月刊消防 2022/06/01, p78
月刊消防「VOICE」
過去に受けた教育が正しいとは限らない
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220710救急活動事例研究 56 単管パイプが車内の男性を貫通した事故 丹羽広域事務組合消防本部丹羽消防署 佐橋章則
近代消防 2021/11/10 (2021/12月号) 救急活動事例研究 56 単管パイプが車内の男性を貫通した事故 丹羽広域事務組合消防本部丹羽消防署 佐橋章則 著者 読み仮名 さはし あきのり 名前 佐橋 章則 所属 丹羽広...
過去に受けた教育が正しいとは限らない
消防の業務にとって『体力』は必要不可欠。これは消防関係者の共通な認識ではないでしょうか。消防職員には専門的な知識・技術が必要であり、ここに経験を積み重ねる事によって消防人として成熟していきます。体力はこれらの工程を支える基本であり、消防職員にとっては大前提の要素といえます。
ここでいう体力とは、現場活動を支える身体的な力のことであり、火災や救助現場のみならず救急現場であっても必要不可欠です。
では、体力をいかに身に付けるか(又は部下に身に付けさせるか)、という話です。昔はよく体力と根性の錬成をひとくくりにして教育されていたことを思い出します。『さあ、今から全員で腕立て伏せ100回だぁ。やりきるまで終わらないぞ。』といった具合でした。ところが今この方法を用いると、ハラスメントの問題が顔を覗かせますね。『上司が部下に過度のトレーニングを強要・・・』なんて話をよく耳にします。近年では、体力と根性を同時に鍛える教育法はハラスメントの温床となりとてもリスキーです。
私は以前、体力錬成について若手を指導するにあたって、色々と勉強した時期がありました。学ぶうちに、単純に身体的能力のみを強化する場合、根性の類はさほど必要無い事を理解しました。当時、私が学んだのは上級食育指導士やスポーツ食育アドバイザーという分野でしたが、そこには私達消防人の知らない体力錬成の常識が沢山あることに驚きました。体力向上と根性論を同一のものとして捉える教育方法がいかに非常識であるかを淡々と教えられたのです。端的に言えば、身体の強化は正しい食事・適切な運動・十分な休息をバランス良く体に取り入れることでとても簡単に手に入ります。決して、歯を食いしばって乗り越えなければ辿り着けない領域ではありません。
ここで気付かされたのが、『ああ、自分は消防のプロではあるかもしれないが、トレーニングのプロではないのだな。』という事です。自分自身が根性論が大好きで自身を痛めつける様な過酷なトレーニングを実践する事はその人の自由です。しかし、部下の体力を向上させるために実践するトレーニングは根性論では駄目。トレーニングの世界における常識を蔑ろにしてはいけないのです。
体力錬成を例に挙げましたが、どの分野においても部下を教育する場合、まずは教育者が教育すべき内容と目的を明確に理解する必要があります。その上で、目的に沿った正しい教育方法を教育者自身が学ぶ事をしなければなりません。教育者が過去に受けた教育方法が正しい教育方法とは限らないし、古い教育方法はむしろ今の時代には合わない事が多いのです。
教育者などと言っても、たまたま部下より少しだけ早くこの職業に就いて知識・技術を学んだだけの平凡な人間です。このことをしっかりと理解しなければいけません。人間、いくつになっても日々精進という事ですね。
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