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211003最新救急事情(221-2) 新型コロナワクチンの動向

プレホスピタルケア 2020/04/20日号 p87

最新救急事情(221-2)

新型コロナワクチンの動向

日本でも新型コロナワクチンの接種が始まって2ヶ月以上が経過した。最初は限られた医療機関の職員だけだったが、この原稿が出る頃には高齢者への接種も開始されているはずである。私自身は2021年4月8日にファイザー製ワクチンの接種を終えている。また世界的に見ると、第三相試験を飛ばして臨床導入を決めたロシアのワクチン「スプートニクV」がとても優秀であること、中国製のワクチンの効果が劣ることなどが示されている。今回はこれらワクチンの話題である。

ワクチンが効く仕組み

本題に入る前に、ワクチンが効く仕組みについておさらいしておこう。異物が体内に入ると、生体は入ったものを異物と認識し排除する。排除方法は2つあり、異物があるとの情報を受けた好中球や単球が異物の入った細胞を殺したり(細胞性免疫)、抗体である免疫グロブリンを細胞や異物の表面に付けることで破壊したり(液性免疫)する。この後者の方法では、生体は一度侵入してきた異物の情報を覚えており、2回目に侵入してきたときには1回目の設計図に基づき免疫グロブリンを迅速かつ大量に作ることができる。この仕組みを利用し、人為的に異物を体に入れて抗体を作っておき、来るべき異物侵入に備える。この人為的な異物がワクチンである。

mRNAワクチン

ワクチン開発の先頭を走ってきたファイザー社とモデルナ社のワクチンは脂肪製剤に包んだmRNA (メッセンジャーリボ核酸)を体内に入れるものである。mRNAとは核内のDNA(デオキシリボ核酸)から遺伝子情報を写し取りゴルジ体へ情報を渡す遺伝子である。この2社とも新型コロナウイルスが作るスパイクタンパクの遺伝子情報をワクチンとして用いている。

mRNAワクチンが筋肉内に投与されると、mRNAは筋肉細胞内に移行し、直ちにスパイクタンパクが作られる。スパイクタンパクは細胞の中で異物と認識される、細胞から「異物が入った」とのシグナルT細胞に向けて発せられ、T細胞が中心となって細胞は殺される(細胞性免疫)。次いで死んだ細胞から流れ出たスパイクタンパクはそれ自体が異物と認識され、免疫グロブリンが作り出される(液性免疫)。このように細胞性免疫と液性免疫の両方が活性化することで、ファイザー社製もモデルナ写生もワクチンの有効率は95%という高い効果を示している。
なお、モデルナ社ワクチンは-20℃、ファイザー社ワクチンに至っては-80℃で保管しなければならない。私はmRNAが分解されやすいから超低温が必要なのだと思っていたが、識者によるとmRNAを包み込む脂肪製剤の安定性に起因するのではないかとのことである1)。

アデノウイルスベクターワクチン

アストロゼネカとロシアのスプートニクVがこのタイプである。アストロゼネカ社のワクチンはチンパンジーのアデノウイルス遺伝子に新型コロナウイルスのスパイクタンパクのmRNAを埋め込んである。だから、ファイザー社との違いはmRNAを油で包むか別のウイルスに運ばせるかの違いでしかない。

注射された新型コロナmRNA入りアデノウイルスが体内に感染すると、アデノウイルスによって持ち込まれた新型コロナmRNAによってスパイクタンパクが作られる。その後はmRNAワクチンと同じく細胞性免疫と液性免疫が誘導される。

問題は、アデノウイルスに対しても免疫が成立することである。2回接種する場合、同じアデノウイルスを使っていると、1度目は感染が成立しても2度目は感染させられない可能性がある。アストラゼネカの有効率が63%と、ファイザーやモデルナの95%に大きく劣るのはこのためと考えられる。

また欧米諸国では血栓症の発生が問題となった。ファイザーのワクチンでは問題になっていないことから、アデノウイルスが関係している可能性が指摘されている。

スプートニクVの衝撃

2021年2月初め、衝撃的なデータが発表された。イギリスの権威ある医学雑誌ランセットが「ロシアのスプートニクVの有効性は91.6%である」発表したのである2)。スプートニクVといえば、第1相試験はたった20人、第3相試験をすっ飛ばして薬事承認し国民に接種を開始した悪名高いワクチンである。調べるとこの91.6%という数字自体はロシアから2020年11月に発表されていたのだが、その時には眉唾と思われていたらしく話題にならなかった。

スプートニクVは1回目と2回目で埋め込むアデノウイルスの種類を変えており、アデノウイルス自体への免疫反応を避けることで高い有効性を得ている。スプートニクVの利点は高い有効性だけではない。アデノウイルスベクター技術というありふれた技術が用いられているため研究費が安く、そのため2回接種で薬剤費2000円という格安で提供できる(ファイザーは4000円、モデルナは5000円から7500円)。さらにアデノウイルスを生かしておくだけなので普通の冷蔵庫に保管可能である。報道によると、医学雑誌ランセットの発表前は東欧や中東、南米など限られた国だけに供給されてたが、ランセット発表後はワクチン確保に苦労しているEU諸国が興味を示すようになったとしている。

私が生まれた頃、小児麻痺(ポリオ)が大流行した。私の義理の兄も片足に麻痺が残っている。この大流行の時に日本はロシアの前身であるソ連からポリオワクチンを緊急・大量に輸入した。私や私の兄の足がちゃんと動くのはソ連のおかげかも知れない。

中国産はよくわからない

中国産のワクチンはシノファームが新型コロナウイルス不活化ワクチンを作っており、中国と縁の深い国で使われている。だがその効果は国によってまちまちで、とても信用できる代物ではない。中国産のワクチンは他にも4種類ほど市場に出ているようだが、その中身を含めてデータが示されていない。日本国内で使われることはないだろう。

文献
1)https://www.rnaj.org/component/k2/item/856-furuichi-28
2)Lancet 2021;397: 671-81

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