230308救急活動事例研究 63 心室細動をきたしたブルガダ症候群の 1 症例 多野藤岡広域市町村圏振興整備組合消防本部 福島健太

 
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症例

近代消防 2021/07/11 (2022/8月号) p88-90

救急活動事例研究 63

心室細動をきたしたブルガダ症候群の 1 症例 多野藤岡広域市町村圏振興整備組合消防本部 福島健太


・名前 福島 健太
・読み仮名 ふくしま けんた
・所属 多野藤岡広域市町村圏振興整備組合 藤岡消防署
・出身地 群馬県藤岡市
・消防士拝命年 平成30年(2018年)
・救急救命士合格年 平成28年(2016年)
・趣味 キャンプ、フリースタイルスキー

 

心室細動をきたしたブルガダ症候群の1症例

福島健太

多野藤岡広域市町村圏振興整備組合消防本部

 

目次

はじめに

ブルガダ(Brugada)症候群は若年から中年男性に多く、特発性心室細動(VF)を引き起こして突然死する可能性がある疾患である。心停止の初発年齢は平均39-48歳であり、多くは20-65歳で起こる。突然死の家族歴を有することがある(日本では12~14%)。症状はVFや心肺停止蘇生の既往、失神、めまい、苦悶用呼吸、動悸、胸部不快感などがあり、安静時、就寝中、夕食や飲酒後などの副交感神経緊張状態で出現しやすい。発熱時や運動中に発症することもある。東アジアで比較的有病率が高く、日本では成人の約1%に「ブルガダ心電図」といわれる特徴的な心電図を認める。

今回私はブルガダ症候群によりVFをきたしその後蘇生した症例を経験したので報告する。

症例

28歳男性。

[既往歴]

アトピー性皮膚炎、真珠腫性中耳炎、喘息

[家族歴]

祖父がペースメーカー埋め込み術を受けている。突然死の家族歴はない。

[現場活動]

某日16:01、自宅でテレビを見ていたところ卒倒した。意識なし、呼吸ありとの通報内容で通報者は父親であった。救急隊3名と救助隊3名で出場した。

車内では、「28歳の男性が心肺停止。何が原因だろうか。」「病院まで5分ほどの距離なので早期現場離脱で活動しよう」と会話をした。

現場到着時、家族は慌てておりバイスタンダー心肺蘇生はなく心肺停止状態であった(001)。観察後すぐに心肺蘇生を開始した(002)。卒倒直前の状態や既往、家族歴から卒倒を疑えるようなものはなく原因検索を続けた活動が病院まで続いた。

接触時から除細動時の心電図波形を003に示す。初期波形はVF、除細動を一度実施しその後2回の波形確認では無脈性電気活動(PEA)であった。接触から8分後に自己心拍が再開した(004)。血圧は161/130mmHgとなり、その3分後に自発呼吸が出現した。

接触から自己心拍再開までのバイタルサインを表1に示す。車内に入ってからは特定行為は中止し人工呼吸のみ継続で病院へ搬送した(005)。

病院到着時にも人工呼吸の処置のみでその他の変化はなく医師引き継ぎとなった。病院到着時の状態を表2に示す。

 

   

001

再現写真

家族は慌てておりバイスタンダー心肺蘇生はなく心肺停止状態であった

 

002

再現写真

観察後すぐに心肺蘇生を開始した

 

003

接触時から除細動時の波形

 

004

自己心拍時の心電図波形

 

表1

接触から自己心拍再開までの観察結果

 

005

再現写真

車内に入ってからは特定行為は中止し人工呼吸のみ継続で病院へ搬送した

 

       

 

 

表2

病院到着時の状態

[院内経過]

入院後経過を表3示す。入院13日目に肺塞栓症による呼吸困難を発症したがヘパリン投与で症状は消失した。入院18日目の冠動脈造影検査では冠動脈に有意な狭窄は認めず、左心室収縮能も良好であった。

その後、予後調査で本人と面会し、転院搬送後の経過を聞いた。本人によると発症2ヶ月後にペースメーカー植込み術を受けた。また、卒倒の1,2カ月前の定期健診で心電図が要観察とあった以外、自覚症状等はなかった。

 

表3

入院後経過

考察

ブルガタ症候群で見られる心電図の特徴を006に示す。12誘導心電図右胸部でこぶ型ST上昇が必要条件である。こぶ型ST上昇については、安静時、または薬剤負荷を加えたものやそうでないものどちらも含み、また診断者によってはサドルバック型の両方を含めている。

本症例では病院到着時(007)および入院3日目(008)の心電図でこの特徴を示している。

診断はこの心電図所見に加え、表4に示す既往歴によって行う。先ほどの心電図に加え、臨床歴としてAからDの1項目以上の症状が確認できるとブルガダ症候群と診断される。治療はメースメーカーの植え込みが唯一の手段である。

ブルガダ症候群特有の心電図波形は安静時に観察されるものが多いため、救急隊が現場で心電図上からブルガダ症候群と判断するのは困難である。しかしこの症候群の存在は知っておいてもいいと考える。既往歴、家族歴の聴取と確実な心肺蘇生をして搬送することが大事である。

 

006

ブルガダ症候群で見られる心電図波形

 

 

007

病院到着時の心電図波形

 

 

008

入院3日目の心電図波形

 

 

表4

診断基準

結論

1)ブルガダ症候群によりVFをきたしその後蘇生した症例を経験したので報告した

2)ブルガダ症候群は若年から中年男性に多く、本症例でも「ブルガダ心電図」といわれる特徴的な心電図を認めた

3)既往歴、家族歴の聴取と確実な心肺蘇生をして搬送することが大事である

 


ポイントはここ

ブルガタ症候群は以前から「ぽっくり病」と言われていたもので、上記の報告にある通りアジア人に多い。典型例は全人口の0.05-0.2%、男女比は9:1であるが、この症候群であっても全く症状を示さない症例が多いので、実際の有病率はよくわかっていない。原因はナトリウムチャンネルに関する遺伝子異常が2割の患者で見られるなど、心筋収縮に関するナトリウムーカリウムチャンネルの遺伝的疾患と考えられている。症状は夜間に心停止や心室細動を引き起こすものである。診断は症状に加えて心電図で解析で行われる。治療は埋め込み型除細動の装着が唯一確実な方法である。

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