220620救急隊員日誌(211)「メンドウクサイ」と「はい!喜んで」    

 
  • 236読まれた回数:
救急隊員日誌
月刊消防 2021/11/01, p71
 
 
 
空飛ぶクルマ
 
 
 
 
 
 
『「黒板を写すのがメンドウクサイ!」「漢字を書く、計算するのがメンドウクサイ!」「外で遊ぶのがメンドウクサイ!」子供達の中には、こんなことを言う子がいます。面倒くさい気持ちのまま勉強したり、外遊びしたりするのです。これでは、毎日、イヤイヤ勉強したり、遊んだりする癖をつける勉強をしているようなものです。一方、ある居酒屋では、客の注文を受けると「はい!喜んで」と応対します。マニュアル通りということでしょうが、客としてはイヤイヤ注文を受けられるよりは、気持ちがいいものです。働いている人にとっても、「はい!喜んで」と言って働いているうちに、仕事が楽しくなってくるかもしれません。楽しく働ければ、これほど幸せなことはありません。
 
私(先生)は、子供を教育する上で大切なことの一つは、子供を「その気」にさせることだと思っています。その気になって取り組んだことは、身に付くだけでなく楽しいものです。学校は、将来への準備をさせる場です。子供達が将来大人になって様々な職業に就いたとき、イヤイヤ仕事をするのは辛いことです。どうせやるなら、イヤイヤでなく楽しくやれた方がいいに決まっています。
 
私(先生)は、子供達が小学校のうちから「メンドウクサイ病」にかからないようにしたいと思います。何事にも「はい、喜んで!」と取り組める子供に育って欲しいものです。学校としても心して取り組んでいきたいと思います。ご家庭でもご協力ください。』
 


このプリントを読んで、ある隊員を思い出した。「やる気」が感じられず、訓練や救急現場で消極的。「消防本部内の救急救命士選考試験を経て、7ヶ月間研修所で勉強し、救急救命士の資格取得がゴールである」という考えを持っている。

その隊員と機関員と私で救急現場に出動した。通報内容は「60歳男性。物音がするので見に行くと、倒れており呂律がまわらず、左半身が動かないです」。現場に到着すると、構音障害、左半身麻痺で、発症時刻も明確である。脳卒中を疑い、脳神経外科対応の病院へ搬送した。しかし傷病名は「急性大動脈解離」で、心臓血管外科がある病院へ「転院搬送」となった。私にとってこの事案は、傷病名を間違ったことではなく、対応できる病院への搬送ができなかったことでショックを受けた。救急救命士資格取得はゴールではなくスタートである。資格取得後にも勉強すべきことが山ほどある。

その隊員に、どうやって「メンドクサイ」ではなく、「はい!喜んで」という気持ちにさせるか。「その気」にさせる指導方法を考えている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました