Count per Day
  • 7532018/4/15からの閲覧数:

211128今さら聞けない資機材の使い方 (98) 保温材の適切な選び方 川越地区消防局 住吉結衣

近代消防2021/7, p78-80

今さら聞けない資機材の使い方

保温材の適切な選び方

住吉結衣 鈴木篤史 松本真児 内田一輝 爲水航平

川越地区消防局

筆者

 
 
 
 

名前:住吉 結衣(すみよし ゆい)

所属:川越地区消防局

出身地:栃木県

消防士拝命年:平成27年

救急救命士合格年:平成27年

趣味:ヨガ

1. はじめに

体温管理は低体温症例はもちろん、ショックや熱傷症例、分娩など優先度の高い処置です。当消防局の救急事案の中で、2020年はショック症例が168件、産科事案にあっては5件あり、積極的な保温処置が必要不可欠です。

救急隊が保温に使うのは毛布が主ですが、新生児などでは滅菌アルミックシートも使われます。今回私たちはこの滅菌アルミックシートに着目し、毛布との比較や、毛布の上にさらに滅菌アルミックシートを巻いた場合の保温効果を検討しました。

2.保温効果の検討

(1)材料

水量2.6Lの湯たんぽ、滅菌アルミックシートのみ(金色が外側、銀色が内側)、難燃毛布(アクリル製)、温度計(001)。

001
使用した材料


(2)方法

湯たんぽを様々な条件に放置し、湯たんぽ内の水温を継時的に測定しました。

被覆:なし、毛布、アルミックシート、アルミックシート+毛布、の4種類(002)

水温:20℃、30℃、40℃の3種類。それぞれ低体温、平熱、高体温を模したもの。

環境温:4℃、22℃、30℃の3種類。それぞれ冬日、普通日、猛暑日を模したもの(003,004)。

水温測定:実験開始0分から20分まで5分おきに水温を測定しました。

002
左から毛布、アルミックシート、アルミックシート+毛布

003
冬日。気温4℃。水温20℃。コントロール

004
冬日。気温4℃。水温20℃。3種類

(3)結果

005-013に結果を示します。

環境温や水温に関係なく、毛布とアルミックシートでは同等の保温効果が得られました。一方、毛布とアルミックシートの併用では、冬日相当の環境温4℃では両者の上回る保温効果が得られたものの、環境温22℃と環境温30℃では他の2種類との違いは認めませんでした。

3.うつ熱の検討

次に、ヒトを対象に、保温材を全身に巻くことによって体温がどう変化するか、使用感覚も含めて検討しました。

(1)対象

当消防本部職員25名を対象とし仮眠室において実施しました。仮眠室の平均室温は21.6℃、平均湿度は61.6%でした。

(2)方法

滅菌アルミックシート(125cm×225cm)、難燃毛布(アクリル製)、電子体温計を用いました。

被覆は3種類。滅菌アルミックシートのみ(金色が外側、銀色が内側)、毛布のみ、毛布を巻いた外側に滅菌アルミックシートを巻く、です。

体温は被覆前、被覆5分後、同10分後、同15分後、同20分後の5回、仰臥位で利き腕の腋窩温を測定しました。

(3)結果

014に被験者25人の平均体温上昇値を示します。

アルミックシートのみでは平均体温上昇値は持続的に上昇し続け、20分後に最大0.5℃上昇し25人中、一番上昇した人では20分後に最大1.5℃上昇しました。滅菌アルミックシートは保温性、密閉性が高く雨風に強いですが、長時間にわたり保温する場合、内部に結露が発生しやすく、体動により隙間が生じるため放熱しやすいということが分かりました。実際に被験者の中でも、10分程度経過した時点で発汗し内部に結露が生じた結果、体温が軽度下降した例もありました。

 毛布のみの平均体温上昇値は他の2つの保温方法と比べ、開始5分後の上昇率が高く、20分後に最大0.5℃上昇しました。25人中、一番上昇した人では20分後に最大1.4℃の上昇がみられました。毛布は使用頻度が高く、使い慣れているため容易に設定でき、大規模災害時用として備蓄していることが多いため、多数傷病者発生時にも対応することができます。また、通気性が良く、伸縮性があるので身体への接触面積が大きくなり密着度も高くなります。しかし雨風に弱いという欠点があり、現場環境によっては適さないことがあります。

 毛布と滅菌アルミックシートの併用では平均体温上昇値は20分後に最大0.6℃上昇し、25人中、一番上昇した人では20分後に最大1.4℃上昇がみられました。

4.考察

3つの保温方法の利点と欠点は表の通りです(表1)。

保温効果についてはアルミックシートと毛布は同等でした。この二つを併用した場合、当初の予定では両者の欠点を補いつつ効果的に保温できると想像したのですが、検証の結果では外気温が低い場合に保温効果が上がるだけで、室温や夏日に相当する外気温では両者を上回る保温効果は認めませんでした。さらに生体を用いた検証ではアルミックシート単独や毛布単独より高い体温上昇を認めました。これらのことから、二つの保温材を安易に重ねて使うことは適切ではなく、外気温が低い場合にのみ併用を考慮すべきと考えます。

当消防局の傷病者接触から病院到着までの平均時間は33.8分であり、低体温を放置すれば出血傾向や不整脈から心肺停止に陥る可能性があるため早期の保温処置が必要不可欠です。傷病者の状態に加え置かれた環境を考慮し保温材を選択しましょう。

表001

3つの保温方法の利点と欠点

5.結論

1)保温材として滅菌アルミックシート、毛布、両者の併用の3通りで保温効果とうつ熱効果を検証しました。

2)滅菌アルミックシートと毛布は同等の効果でした。両者の併用は環境温が低い場合にのみ単独使用を上回る効果が得られましたが、またうつ熱を起こす危険性も高くなりました。

3)保温材の適切な選択について考察しました。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする