近代消防2021/8/10 2021年9月号)p58-59
今さら聞けない資機材の使い方 (100-1)
新型コロナ対策(2)救急隊員を守る
A
ニトリルゴム手袋から作るソックスカバー
熊本市消防局東消防署 上村浩嗣
目次
著者
氏名 上村 浩嗣
読み仮名 うえむら こうじ
A_uemura.JPG
所属 熊本市消防局 (東消防署警防課2部託麻出張所)
出身地 熊本市
消防士拝命年 2002年(平成14年)4月1日
救命士合格年 2013年(平成25年)
趣味 海釣り(天草でマイボートにて、タイラバやエギングをしています)、ランニング、料理作りなど
1.はじめに
熊本市消防局において、新型コロナ感染症は多数発生しており、救急出場前には下の感染防護衣をはじめ、標準予防策を装着の上出場しています。靴下についても、感染防止のため、出場前にソックスの上から手軽に装着でき、経費的にも安価で、廃棄可能であるものを探していたところ、ニトリルゴム手袋を使用する方法を思いつきました。
2.方法
最初はそのまま装着していました(A_001)、改良の結果、手袋を裏返すような形に足先を挿入する(A_002)と、ゴムの伸縮性によりかかとまで入れ込むことができるようになりました(A_003,A_004)。両足で10秒程度で装着が終了します。
筆者はの手袋はMなので、足に装着したサイズもMです。私の足は実測25.5cmであり、Lサイズにするとゆとりができるので、サイズを上げることで、装着がしやすくなります。
A_001
はじめはそのまま挿入していた
A_002
現在は手袋を裏返すように挿入している
A_003
完全に足を覆うことができる
A_004
かかとの状態
3.検証
約2ヶ月間で出場した救急事案の118件、隊員3名分の354回を検証対象とし、装着における成功率と活動を行った後の成功率の2つを検証しました。破れを認めなかった場合を成功とし、どちらか一方でも破れを認めた場合を失敗としました。その結果、出場前に装着に失敗したケースは9回で、装着における成功率は97%でしたた。
次に、救急事案118件中、靴を脱ぐ必要のなかった64件を除いて、実際に靴を脱いで活動を行った54件162回のうち、失敗したケースは17回で、活動における成功率は90%でした。なお、破損の原因については、廊下や階段における床面のささくれや小石など、鋭利な物質との接触が主なものでした。
ソックスカバーについて、家族や傷病者から、活動中、指摘されるようなことは一度もありませんでした。「汚いので靴で入室してください」と言われた例であっても、ソックスカバーをしているので安心して入ることができました。また、警察官との連携の中で、現場保存が必要な社会死状態の傷病者と接触する際にも有効でした。
A_005
装着における成功率
A_006
活動における成功率
4.考察
今回検証したニトリルゴム手袋での感染防止対策は、装着や活動中における失敗例も少数認めるものの、傷病者の搬出においても十分な耐久性、伸縮性、防水性が認められました。浴室内での活動や嘔吐物、便尿失禁など、不意な汚染を防ぎえた事案は多数あり、搬出時に容易に脱衣し廃棄できる点など、現状では最善の対策です。
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