きっかけは昨年度の2事案。「60歳男性、左肩から左腕に痛みがあります。」との傷病者を整形外科対応の病院へ搬送したところ、「急性心筋梗塞」で転院搬送となった。炎天下の屋外で農作業をしていた傷病者の夫から「68歳女性、熱中症のような状態です。」との通報内容で、循環器内科のない内科対応の病院へ救急搬送したところ、糖尿病の現病歴があり、「無痛性心筋梗塞」で転院搬送となった。両事案とも心疾患を疑っていなかったため、心電図も装着できていなかった。搬送先医師からの助言で、「両事案とも明らかなST上昇を認めていたので、救急車で心電図を装着していたら病態が疑えていたかもしれないですね。」と言われたという。救急隊員にとって反省させられ悔いが残る2事案となった。
その救急隊員とは、今年から勤務が同じであったため、出動が多い日でも、時間を作って毎当務30分から40分継続的に心電図の勉強を行った。私も教えるために復習を兼ねて勉強する。まずは基本的な波形から勉強していき、徐々に応用の勉強を行った。勉強を重ねていくうちに、救急隊員から「心電図の勉強が楽しくなってきたので、心電図検定3級を受けようと思います。」と言ってきた。心電図検定3級合格という目標設定をしたのである。
「目標設定(Goal setting theory)」の歴史をひもとくと、ハーバード大学卒・メリーランド大学経営学部名誉教授で心理学者のエドウィン・ロック氏を中心とするチームが1960年代に研究を開始し、「より具体的で野心的な目標が、簡単でよくある目標よりも、より効果や成長を促すことができる。」と発表したところから、現在に至る流れができた。メリーランド大学のエドウィン・ロック教授とトロント大学のギャリー・ラッサム教授による研究では、目標を設定することでやる気が向上し、自尊心及び自信も高まることが示されている。この効果は、行動の指針が定まり、自分が何をすべきか明確になることから得られるものである。また、精神科医の樺沢紫苑氏は、設定した目標に向かって努力するプロセスにおいてドーパミンが脳内に分泌され、モチベーションが維持されやすくなるとしている。さらに、設定した目標を達成することによって、ドーパミンは再び大量に分泌され、その後もやる気を継続できる。このように、目標を設定することは科学的に重要だと言える。
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