。だからこ救命はお前お陰でもあるんだ」と。
 こうして私記念すべき救命第1号が手帳に記された。救命場面にいつ遭遇するかはわからない。もしかしたら無いかもしれない。それでも構わない。そ場面に出くわした誰かためになるように、これからも自分仕事を積み重ねていきたいと思う。

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