Count per Day
  • 1102018/4/15からの閲覧数:

221027最新救急事情(227)研究によってばらつくアドレナリンの効果

月刊消防 2022/04/1号 p50-1

最新救急事情(227)

 
生存率は増えるが神経学的良好者は増えない

生存率は増えるが神経学的良好者は増えない

 
 

今回から再び月刊消防に連載することになりました。これから毎月どうぞご覧ください。


さて、心停止の時に必ず登場するアドレナリン。ガイドライン2020で消滅するかと思っていたらしぶとく生き残った。大規模試験の結果を見ると生存率向上には有効なようだが、寝たきり人間を増やすだけのような気もする。今回はアドレナリンに関する最新の文献を紹介する。

生存率は高くなる

まずは今回報告する論文のうちで最も信頼できそうな論文を紹介する。2014年から2018年にかけてイギリスで行われた研究1)で、前向き、無作為研究である。対象患者は病院外心停止8014例。アドレナリン1mgを投与する群と、生理食塩水1mLを登用する群に分けた。第一の評価点は30日後の生存率、第二の評価点は生存入院率、生存退院率、3・6・12ヶ月後の生存率、神経学的後遺症の程度、6ヶ月後の生活の質である。
結果として、アドレナリン投与群は30日後の生存率が3.2%であったのに対して非投与群は2.4%で有意差あり。生存入院率、生存退院率、3,6,12ヶ月後の生存率もアドレナリン投与群が有意に高かった。神経学的後遺症の軽度な患者の割合は有意差がなかった。
これに対して韓国からは、アドレナリンは生存率を低下させるという論文2)が出ている。後ろ向きの研究である。対象は背景を一致させた、使用群1084例、非使用群も1084例。生存退院率はアドレナリン使用群で有意に低かったが、神経学的後遺症の少ない患者数は有意差を認めなかった。また除細動不適用の心電図は系だった場合は、アドレナリン投与群の方が生存退院率が低かったが神経学的後遺症の少ない患者数は有意差がなかった。この韓国の論文は後ろ向き研究で症例も少なく、また背景を一致させる小細工もしているので、イギリスの論文の方が信頼できるだろう。

使うタイミングは早い方がいいのか

ガイドライン2020はアドレナリンの早期使用を勧めている。アメリカのピッツバーグからも同様の論文3)が出ている。研究対象は2011年4月1日から2015年6月30日までに病院外心停止を起こした患者4万1079例である。年齢の中心値は67歳。65%が男性であった。心電図解析時に除細動可能であった症例のうち75.4%、除細動不可能であった症例のうち90%がアドレナリン投与を受けていた。除細動可能群でも不可能群でも、現着からアドレナリン投与までの時間が5分以内であった群で最も生存退院率が高かったが他の群と有意差は認めなかった。アドレナリン投与と生存退院率の関係は、アドレナリン投与が1分遅れるごとに生存退院率は5.5%低下した。同様に除細動不可能群では4.4%減少した。神経学的に良好な生存退院率もアドレナリン投与が遅れるにつれて低下する。
時間的効果はないという論文も出ている。琉球大学からの論文4)である。日本の心停止データベースに登録されている2011年から2017年までの症例での検討である。検討項目は1ヶ月後に神経学的異常が軽度な生存者の比率である。対象は1万965例。平均年齢は75.6歳、男性は59.8%である。アドレナリン投与は患者の取り付きから平均3.5分。で、ガイドラインに示されている3分以内を守っているのは約半数であった。背景因子を補正した比較では、アドレナリン投与が早くても遅くても1ヶ月後に神経学的に良好な患者の割合に有意差は見られなかった。

使う量は1mgでいいのか

効果があるにしても、一体どれくらいの量が一番効果が期待できるのだろう。フランスから論文5)が出ている。対象は2011年7月から2018年末までにフランスの心停止統計に登録された症例のうちアドレナリンが投与されていた症例で、それらを投与量によりグループ分けをしている。
検討対象となったのは2万7309例。平均年齢は68歳。心室細動の割合は11.2%であった。神経学的後遺症がないか軽度の症例の割合は2.2%であった。アドレナリンの投与量が多いほど神経学的に良好な症例の割合は低下した。おなじく投与量が多いほど生存退院率も低下した。

結局のところ

アドレナリンを使うと(1)生存率は高くなるが(2)神経学的良好の患者の割合は変わらない。つまり寝たきり人間を増やすことになる。(3)最適な量と投与時期は今だに不明である。アドレナリンが発見されて100年以上経ってもまだ不明なのだからこれから判明するとも思えない。

文献

1)Health Technol Assess 2021 Apr; 25(25):1-166
2)Yonsei Med J 2022 Feb;63(2):187-94
3)JAMA Netw Open 2021 Aug 2; 4(8):e2120176
4)Perfusion 2021 Jun 12; 2676591211025163
5)Eur J Emerg Med 2020 Feb 1; 29(1):63-9

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする